"処刑寸前の冷宮幼女、心の声で国を救う" 第7話
陸原の指が、玉座の肘掛けを静かに叩いた。 皇帝は側に控える趙総管へ、線だけで図を送る。 趙総管は察し、音もなくを引いて、吾の統領へ密命を伝えにった。
「諸卿、難民への配米が底をつきかけている。何か良策はあるか」 陸原が問いかけると、臣たちは互いに顔を見わせ、を噤んだ。 戸部尚がいをく。 「……都周辺の富商から穀物を買いげるしかございませぬが、価格が騰しており、国庫が持ちませぬ」
その、々のさなが、控えめにがった。 「父、々、いいことってるよ!」
静まり返る殿に、臣たちの嘲笑が漏れた。 「歳の娘に、国の難局が解決できるはずがなかろう」 「豚の餌でもわせろと申す気か」
々は臣たちの笑を無し、無邪気な声で言った。 「御膳の裏の畑や、のにたくさんえてる【サツマイモ(蕃薯)】をべればいいんじゃないかな? すっごく甘くて、お腹がいっぱいになるよ!」
その言葉がた瞬、部の臣がみて、吐き捨てるように言った。 「滅相もございません! サツマイモなど、野に自する豚の飼料に過ぎませぬ! 過にそれをにした民が、激しい腹痛と痢を起こして命を落とした例が々ございます! 帝国の民に毒をわせろと申されるのか!」
(はぁ……やっぱりこの代のたちは無ね。
サツマイモをでかじるから消化良で腹を壊すんでしょ! 皮を剥いて、じっくりを通して蒸すか焼くかしなきゃ駄目なの! を通せばデンプンが糖化して甘くなるし、消化も良くなって最の救荒糧になるのに!)
々の考を余すところなく聞き届けた陸原は、微かに元を緩めた。 「……々。そのサツマイモとやらを、腹を壊さぬように調理して持ってくることができるか」
「うん! 父、々に任せて!」 々は元気よく返事をし、殿を駆けしていった。
*
半刻。 殿の苦しい空気を変させる、得も言われぬ甘くばしい匂いが漂ってきた。
扉がき、趙総管に従えられた々が、湯気をてるきなの盆を運ばせて戻ってきた。 盆のには、黄に蒸しがったサツマイモと、皮がばしく焦げた焼き芋が盛りに積まれている。
「父、お待たせしました! 蒸したものと、焼いたものだよ!」 々は自ら本の焼き芋をに取り、ふうふうと息を吹きかけてから、パクリとに含んだ。 「んん〜っ! 甘くてホクホクしてて、とっても美しい! ほら、々がべても全然お腹痛くならないよ!」
臣たちは目を黒させた。 「へ、陛、なりませぬ! そのような所のれぬ賎しいべ物を、玉体に触れさせるなど……!」
制止の声を遮り、陸原は躊躇うことなくを伸ばした。
黄の柔らかな果肉を、に運ぶ。 ねっとりとした濃な甘みと、腹にずっしりと溜まる確かな量。
「……美いな」 皇帝の言に、殿が静まり返った。 陸原は平然と芋を咀嚼し、群臣を見渡した。
「諸卿も、試してみるか?」
臣たちは恐る恐るを伸ばし、齧った瞬、その表を変させた。 「こ、これは……なんと甘美な……!」 「胃の腑が温まり、力腹に満ちてくるようだ……!」 「これが、あの豚の餌と蔑まれていた野のだというのか……!?」
先ほどまで々を嘲笑していた臣たちが、先にと盆に群がり、焼き芋を貪りい始めた。 御史夫がそのにひざまずき、涙を流して拝跪した。 「陛……! 老臣のをお許しください! この救荒作物が広く普及すれば、万の難民はおろか、帝国の飢餓は瞬くに根絶されましょう! 幼き姫様は、まさに祖国の救世主、の瑞兆にございます……!」
群臣が斉に平伏し、歳の童女を讃える声が殿に霊した。
その狂騒の、血相を変えた吾の統領が駆け込んできた。 皇帝の元に、震える声で報告を囁く。 「……陛! 仰せの通り、斎の百里先の洞窟を捜索いたしましたところ、兵部卿・喬秉が隠匿していた【万の軍糧】を完全に差し押さえました! 反乱軍へ横流しされる寸にて、全量を回収に成功いたしました!」
陸原の瞳に、勝利のが宿った。
糧の危はった。 難民の暴という、帝国の破滅フラグのつが、完全に叩き折られたのだ。