"家族はすき焼き、義姉だけが台所で水かけご飯を食べていた" 第10話
『佳恵さんから聞いたわよ。直ちゃんの昔のことで、急にをびしたんですって? ちょっとあんまりじゃないの? 若い頃の過ちなんて誰にでもあるでしょう。子どもを引き取るわけでもないのに、籍を入れたばかりで実に帰るなんて、世体が悪くて親戚が騒ぎよ。直ちゃん、会社でも顔が狭くてじゃない。く戻って、ちゃんと奥さんとしての務めを果たしなさい』
の奥で、カッと血が沸騰する音がした。
メッセージアプリをくと、さらに別の従姉妹や親戚からの連絡が届いていた。
『遥ちゃん、男のをてるのも妻の役目だよ』
『お義母さん、労で寝込んじゃったみたい。度謝りにった方がいいんじゃない?』
『せっかく定したおに嫁いだんだから、も覚えないと』
画面をスクロールする指が、りで張る。
「……なるほどね」
わず声が漏れた。
義母のやりが、に取るように分かった。
自分たちの欺瞞と悪はすべて覆い隠し、「婚の嫁が、夫の過を許せずにヒステリックを起こして逃げした」というストーリーを親戚に撒き散らしたのだ。
堀を埋め、親戚同の同調圧力で私を屈させ、元の鞘に収めようという魂胆。
世体。
このが何よりも優先してきた、そのっぺらな板を守るために、またしても「嫁」
を悪者に仕てげる。
私は親戚からのメッセージの通をすべてオフにした。
自弁の文を送る気など起きなかった。
そんなことをしても、密の論理できているたちには何のも持たない。
夕方、チャイムが鳴った。
恐る恐るインターホンのモニターを確認すると、画面に映っていたのは真帆さんだった。
ドアをけると、真帆さんはし痩せたような顔で、々とをげた。
「遥さん……突然ごめんなさい。迷惑だって分かってたんだけど、どうしてもあなたの顔が見たくて」
「……真帆さん。どうぞ、に入ってください。何もない部ですけど」
真帆さんを部に招き入れ、コンビニで買ってきた温かい緑茶のペットボトルを差しした。
真帆さんはそれを両で包み込み、さく息を吐いた。
「あの……の、どうなりましたか?」
私が尋ねると、真帆さんは自嘲気に角を歪めた。
「獄絵図よ。お義母さんは半狂乱で、親戚に話をかけまくってる。『あんな酷な嫁だとはわなかった』『直を騙した』って、全部あなたのせいにしてるわ」
「やっぱり」
「そしてね、さっき私に話がかかってきたの」
真帆さんの瞳が、すっとたくなった。
「『あんたのせいで瀬の名にが塗られた。責任を取って、今すぐ遥さんのアパートへって、座してでも連れ戻してきなさい』って」
喉の奥が引き攣れた。
「……真帆さんに、そんなことを?」
「ええ。『男の嫁のくせに、の危を救うどころか引っ掻き回して、恥をりなさい』って鳴られたわ。来の族の法も、私は来なくていいって。親族から除名するって言われた」
「そんな……!」
わず声を荒らげた私を、真帆さんは静かに制した。
その顔には、昨までのような怯えはどこにもなかった。
「いいの、遥さん。私、断ったから」
「え……?」
「お義母さんに、はっきり言ったの。『いいえ。もう度と、あなたの言う通りにはきません』って」
真帆さんの唇からこぼれた言葉は、静かだったけれど、確かなみを持っていた。
「、ずっと怖かった。あので波をてたら、自分がきていけなくなるとってた。でもね、昨、遥さんが直君とお義母さんに言い放った姿を見て、目が覚めたの。私は、あのの世体のために、自分のを差ししていたんだって」
真帆さんはバッグのから、冊の帳を取りした。
「私、来週からフルタイムの仕事を探すことにしたの。元々持っていた会計士補の資格もあるし、昔の同僚に相談したら、紹介してくれる事務所があるって。太にも、さっき伝えたわ。『私は私のを取り戻す。あなたが母親の方をするなら、婚届を置いててく』って」
「真帆さん……」
「だからね、遥さん。
私のことは配しないで。あなたに恩返しがしたかったの。あなたが背を押してくれたから、私はあの台所の隅から抜けすことができた」