"「あの担当者はどこだ」社長の一言に凍る年下上司" 第4話
ただ「できるはずだ」「やらせればいい」という願望だけで、数字を帳尻わせしたのだ。
宮本社の目が、え切ったを帯びていく。
机を挟んだ沈黙が、く、息苦しく部を支配した。 田辺は額の汗をハンカチで拭い、焦りを隠すようにでまくしたてた。
「み、宮本社! が社としても、ここまで条件を譲歩したのは御社が初めてなんです! 価格も納期も、社には絶対に真似のできない条件を提示させていただいております! これ以、何を疑う必があるというのですか!?」
最の言は、ほとんど鳴にかった。 若きエリートのメッキが剥がれ、焦燥と傲さが骨に滲みしていた。
宮本社は、く、いため息をついた。
そして、それ以、田辺の顔を見るのをやめた。
社はゆっくりとちがり、背のスチールキャビネットへと歩いていった。 ガチャリと音をてて引きしをけ、から冊の、みのあるファイルを引っ張りした。
表の青いはすっかり焼けし、角が擦り切れている。 属の留め具は赤く錆び、そこにかれたきの文字だけが、くっきりと残っていた。
『〇〇 圧プレス初号 ピストンピン破断事故 対策報告』
宮本社はそのファイルを、テーブルの央にドンと置いた。
田辺が目を丸くする。
「……は? これは、何ですか?」
宮本社は答えなかった。 ただ、ファイルに刻まれた古い付を指先でなぞりながら、虚空を見つめるようにして呟いた。
「、うちので同じことが起きた」
「え?」
「急な仕様変更、机の計算だけで通した価な処理。納入からヶでピンが折れ、プレスの油圧が吹きび、うちのラインは完全に止まった。親父の代だったが、違約で会社が潰れかけたよ」
宮本社の目が、静かに田辺を見据えた。
「その、あんたの会社の営業が、夜に作業着を着てに駆け込んできた。……そいつは、逃げなかった」
部の空気が、張り詰めた弦のように軋んだ。
「言い訳もせず、机ののデータを振りかざすこともせず、油まみれの破断片を素で拾いげてな。『私の確認です。待ってください。必ずラインをかせる代替品を、の連と作って持ってきます』と、座もしないで、真っ直ぐ親父の目を見て言った」
田辺がポカンとをけている。
宮本社は、く、い声で続けた。
「そいつは本当に晩、自分ののプレスに張り付いて、職を拝み倒して、自らので公差を測った部品を持って戻ってきたよ。『絶対にできる納期しか、私はにしません』……そう言って置いていった代替えロットは、経った今でも、うちの予備ラインで狂いもなくいている」
宮本社の線が、ゆっくりと宙を泳ぎ、田辺のを越えていく。
「……あのの営業は、まだ君の会社にいるのかね?」
田辺は、瞬何を言われたのか理解できないようだった。 だが、次の瞬、嘲るような笑みをその元に浮かべた。
「ああ……ですか? 社、そんな昔の臭い話、今のビジネスには関係ありませんよ。ええ、社籍だけならまだ残っているはずですがね。何しろ代についてこれない、パソコンの操作もおぼつかないようなですから。今は支援課に追いやられて、コピー取りと荷物運びくらいしか使いがない『ただの雑用係』ですよ」
田辺はわざわざ振り返り、部の隅にいる私を顎で指し示した。
「ほら、そこに座ってるロートルですよ。昔のやり方にしがみついて、今のスピードについてこれなくなった典型な落ちこぼれです」
勝ち誇ったように、田辺が言った。 自分がどれほど愚かなを踏み抜いたかもれずに。
宮本社の目が、田辺の指先を追うようにして、部の隅へと向けられた。
パイプ子に座る私と、作業着を着た歳の経営者の線が、の歳をび越えて、真正面からぶつかりった。
宮本社の瞳が、微かに揺れた。
部の壁に掛けられた計の秒針が、カチリ、カチリと異様にきな音をてる。
私は、膝のに置いていた両を握りしめ、ゆっくりとパイプ子からちがった。