"正月の食事会で義母に印鑑を求められ、仲居から「逃げて」のメモ" 第24話
私はさくため息をつき、静かにちがった。
「お義母さんは、自分がしたことの本当のからまだ目を背けているだけです」
私は彼女を見ろした。
「わざわざ呼んでいただいたのに申し訳ありませんが、私はまだお話が違うといます」
それ以、彼女の虚しい言い訳を聞く必はなかった。私は彩子に背を向け、先に礼して会議をた。彼女が自分の罪を本当の名で呼ばない限り、私たちが分かりえるは永に来ないのだ。
弁護士事務所での最の面会から、さらに数ヶのが流れた。季節はを通り過ぎ、たいのが再びを吹き抜けるようになっていた。私の元に、弁護士の先を経由して通の封筒が届いた。
差の欄には「島彩子」と見慣れた文字が記されている。全て正式に完した今、彼女からのを受け取る義務はなかった。それでも私はしだけ迷ったに、その封筒を静かにいた。
便箋にかれていたのは、以のような威圧で流麗な文字ではない。震えたような々しい跡で、い文章が綴られていた。
『叶恵さん、回の面会では自分の本当のに向きえていませんでした』
はそんな静かなきしで始まっていた。
『私は、自分の弟を助けたかったのです。会社の失敗をどうしても認めたくありませんでした』
『私が違ったことを皆がるに、あなたの建物を使ってを稼ぎたかった』
『42の社員だけを守りたかったわけでは、決してなかったのです』
そこには族への執着と、自分のを守るための醜い本音が正直にかれていた。社員という美しい義名分を取った、みすぼらしくて々しい真実だ。
しかし私はその文章を読んで初めて、彼女の言葉が胸の奥にすっと落ちるのをじた。会議で会社を守りたかったと嘘をねていたよりも、ずっとらしい言葉だった。
彼女は全てを失ってようやく、どれほど勝な理由で私を犠牲にしようとしたのか自覚したのだ。私は机に向かい、1枚だけ便箋を取りしてい返事をいた。
『なくとも今、何をしたか正しい名で呼んでいるといます。私からお伝えできるのはそれだけです』
い返事を封筒に入れ、私はそれをポストへ投函した。許しや解の言葉を送るつもりは私にはない。真実を認めても、私に理尽な借を背負わせようとした事実が消えるわけではないからだ。
それでも彼女が自分の罪を本当の名で呼べたことは、私にとっても1つの完全な区切りとなった。のに残っていたさな澱のようなが、のと緒に流されていくのをじた。
このを最に、私は島彩子という物との関係を永に終わらせたのだ。12に入ったあるの午。
私は1でを乗り継ぎ、見覚えのある駅にりった。
向かった先は、約1に義母と夫に連れられていったあの級な懐料理だ。お正のような慌ただしさはなく、平の昼がりのは静かな空気に包まれていた。
玄関の引き戸をけると、かすかにおの匂いが漂ってくる。案内にてきた若い員の方に、私は件を伝えた。
「事の予約ではないのですが、桜井さんは、いらっしゃいますでしょうか?」
員はし驚いた顔をした。
「確認してまいります」
員はそう言って奥へがった。しばらく待っていると、廊の奥から急ぎで歩いてくる桜井さんの姿が見えた。私を見つけた桜井さんは瞬だけを止め、それから柔らかく微笑んでづいてきた。桜井さんは礼した。
「叶恵さん、お久しぶりです」
私はくをげた。
「お仕事に突然お尋ねして、本当に申し訳ありません」
私は顔をげて彼女を真っすぐに見つめた。
「どうしてもを越すに、あののお礼を直接お伝えしたかったんです」
私は謝の気持ちを伝えた。
「あの、にあのを握らせてくれなければ、私は今頃全てを失っていたといます」
私はもう度をげた。
「本当に、ありがとうございました」
桜井さんはし照れたように線を落とし、それからさく首を振った。