"「本当の父親です」と乾杯した夫、148万円の請求書には知らん顔" 第14話
あなたが『真由美がプレゼントしてくれる』と吹き込んでいたからよ。……の財布で親孝をして、の父親の板で仕事を取ろうとする。それがあなたの24の正体よ」
「夫婦だろ……!」
夫が絞りすように叫んだ。その声には、追い詰められたの醜いき直りが混じっていた。
「夫婦なのに、そんなにいちいち卓叩いて、細かく割り勘にして……気持ち悪いとわないのかよ!? どっちの親だとか、誰が何呼んだとか……族ってのは、そういうのを曖昧にして支えうもんじゃないのか!?」
「曖昧にして支えう?」
私はわず、たく笑ってしまった。
その言葉を、どのが言うのか。24、その『曖昧さ』に甘え、私の善を貪りってきた男が。
「健太郎」
私はを乗りし、夫の顔を真正面から見据えた。
「あなたが族をに変えたのは、あの夜、ホテルのロビーで請求が来ただったでしょう」
夫の息が止まった。
「都のいいときだけ『族』という便利な言葉で私を縛り、を払う瞬になったら『おの親だ』と酷に境界線を引いた。……計算を始めたのは、私じゃない。あなたよ」
静寂が、部を支配した。リビングのい蛍灯のが、夫の青ざめた顔を容赦なく照らししている。
夫は何も言い返せなかった。自分の放った刃が、寸分の狂いもなく自分自の臓に突き刺さっていることに、ようやく気づいたのだ。
い沈黙の、夫は肩を落とし、掠れた声で呟いた。
「……分かったよ。払えばいいんだろ。128万だか何だからないが……」
夫は力なくを抱え、必にので算盤を弾いているようだった。
「今ののボーナスがたら……そこから半分、いや、万は必ずおに返す。それでを打ってくれ。な? それでこの話は終わりにしよう」
それは反省ではなく、ただこの苦境から抜けすための、浅ましい値切り交渉だった。
私は机のの細を、端を綺麗に揃えてゆっくりと畳んだ。そして、顔をげ、夫の絶望しきった目を静かに見つめ返した。
「のボーナス?」
私のから漏れた問いかけに、夫がピクリと反応する。
「え……?」
「来週から、社内のコンプライアンス調査委員会が本格にくんでしょう? な虚偽記載による信用の偽装。……もし調査をパスできなくて、懲戒処分になったらどうするの?」
私は類をファイルに挟み込みながら、静かに、しかし決定な言を落とした。
「その、あなたののボーナスなんて、本当に円でも残っているかしら?」
夫はそれきり、言も声を発することができなかった。いたが塞がらず、顎のあたりが細かく震えている。元のテーブルに置かれた請求とメッセージの束を、まるで限爆弾でも見るような目で見つめるだけだった。
のボーナスなど、るはずがなかった。
週がけた曜の朝。夫が勤める産業器商社の名古支社で、臨の役員会とコンプライアンス審査会がかれた。
藤沢精をはじめとするの力加企業社が連名で突きつけた、事実確認。そこに添えられた、父の。言い逃れの余など、どこにも残されていなかった。
夕方、刈の自宅のドアが静かにいた。帰ってきた夫の顔には、気がひとかけらも残っていなかった。着のポケットから震えるで取りされた枚の社内通。辞令のコピーだった。
【営業第部 部職の解任】【業務管理部 ロジスティクスセンター付への異】【コンソーシアム関連業務からの無期限排除】
役職当の即全額カット。基本の減額。そして、調査結果に基づくの賞与の『支処分』。
夫が、父の名を無断で切り売りして買い集めてきた虚栄のが、たった枚の切れで音をてて崩壊した瞬だった。
「……終わった」
夫はリビングのフローリングに、膝から崩れ落ちた。両でを抱え、獣のような呻き声を漏らす。
「終わったよ……俺のキャリアも、見込みも、全部パーだ……! 倉庫の現で伝票理だぞ!? あんな臭い仕事、若い奴らに混じって俺ができるわけないだろ!!」
私はえた線を、夫の背に落とした。
同も、憐れみも、驚きすら湧いてこなかった。
「現の職たちを『油臭い寄り』と見していた罰よ。