"4000円を頼んだ私に、死んだはずの父から4000万円" 第14話
もし条氏がくなった、親族たちが『あの千万円は当な贈与であり、遺留分を侵害している』として訴訟を起こしてきたら、あなたはその千万円の返還請求訴訟(遺留分侵害額請求)に巻き込まれます。税を引かれて元に残った以の額を、裁判で請求されるリスクすらある」
私は絶句した。袋を鳴らしてスーパーに現れた理の笑が、脳裏に甦る。あの女は、この法な包囲網をっていたのだ。私が無のまま千万円にをつけ、浪費した瞬に、法の続きで私を破滅させる算段だったのだ。
「……先。どうすればいいですか」
悠が、く落ち着いた声で尋ねた。
「このを、全に、そして相の惑通りにさせずに処理するには、どうすればいいんでしょうか」
柴田税理士は鏡をし、私たちをじっと見つめた。
「方法はつです。つは、全額を即座に組み戻し(返)して、切の関わりを断つこと。……もうつは、正式な法続きを取り、銭の性質を『使途を限定した医療扶助の信託』として契約を結び直すことです」
税理士は枚のを取りし、ペンをらせた。
「条氏が奈さんの実父であることは、戸籍認されている。親には子に対する扶養義務があります。過に支払われなかった養育費の清算、あるいは直系血族の扶養義務に基づく『現実に必な医療費・療養費の都度付』であれば、法に非課税枠として理できるがある。
ただし……」
税理士はペンを置き、私の目を射抜くように見た。
「それには、条正隆氏本に、こちらの提示する厳格な条件を呑ませる必があります。相の弁護士が作った都の良い類にサインするのではなく、あなたが主導権を握って、法な防壁を築くのです。できますか、奥さん」
私はく、息を吸い込んだ。
「やります」
迷いはなかった。母の誇りを守るためにも。夫との活を守るためにも。あの男の「からの施し」に、首輪をつけられるわけにはいかなかった。
。杉浦弁護士から指定されたのは、都内の学病院に併設された特別カンファレンスルームだった。
条正隆は、抗がん剤の点滴治療のを縫って、子に乗って現れた。数よりもさらに皮膚はを帯び、点滴スタンドのチューブが痛々しく腕に伸びている。背には杉浦弁護士が控え、テーブルのには分い革張りのファイルが置かれていた。
「奈……来てくれたのか」
正隆の声は、の灯のように掠れていた。私と、私の隣に座る悠の姿を見て、わずかに眉をかす。
「夫の、梨悠です」
悠が静かにをげた。正隆は複雑な表で悠を見つめ、やがてさく頷いた。
「……狭な所ですまない。理の件は、本当に申し訳なかった。あの子には役員の職務止を言い渡し、度と奈の活圏にづかないよう厳命した。
信じてほしい」
正隆はそう言うと、杉浦弁護士に図を送った。弁護士がテーブルのに、通の契約を差しす。
『親族扶養及び資産信託に関する』
そこには、千万円の正式な贈与に加え、将来な条リゾートの未公株の部譲渡、さらには母・澄のための最ランクの療養型病院の配と終保証が、流麗な法律用語でき連ねられていた。
「これにサインしてほしい」
正隆はすがるような目で私を見た。
「これであの千万は完全に法な正当性を持つ。理たちも切しはできない。奈、おたち族の将来は、これで完全に保証されるんだ」
静まり返った部。差しされた級なモンブランの万が、のを放っている。
私は、その万に触れもしなかった。
代わりに、持参したビジネスバッグから、今朝コンビニのコピーで印刷してきた枚のA4用を取りした。柴田税理士の助言を受け、悠と昨夜遅くまで話しってきげた、私たちの「条件」だ。
それを、正隆の契約のに、ねるように置いた。
正隆が目を見張り、杉浦弁護士が怪訝そうに眉をひそめる。
「……これは、何だ?」
「私の条件です」
私は背筋を伸ばし、子の老をまっすぐに見据えた。
「第に、座に振り込まれた千万円のうち、母の今回の術と療養に必な実費以の銭は、切受け取りません。