"家族はすき焼き、義姉だけが台所で水かけご飯を食べていた" 第16話
ツヤツヤとる温かいご飯の横に、たっぷりと盛られた琥珀のカレー。
私はそのうちの皿を、両でそっと受け取った。
「いただきます」
スプーンを入れると、湯気とともにスパイスの温かいりがちる。
に運ぶと、じんわりとした温もりが喉の奥を通って、胃の腑に染み渡っていった。
「美しい……」
「よかった」
真帆さんは嬉しそうに目を細め、自分のスプーンをかした。
窓のでは、のに揺れたの若葉が、のを浴びてキラキラと輝いている。
真帆さんがふと、スプーンを置いて私を見た。
「初めて挨拶に来てくれた……あんな惨めな姿を見せちゃって、ごめんなさいね」
「……私、あののこと、度も忘れたことありませんよ」
私が答えると、真帆さんはしだけ恥ずかしそうに伏し目がちになった。
「台所の隅で、たいをかけたご飯をべていた真帆さんの姿。……私、あの本当にショックでした。でも、あの姿を見たから、私はあのの異様さに気づくことができたんです」
真帆さんは静かに息を吐いた。
「怖かったのよ。あののたちに、何を言われるか。裏切り者って罵られて、居所を全部奪われるんじゃないかって……ずっとが震えてた」
「でも、切れを渡してくれたでしょう」
「……ええ」
真帆さんが顔をげた。
その瞳には、もう過の怯えはどこにもなかった。
ただ、自分のでを踏み締めているだけが持てる、静かでいが宿っていた。
「やっと、言えたの。、喉の奥にずっと引っかかっていた言葉を、あの、遥さんに託すことができた」
真帆さんはクスッと笑って、空になった私のグラスにたい麦茶を注いでくれた。
「おかわり、いる?」
「はい。いただきます」
で顔を見わせて、自然と笑いがこぼれた。
初めて夫の実へった。
居には豪華なすき焼きが並んでいたのに、真帆さんだけが台所でたいご飯をべていた。
あの、私はまだらなかった。
あのでは、黙って自分を殺しているほど「いい嫁」と呼ばれるのだということを。
けれど今、私たちは同じテーブルで、温かいご飯をべている。
誰かの顔をうかがうこともなく。
誰かの許しを待つこともなく。
あの、台所の隅で震えていたたいご飯をいして、私は初めて、本当ので族になれた気がした。
血のつながりでも、戸籍の縛りでもない。
お互いを、の自したとして切にしえること。
私が欲しかった族は、きっと、こういうものだったのだ。