"妻の浄水器は粗悪品、義母のキッチンには84万円" 第12話
夫の呼吸が、ぴたりと止まった。
「……な、何言ってんだ。母さんには関係ないって……」
「座りなさいって言ってるの」
私が静かに、しかし絶対な拒絶を込めて言い放つと、夫は気圧されたようにパイプ子を引き、乱暴に腰をろした。
「言いたいことがあるならにしろ。俺は疲れてるんだ」
「に済ませるわ」
私は番に置いた、活費座の通帳を夫の先に突きつけた。
「あなたの料、毎の取りは万から万よね。ボーナスはわせて取り百万。の営業当もついて、額面にすればもっとあるはずよ」
夫の目が、わずかに泳いだ。
「それがどうした。俺が汗流して稼いだだ」
「ええ。でもあなたがこの、この活費座に入れていたのは、毎きっかり万だけ。ボーナスからも、計には円も入れなかった」
私は通帳の数字を指で叩いた。
「残りの万いおは、毎どこへ消えていたの?」
「だ、だから言っただろ! 俺の遣いと、営業の付きいと、将来のための貯蓄だって!」
「貯蓄? どこの座に?」
「俺の個座だよ! 老資として定期に入れてるって、にも話しただろうが!」
「じゃあ、その通帳を見せて」
夫の言葉が喉に詰まった。
「見せなさいよ。今すぐ。スマホのアプリでもいいわ。残を見せて」
「な……何でそんなもの、おに見せなきゃいけないんだよ! 夫婦だからって、個のプライバシーがあるだろ!」
「プライバシー?」
私は吹きしそうになった。あまりの滑稽さに、喉の奥から乾いた笑いが漏れる。
「私のパート代は毎万円、円残らずこの活費座に入させて、全額あなたの管理に置いておきながら? 私が千円の靴を買うのすら『計の危がりない』って取りげておきながら、自分の万円はプライバシー?」
「俺はの黒柱だぞ!」
夫は唾をばしながら、子からを乗りして鳴った。
「誰がこのを支えてるとってんだ! おがのうのうと暮らせてるのは誰のおかげだ! 男が母親に親孝して何が悪い! 母さんは親父がんでから苦労の連続だったんだよ! 男の俺が母親を助けて、いいいをさせてやって何が悪いんだよ!」
「親孝が悪いなんて、言も言ってないわ」
私は机のの計簿を冊、夫の胸元へ放り投げた。
いノートが夫の胸板に当たり、バサリといて落ちる。
「私が言ってるのは、その親孝の原資はどこからたのかってことよ」
「……何?」
「あなたが母親に買ってやった万のキッチンも、万千円の純正フィルターも、万円の脱臭も……全部、私がしたおじゃない!」
私の声が、部の空気を切り裂いた。
「私が、夜のスーパーで値引きシールを待って買った見切り品の豆腐! 寒さに震えながら消した! 痛むを引きずりながら買い替えを諦めた仕事靴! 病気のを抱えながらキャンセルした腸検査の千円! それらを全部削り取って、私から奪ったおで買った親孝じゃないの!」
「ち、違う! 俺はそんなつもりで……」
「あなたが母親ので誇らしげに『俺が稼いでるから配ない』って見せびらかしたその派な息子の顔、私の骨を削って作ったものよ! 私がしたおで買った親孝は、体誰のものなの!?」
夫の顔が、蒼から転して気に変わった。
額から、ダラダラとたい脂汗が流れ落ちる。
「お……そんな、揚げ取るような言い方……」
「揚げ? これが現実よ。あなたはただ、自分の懐を痛めずに、妻を限界まで搾り取って、母親ので『できる男』を演じたかっただけの、ただの臆病な偽善者よ!」
「黙れ!」
夫が咆哮し、拳を振りげた。
「黙れ、美! おみたいな酷な女に、俺の親をう気持ちが分かってたまるか! 世体も親戚付きいも全部俺が背負ってきたんだ! たかがキッチンのことくらいで、母親を巻き込んで俺を侮辱する気か!」
その瞬。
テーブルのに伏せて置かれていた夫のスマートフォンが、けたたましい振音をてた。
ブーッ、ブーッ、ブーッ。
静寂を引き裂くバイブレーション。
画面に浮かびがった文字は――『おふくろ』。
夫の肩がビクッとねた。
息を呑み、画面を凝する。