"引っ越しを手伝った父に5000円、夫が隠した同居計画" 第5話
「落ち着くって何が?」
夫は、軽い調子で言った。
「だから、同居の話だよ」
夫はため息をつき、私を諭すような声をした。
「マンションを売る契約はもう済んでるんだ。引き渡しは来なんだから、現実に考えてここにんでもらうしかないだろう」
私は、依然として顔をげなかった。
「現実にそうするしかないように、あなたが勝に決めたんでしょう」
夫は、苛った。
「だから、それはでちゃんと話すつもりだったって言ってるだろう」
夫は、しだけ声を荒げた。
しかし、すぐに腕計を見た。彼は、表を戻した。
「おもしをやして考えてくれ。族なんだから最は分かってくれると信じてるからな」
夫は、それだけを言い残した。彼は、玄関の扉を閉めて勤していった。静まり返ったしいの。私は、ダイニングの子に座っていた。
『最は分かってくれる』
その言葉が、の奥で何度も響いていた。夫にとっては、私のりも戸惑いもただが解決するだけの通過点に過ぎないのだ。私が最終に『はい』と受け入れることを、夫は微も疑っていなかった。
午9を過ぎた頃。私は自分の携帯話をに取り、父に話をかけた。3回目の呼びし音で父がた。
「もしもし。美紀か」
私は、受話器を握りしめた。
「お父さん、昨は本当にごめんね。
1伝ってくれたのに、あんな終わり方になって」
私が謝ると、話の向こうで父はく息を吐いた。
「おが謝ることじゃない。それより、昨はにあった段ボール箱を見たか」
私は、窓のを見た。
「箱。うん。お義母さんが先に運んだ自分の荷物だって言ってたけど」
父は、静かに言った。
「宛名の所だけじゃないんだ。に置かれていた箱には、太い字で『夫さん』『久美子さん』とかれていた」
私は、わず目を閉じた。義両親は、自分たちが引っ越してくることを全く疑っていなかった。すでに自分たちの部割りにわせて荷物を作り始めていたのだ。私は、ため息をついた。
「どうして昨、そのに言ってくれなかったの?」
父は、淡々と答えた。
「俺が決めることじゃないからだ」
父の声は静かで、の波ちはなかった。私は、尋ねた。
「じゃあ帰り際に健太に言った、『悔するな』って言葉は何だったの?」
父は、しだけを置いた。
「俺が健太君に何か仕返しをするってじゃない。それくらいのことで俺はかない」
私は、眉をひそめた。
「じゃあどういう?」
父は、きっぱりと言った。
「美紀。おは健太君にるに1度確認しろ」
私は、聞き返した。
「確認?」
父は、説した。
「昨みたいに、おのらないところでおの返事が都よく使われていないかどうかだ」
私は、息を呑んだ。話を握り直し、私は何を調べればいいのか尋ねた。父は、指示をした。
「、との約束。その辺りの全部だ」
父の声が、しくなった。
「特にお名義のものや、おの同が必なものがないか徹底に確認しろ」
父の言葉は、を浴びせられたように私のをやしてくれた。にっているではない。自分の元を確かめなければならないのだと、はっきりと理解した。
私はうなずき、そののうちに全部調べてみると父に伝えた。父は、優しく言った。
「父さんは、おに婚しろともするなとも言わない。おが自分で調べて自分で決めろ」
私は、涙をこらえた。
「うん。ありがとう」
話を切った、私は静かにちがった。2階の寝へ向かった私は、クローゼットの奥にしまっていた類のファイルを取りし、リビングのテーブルに広げた。
まず確かめたのは、このの登記簿と契約だった。このとは、完全に私の単独名義になっている。の購入資は、祖母から相続したおが1800万円あった。それに、私の独代からの貯が700万円。
残りのりない部分は、私名義で宅ローンを組んだ。夫の健太は、の購入資を切していない。自分のローンも組んでいない。それは、夫が将来自分の仕事を始めたいというを持っていたからだ。
『俺は将来独して会社を作りたいから、今は借入れの余力を残しておきたいんだ』
を買う、夫はそう言って私に頼んだ。