"引っ越しを手伝った父に5000円、夫が隠した同居計画" 第1話
結婚して8、私たちは初めて、これからく暮らすつもりのを買った。し郊に建てた真しい戸建てで、私はその居の壁に触れた。
引っ越し当の朝、から聞こえたのエンジン音に窓を見ると、伝いに来てくれた父の誠と母のがいた。私は玄関へ向かい、扉をけた。
66歳の父も63歳の母もきやすい装に着替えており、をりた父がこちらを見た。
「おはよう。朝からご苦労さん」
私のろからてきた夫の健太は、すぐにをげた。
「おはようございます。今はわざわざすみません」
母は、玄関のに入りながら周囲を見回した。
「何から伝ったらいい?」
健太はすぐにポケットへを入れ、1枚のを取りした。
「これ、お願いできますか?」
父は差しされたを受け取り、そのの文面に目を落とした。には、各部の段ボール箱をけ、簡単な棚を組みて、窓にカーテンを取り付けることが細かくきされていた。
さらに台所の拭き掃除と、量にる包装材をまとめて縛る作業まで、箇条きにされていた。私は、そのを見て驚いた。
「こんなに細かく分担表を作ったの?」
夫は、得げな表で笑った。
「この方が効率がいいでしょう」
父は、苦笑いしながら夫の顔を見た。
「なんだか会社みたいだな」
夫は、しだけ照れたように笑みを浮かべた。
「すみません。職業柄、ついこういうのを作ってしまって」
父は、元のを折りたたんだ。
「いいんだ。速取りかかろう」
父はそう言って、すぐに玄関のへと入っていった。い具は引っ越し業者が運び入れてくれたので、私たちは物の理に取りかかった。私はリビングの段ボール箱を見つめた。
父が1階の隅で軽い棚を次々と組みてる方、母は台所の箱をき、を1つずつ確かめていた。
「美紀、鍋はどこにあるの?」
私は、台所の方を振り向いた。
「その箱の隣だよ」
母の問いかけに答えながら、居での最初の作業はやかにんでいった。昼になると、私たちはに座り、所の弁当で買った弁当の蓋をけて、黙々とべた。
午になった。夫は、リビングの段ボール箱を指さした。
「この箱の片付けが終われば、ほぼ終わりですね」
父は、夫の言葉に頷いた。
「じゃあ、もう踏ん張りだな」
午2頃、父がちがって1階のへ入ると、壁際にはまだけられていない段ボール箱が2つ置かれていた。
そのろ姿を見つめる私の目にも、それぞれの箱に太いペンで『夫さん』『久美子さん』とかれているのが見えた。そこへ、夫がに入ってきた。父は、その箱を指さした。
「これ、誰の荷物だ?」
夫は、し焦ったような表で箱を見た。
「ああ、それ、うちの親の荷物です」
父は、議そうに夫の顔を見た。
「ここに置くのかい?」
夫は、瞬きをした。
「ええ、ちょっと置いとくだけです」
夫は、瞬言葉を詰まらせた。その、彼は誤魔化すように線を逸らした。父は、さく頷いた。そう納得した。父は、それ以は何も聞かなかった。でも、父はその箱の送り状を見ていた。
私は、父の線の先を追った。そこには、違いなくこのしいの所がかれていたのである。
それでも、父はそのでは何も言わなかった。父は、静かにをていった。午5にくなる頃、のはようやく活できる形になった。母がちがってゆっくり腰を伸ばしたので、私はその顔を見た。
「ごめんね、お母さん。1働かせちゃって」
母は、首を振って笑った。
「何で謝るのよ」
母は、部のを見回した。
「しいがちゃんと見られたし、楽しかったわよ」
父は、満そうな顔をした。
「俺なんて、棚を作るのがだっただろう」
父がし自げに言った。母は、それに呆れたような線を向けた。
「はいはい」
私は、のやり取りを見て笑った。
その、健太は鞄から財布を取りしてくと、にあった5000円札を1枚、父へ差しした。
「今は、本当にありがとうございました」
父は差しされた5000円札を見て、議そうな顔をした。
「なんだ、これは」
夫は、真っ直ぐに父を見た。
「ここまで来てくれたガソリン代と、ほんの気持ちです」
父は、元の5000円札を見つめた。
「気持ち、か」
父がぽつりと呟いた。