"家族はすき焼き、義姉だけが台所で水かけご飯を食べていた" 第14話
真帆さんの澄んだ声が、静かに響いた。
義母が眉をねげる。
「……は? 何て言ったの?」
「私は、謝りません」
真帆さんは義母の目を、真っ向から見据え返した。
その瞳には、恐怖の欠片も残っていなかった。
「私が黙っていたら、遥さんは何もらないまま、都よく利用されて暮らしていくことになっていたんです。私と同じように」
「な……ッ! 嫁の分際で、の恥をに晒しておいて、何き直ってるのよ!」
義母がちがり、座卓を叩いた。
その声に被せるように、私は静かにをいた。
「お義母さん」
線が私に集まる。
私は元に置いた温かいお茶に度もをつけないまま、義母に問いかけた。
「私は、このののなんですか? それとも、族なんですか?」
義母は瞬虚を突かれたように言葉を詰まらせ、それから忌々しそうに吐き捨てた。
「な、何よ急に。籍を入れたんだから、族に決まってるでしょう!」
「だったら」
私の声は、く、けれど部の隅々まで染み渡るように響いた。
「族になるに、どうして本当のことを話してくれなかったんですか?」
義母の喉が、引き攣るように鳴った。
「族だからしろ、族だから助けえとおっしゃるなら、どうして私は、その族になるための選択肢すら与えられなかったんですか? 私がらされていたのは、直の都のいい嘘だけでした。
悠斗くんのことも、滞納していた養育費のことも、私の料で活費を補填させる計画も。……都のいいだけ『族』という言葉を使って、私を縛り付けないでください」
「あ、あなたねえ……! 夫を支えるのが妻の役目でしょう!」
「嘘をついて騙し討ちにした相を支える義務など、この国のどこの法律にもありません」
私が元のバッグから取りしたのは、弁護士を通じて作成した受任通の控えだった。
文字がぎっしりと並んだ類の束を見た瞬、義母の顔からサッと赤みが引いていく。
その、真帆さんが静かにちがった。
そして、分のみを込めるように、義母を見ろした。
「お義母さん。私、、こののために尽くしてきました」
真帆さんの声は、震えていなかった。
「親戚の集まりがあるたびに朝から料理を作り、確定申告の期になればタダで帳簿をわせ、法事の準備もで押し付けられてきました。でも、私がしでも自分の見を言えば、『男の嫁のくせに気だ』と鳴りつけられた」
真帆さんの線が、かつて自分を縛り付けていた座卓のの空へと落ちる。
「あの、皆さんが笑って等なお肉をべていた、私は台所の隅のパイプ子で、たいをかけた残りご飯をべていました。……お義母さんは、覚えていらっしゃいますか? 『べたければ残りご飯でもべてなさい』って、私に言い放ったことを」
太さんが、顔を覆った。
「真帆……もう、やめてくれ……」
「やめないわよ」
真帆さんは夫を瞥すらしなかった。
「太さん、あなたはずっと『母さんは悪気がないんだから聞き流せ』って言ってきたわね。でもね、悪気がないからって、を踏みにじっていい理由にはならないの。あなたが母親の顔をうかがって見て見ぬふりをしてきた、私はずっと、あのたいご飯をべさせられていたのと同じだった」
義母が、わなわなと唇を震わせている。
「そ、そんなの……事を伝わせただけじゃないの! 嫁なんだから当然でしょう!」
「伝うことと、言いなりになることは違います」
真帆さんの放った言が、鋭い刃のように空気を切り裂いた。
「私はもう、あなたの言いなりにはなりません。先週から、会計事務所でのフルタイムの勤務が決まりました。自分の座も作り直しました。太さんがこのから精神に自できないなら、いつでも婚届に判を押す準備はできています」
「真帆……!」
太さんが鳴のような声をげた。
けれど真帆さんは、もはや夫の狼狽にすらをかされていないようだった。
息子の嫁たちから、て続けに突きつけられた徹な拒絶。
、絶対な支配者として君臨してきた義母の世界が、音をてて崩壊していく。
義母は顔を真っ赤に沸騰させ、最に残されたプライドの残骸を振りかざすように、私に向かって叫んだ。