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"3年墓参りした義父が、古い家の壁の奥で呼んでいる" 第12話

けれど、それは恐怖の震えではなかった。 、私のを縛り続けていた見えない鎖が、元でガラガラと音をてて砕け散っていく覚だった。

医師に促され、消毒液の匂いが満ちる病の引き戸を静かにけた。

無質なモニターの子音が、規則正しいリズムを刻んでいる。 ベッドの。 無数の管をつけられた義父が、ゆっくりとこちらに顔を向けた。

落ち窪んでいた頬には、点滴のおかげか僅かに血が戻り始めている。 濁していた瞳の奥に、確かなが宿っていた。

「……な、おこ……さん」

掠れた、けれど力い息遣い。

「お義父さん」

駆け寄り、ベッドサイドに置かれたパイプ子に腰をろした。 布団のに投げされた、節くれだった骨ばかりの。 、初めてこのにを踏み入れた、え切っていた私の両を包んでくれた、の棟梁のきな。

そのを、私は両でそっと包み込んだ。

「先から聞きました。識が戻って、本当によかった……本当によかった……」

声が詰まり、涙が次から次へと溢れた。 いシーツに、丸い染みが広がっていく。

義父の指先が、器用にいた。 点滴針を揺らしながら、私のの甲を々しく、けれど温かくポン、ポンと叩く。

「……すま、なかった……」

乾いた唇から、途切れ途切れの言葉がこぼれ落ちる。

「……あいつらが……おに、あんな……酷いことを……」

「お義父さんが謝ることなんて、何つありません」

私は首を横に振った。

「全部、終わりました。清先が警察にすべての証拠を提してくれました。浩司さんの会社の借も、あの千万円の連帯保証も、私がサインしたものではないと証できます。……もう、丈夫ですから」

義父の目尻から、筋の涙が静かに滑り落ちた。

「……あいつ、は……」

「浩司さんとお義母さんは、今、警察署で取り調べを受けています。法監禁と保護責任者遺棄、それに正雄さんの預を正に引きした件で、本格な捜査が入りました」

警察の対応は、清先が提した現写真と防犯カメラの映像、そして過の細によって気にいていた。 夫の会社はすでに事実の倒産状態に陥り、融関からの差し押さえが母にまで及ぼうとしていた。 庭内の介護過失などという幼稚な言い逃れは、もはや通用しなかった。

夫と義母のは、自分たちが敷いた傲と嘘の線ので、音をてて脱線し、々に砕け散ろうとしていた。

「お義父さん。私……浩司さんと、婚します」

胸の奥にあった言葉を、まっすぐににした。

「緑のに、名をいて置いてきました。あのに、私はもう戻りません。でも……お義父さんのことは、私が責任を持ちます。アパートを引き払って、もっと広い部を借りて、私が介護を――」

言いかけた私の言葉を、遮るものがあった。

義父のが、私の首をキュッと握り直したのだ。 く、けれどどこまでも優しい拒絶だった。

「……ならん」

義父は、首をさく横に振った。

「……なお、こさん……それ、だけは……絶対に、ならん……」

「お義父さん……?」

「おは……、あんな……あんな勝な親子のために……自分の、を……全部、削って、くれたんだ……」

荒い呼吸をえながら、義父は言言、魂を絞りすように言葉を紡いだ。

「これ以……この、役たずの老いぼれの世話なんかに……おの、これからのを……秒も、使わせるわけには、いかん……」

「役たずだなんて、そんなこと言わないでください! 私にとって、お義父さんはたったの本当の族で……」

「だから、だ」

義父の瞳が、涙で潤んでいた。

「わしを、本当の父親だと……ってくれるなら、聞きなさい」

義父は震えるで、枕元に置かれていたさな提げ袋を指差した。 現検証の際、警察がれの瓦礫のから見つけし、義父の私物として病院へ届けられたものだった。

袋のからてきたのは、のひらほどのきさの、古びた桐の箱だった。 角が丸く削られ、の垢でい飴にっている。 義父が現役のだった頃、端材を使って自分で作ったさな箱。

「……あけ、てごらん」

言われるがまま、さな真鍮の留めをした。

蓋をけると、に入っていたのは権利でも通帳でもなかった。

枚の、あせた桜のメッセージカード。

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