"家族はすき焼き、義姉だけが台所で水かけご飯を食べていた" 第3話
……は?
言葉のが、ので像を結ばなかった。
父親?
直が?
「……え、待って、ください。どういう、ことですか」
私の声が震えていた。
喫茶のに流れる静かなクラシック音楽が、急にくの雑音のように霞んでいく。
「悠斗は今、歳です。私と直さんは、からお付きいしていました。結婚はしていませんでしたが、妊娠が分かった、彼と話しって……結局、別れることになりました」
由さんは淡々と、を押し殺した声で告げた。
そしてバッグのから、季の入った革のスマートフォンを取りし、画面を私に向けた。
そこに映っていたのは、今よりし髪のい直だった。
まだ首も座っていないようなさな赤ん坊を、器用そうに、けれど確かにおしそうに腕に抱いて、満面の笑みを浮かべている直。
別の写真には、芝ので、よちよち歩きをする男の子のを引く直の姿があった。
背景に写る公園の計台。
々の青さ。
その付は、ほんの半を示していた。
のの歯が、音をてて狂い始める。
悠斗くんは、歳。
私と直が交際を始めたのは、。
つまり、直が私と会った、あのはすでにの子どもの父親だった。
『結婚歴もないし、子どももいないよ。遥が初めてだよ、こんなに真剣に将来を考えたは』
プロポーズの夜。
夜景の見えるレストランで、し照れくさそうに、けれど真っ直ぐに私の目を見て言ったあの言葉。
あのの直の瞳に、片の曇りもなかったことを、私は鮮に覚えている。
嘘だった。
あの優しい顔も、誠実そうな声も、全部。
「直さんは、遥さんとお付きいしているも、悠斗に会いに来ていました」
由さんの徹な言葉が、私のを抉る。
「養育費の支払いは滞りがちでしたけれど、、ヶに度は『悠斗の顔が見たい』と連絡が来ていました。直さん、先もこう仰っていたんです」
由さんがメッセージアプリの画面を見せた。
『今は仕事の張がくて、悠斗には会えないかもしれない。ごめんね』
その付を見た瞬、胃の底からたいものが競りがってきた。
張。
違う。
その週末、直は私とで、結婚指輪のサイズ直しと、居のカーテンを選びにっていた。
「遥の好きなでいいよ」と笑いながら、私のを握っていた。
「直さんは、私と結婚することを、あなたに話していたんですか?」
絞りすように問うと、由さんは静かに首を横に振った。
「いいえ。何も聞いていませんでした。ただ最、養育費の振り込みが完全に止まっていて……連絡しても『て込んでる』と濁されるばかりで。そんなに、真帆さんからご連絡をいただいたんです」
線を真帆さんに移す。
真帆さんは俯き、膝ので握りしめた拳を震わせていた。
「真帆さん……っていたんですか?」
「……ヶです」
真帆さんの消え入りそうな声が返ってきた。
「直君が、あので話しているのを偶然聞いてしまったの。『今は振り込めない、結婚の準備で物入りだから』って。問い詰めたら、由さんと悠斗君のを状しました。私は、すぐに遥さんに本当のことを話しなさいって言ったの。入籍するに、絶対に伝えるべきだって」
「あのは……直は、何て?」
「『言ったら、遥は絶対に結婚してくれない』って。泣きついてきました。それだけじゃないの……」
真帆さんが顔をげた。
その瞳に溜まった涙が、今にも零れ落ちそうだった。
「お義母さんも、っていたんです」
背筋に、氷柱を突きてられたような悪寒がった。
「お義母さんが……?」
「私が直君を問い詰めた、お義母さんがに入ってきました。そして、私を鳴りつけたんです。『余計なを挟むんじゃない』って」
真帆さんの唇から零れ落ちる言葉のつひとつが、信じがたい毒を含んでいた。
「お義母さんは、直君にこう言いました。『籍さえ入れてしまえば、こっちのものよ。女なんて、度名を変えて親族に挨拶まで済ませたら、世体を気にして簡単には別れられないんだから。余計なことは、からしずつ話せばいいの』って」
の芯が、キーンと甲い音をてた。
籍さえ、入れてしまえば。
世体を気にして、簡単には別れられない。