みかん小説
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"4000円を頼んだ私に、死んだはずの父から4000万円" 第9話

その瞳には、氷のような笑が浮かんでいた。

「……あなたが、梨奈さん?」

声は驚くほど澄んでいたが、芯に鋭い刃物が仕込まれていた。

「……はい。何かご用でしょうか」

私は消毒用のダスターを持ったまま、背筋を伸ばした。女性はさくを鳴らし、元の革袋をしながら、名刺入れを取りした。差しされた名刺には、こう刷り込まれていた。

『条リゾート株式会社 常務取締役 条理』

条。

臓がねがった。

「叔父様……条正隆の姪です」

条理と名乗った女性は、周囲の客を気にするでもなく、嘲るように元を歪めた。

「どんなが叔父様を誑かしたのかとって見に来てみれば……なるほどね。揚げ物の油にまみれた、物のスーパーのパートさん」

たい言葉が、ガラスケース越しに突き刺さる。

「千万円、もう元に入ったそうね。末期の老いぼれを言いくるめて、いい遣い稼ぎができたじゃない」

売りの空気が、瞬で凍りついた。隣のレジで袋詰めをしていた佐藤さんが、息を呑んでこちらを見ているのが分かった。巻きに、買い物客の線が集まり始める。

「何か勘違いをされているようですが」

私はダスターを作業台のに置き、理の目を正面から見据えた。

「私は円も求していません。勝に振り込まれただけです」

「あら、そう? でも、突き返してはいないんでしょう?」

理は歩、を乗りした。級なの匂いが、油の匂いを押し退けてをつく。

「忠告に来てあげたのよ。叔父様はもうくないわ。だからって、本妻気取りの母親の娘が、遺産目当てで条のに擦り寄ってくるのは目障りなの。あの千万を切れにして、度と私たちのに現れないで」

理は、差し指でガラスケースをコンコンと叩いた。

「自分のの程くらい、弁えなさい」

侮蔑に満ちた言葉が、私のの奥で炸裂した。周囲のパート仲たちの線が、針のように背に刺さる。『千万』『切れ』『遺産目当て』。その単語だけが切り取られ、私が何かのスキャンダルにを染めたかのように、ひそひそとした囁き声が広がり始めていた。

屈辱で、指先が激しく震えた。りで界が赤く染まりそうになる。ここで鳴り散らせば、この女のう壺だ。にも迷惑がかかる。

私はく息を吸い込み、エプロンので両を揃えた。

そして、客に対する番丁寧な、けれど切のを削ぎ落とした声で、はっきりと言い放った。

「私の居所なら、あなたに教えてもらわなくても分かっています」

理の眉が、わずかにピクリといた。

「ここは、私が汗を流して活を守っている所です。油の匂いがしようが、物のパートだろうが、自分の力できていくための誇りある所です。

あなたのように、の遺産の取り分に怯えての職を荒らしに来るようなに、しされる筋いはありません」

売りが、静まり返った。

「お買いげでないのなら、のお客様のお買い物の邪魔になります。どうぞ、お引き取りください」

私はく、完璧な角度でお辞儀をした。

理の顔が、りと屈辱で真っ赤に染まった。持っていた級な革の袋を握りつめ、私を射殺すように睨みつける。

「……悔させてやるわ」

理はく吐き捨てると、ヒールを鋭く鳴らして、スーパーの自ドアの向こうへとっていった。

静寂が戻った売りで、私はゆっくりと体を起こした。背の皮膚が、や汗でぐっしょりと張り付いている。佐藤さんが駆け寄ってきて、「奈さん、今の……何なの?」と青ざめた顔で尋ねてきた。

「ごめんなさい、佐藤さん。で、に全部説します」

私はそう答えるのが精杯だった。

休憩に駆け込み、ロッカーからスマートフォンを取りした。指が激しく震えて、アドレス帳の『杉浦弁護士』の番号を押す。

コール音が鳴り、弁護士がた。

「梨様、どうされましたか」

「条正隆に、伝えてください」

私は荒い息のまま、受話器に向かって言い放った。

「あなたの親族が、私の職に来ました。従業員ので、私を棒のように侮辱してっていきました」

話の向こうで、杉浦弁護士が息を呑む音がした。

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