"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第7話
は最初、眉をひそめて聞いていたが、見積の額がたあたりで、持っていた保剤をテーブルに叩きつけた。
「……はあ!? 万!?」
「、声がきい……」
「きくなるわよ、そんなの! 何それ、完全に狂ってるじゃない! 美が靴買うのもして、見切り品のキャベツ買ってる横で、義母の団にシステムキッチン!?」
の息が荒くなる。
「しかも何よ、その『男の見栄』って! 美の骨を削って吸いげたで、自分の母親にいい顔して親孝ごっこ? 反吐がるわ!」
「私……どうしたらいいのか分からなくなっちゃって。昨の夜、浩さんの顔を見てたら、あの、本気で自分が正しいって信じ切ってるの。私が悪者で、自分がな親いの息子だって」
「男のそののプライドは底なし沼よ。放っておいたら、次は浴、その次は老ホームのまで、全部美の活費からむしり取られるわよ」
は腕を組み、鋭い目で私を見つめた。
「美。で鳴りってもがないわ。あのの種はね、『嫁がヒステリーを起こして母親をいじめてる』って被害妄にすり替えるのが得なんだから」
「じゃあ、どうすればいいの……?」
「お義母さんのところにきなさい」
「お義母さんのところ……?」
「そうよ。美、そのリフォームのこと、お義母さんはどこまでってるの? 浩さんが『にはがない』って美を締めげてること、お義母さんはっててやらせてるわけ?」
私は言葉に詰まった。
義母の富美子さんは、御歳。
に夫をくし、枚方の里ヶ丘にある古い公団宅で、女つで浩を育てげただ。
気がく、世体を何よりもんじる性格だが、私に対してあからさまな嫌がらせをしてくるようなではなかった。
ただ、会うたびに「浩はよくやってくれる」「自の息子だ」と繰り返すのが常だった。
「分からない……。お義母さんがねだったのか、浩さんが勝に言いしたのかまでは」
「だったら、確かめにきなさい。証拠を持って」
は私の肩をく掴んだ。
「堀を埋めるのよ。あのが番守りたがってる『派な男』のメッキを、番見られたくない相ので剥がすの。美が泣き寝入りして節約を続ける限り、あの男は変わらないわよ」
のい差しに、私の胸の奥で燻っていたさな種が、パチリと音をてて弾けた。
そうだ。
このままで夫の嫌を伺い、のを「仕方のないこと」としてみ込むことなんて、もう絶対にできない。
私のを、これ以あの男の空っぽな見栄の贄にさせてたまるものか。
曜の午。
照りつける差しの、私は京阪バスに揺られていた。
提げ袋のには、スーパーで買ってきた季節の桃がつ。
そしてそのには、過分の計簿のから抜きした数冊のノートと、あの丸められた見積のコピーが忍ばせてある。
里ヶ丘の公団宅は、昭の面を濃く残した階建ての団群だ。
エレベーターのない階段を、いを引きずりながら階までがる。
踊りを曲がるたびに、ふくらはぎが鳴をげたが、私の取りは議と迷わなかった。
〇号のインターホンを押す。
ピンポーン、という甲いチャイムが鳴り響いた。
数秒、鍵がガチャリとく音がして、チェーンの隙から義母が顔をした。
「あら……美さん? どうしたの、急に。浩からは何も聞いてないけど」
品にえられた髪に、麻のチュニックを着た義母が、訝しげに目を細めた。
「お義母さん、こんにちは。くまで来たので、美しそうな桃をお裾分けしようとって」
提げ袋を持ちげて見せると、義母の表が気にらいだ。
「まあ、わざわざ悪かったわね。ちょうどお茶にしようとってたのよ。暑かったでしょう、がりなさいな」
チェーンがされ、玄関ドアがけ放たれる。
玄関にを踏み入れた瞬、微かな違を覚えた。
古い団特の、湿気とコンクリートの匂いがしない。
玄関の靴箱のには、見慣れないスタイリッシュな円筒形のが置かれ、青いランプが静かに滅していた。
最型の級脱臭だ。