"診察室に入れなかった私" 第17話
「これ……千の好きな、ノンカフェインのハーブティー。買ってきたんだ」
差しされた袋を、私は受け取りませんでした。
「健、あそこの面談に入りましょう。話があるわ」
「え……でも、千、まだ術だし、無理しない方が……」
「座って話すだけよ。それとも、また逃げるの?」
私の鋭い瞥に、健は息を呑み、力なく項垂れました。
病棟の片隅にあるさな面談。 テーブルを挟んで向かいって座ると、健はさくを縮め、膝ので固く拳を握りしめていました。
私はクリアファイルから、何枚かの類を取りしてテーブルのに滑らせました。
健の線が、その類に落ちます。
「これ……は何?」
「今の、私たちの活に関する覚よ」
枚目は、私個の名義でしく設した座の写し。 枚目は、現私たちがんでいるマンションの賃貸契約の名義を、健から私へと変更するための申請類。 そして枚目は、子どもの医療為および公続きに関する『単独親権使・決定権帰属の』でした。
健の顔が、く引きつりました。
「千……これ、婚するってことか? 俺を、追いすのか……?」
「婚届は、ここにはないわ」
私は静かに言いました。
「今すぐあなたと婚して、養育費の取り決めで裁判や調にを費やすエネルギーは、今の私にはありません。
何より、NICUにいるあの子の治療と成に、私の全神経を集させたいの」
健の瞳に、わずかな希望のが差しかけました。 しかし、私の次の言が、その甘い期待を々に砕しました。
「でも、これまでの夫婦活のあり方は、今この瞬を限りに完全に破棄します」
「破棄……?」
「ええ。あなたの『何でもやってあげる優しい夫』という役割は、今で終わりよ」
私はを乗りし、健の濁った瞳を正面から見据えました。
「健。あなたはこれまで、私のために事をやり、私のために続きをし、私のために病院の話を聞いてきたと言っていたわね。でも違った。あなたはただ、自分が責任を負いたくないから、私のの選択権をすべて奪い取って、自分に都のいい檻のに私を閉じ込めていただけよ」
健の肩が、さく震え始めました。
「計の管理権は、すべて私が持ちます。あなたの料からは、活費と賃、そして子どもの将来のための養育積を、毎指定の座へ自送してもらいます。あなたのお遣いは、その残額から私が決めます」
「そ、そんな……俺の名義の座なのに……」
「嫌なら、今すぐ婚して慰謝料を請求されてもいいのよ? 印私文偽造の証拠、神先の診療記録、そして私の名を騙って治療を拒絶していた過の類のコピー。
全部、弁護士に見せる準備はできているわ」
健はを噤み、喉を鳴らしました。 反論の余など、最初からどこにもないことを、彼自が番よく分かっていました。
「それから、もうつ。これが番事な条件よ」
私は枚目のを指先で叩きました。
「今、この子に関わるすべての医療判断、の決定、あらゆる公契約において、あなたが私の名を勝に騙ること、そして自分の見から逃げることを切禁じます。何かを決めるは、必ずあなた自ので考え、リスクを理解し、自分の言葉で選択肢を提示しなさい。それができないなら、あなたに父親としての権利は切認めません」
「俺に……決めろって言うのか……? もし違えたら……もし何かあったら……」
健の声が、泣き声混じりに震えました。 根いトラウマが、未だにこの男の魂を縛り付けているのが分かりました。
私はため息をつくこともなく、ただ厳格に告げました。
「違えたら、その責任を背負って、をげて、リカバリーのために汗を流しなさい。それが『きる』ってことよ。失敗の恐怖から逃げるために、の名を使って嘘をつき続けるを、私は度とこの子の父親としてに置く気はありません」
面談に、苦しい沈黙が落ちました。 健は両で顔を覆い、肩を激しくさせていました。
「……精神科のカウンセリングを受けて」
私がそう付け加えると、健は指の隙から、赤い目を覗かせました。
「お父さんをくしたのこと、そして『責任』に対する異常な恐怖。