"「娘に頼まれたから」深夜に30個の弁当を作る母、私は何も知らなかった" 第12話
「ひゃ、百……!?」
夫の隣で、義母が鳴のような声をげた。
「な、何言ってるのよ歩美さん! 内同士の事伝いに、そんな法な請求ができるわけないでしょう!」
「できるわよ」
私は義母へたい線を突き刺した。
「事伝い? 冗談じゃない。あなたたちは母に『娘の副業のため』と嘘を吹き込み、錯誤に陥らせて無償の労務を提供させた。これはらかな法為よ。さらに、あなたはそのお弁当をで転売して、百万円以の現を売りげていたわよね?」
義母が息を呑み、胸元を押さえてずさりした。
「母が作ったお弁当のおかげでに入れた売は、全額が当利得。返還義務があるのは輔だけじゃない。名義としてを受け取っていたあなたも、共同法為者として訴訟の対象よ」
「そ、訴訟……!?」
義母の顔から完全に血の気が失せ、気を通り越して真っになった。
このは、世体と法な責任追及に何よりもい。『藤本恵子』の名で警察汰や民事訴訟を起こされ、裁判所からの呼状が所に届く――。その景を像しただけで、義母の膝がガクガクと震えていた。
「嫌よ……! 裁判なんて冗談じゃないわ! 私が訴えられたりしたら、所を歩けなくなるじゃない!」
「所を歩けなくなる? 結構じゃないですか」
母が、背筋を真っ直ぐに伸ばしたまま静かに言った。
「私はこの半、が痛くて眠れない夜を何度も過ごしました。湿布を何枚も貼り替えながら、歩美が困らないようにと、泣きながら根を切っていました。……私の半の苦しみに比べたら、あなたがご所にをげて回る恥など、何でもありません」
母の凛とした声音に、義母は言も返せなかった。目を泳がせ、すがるように息子を見る。
しかし、その息子はすでに完全に壊れていた。
「歩美……待ってくれよ……」
夫はいつくばったまま、私の首に縋り付こうとしてきた。私は躊躇なく、歩ろにを引いて避けた。
「頼むから、婚だけは……! 俺、もう借の返済で首が回らないんだよ! ここでおに見捨てられたら、俺、本当に自己破産するしかないんだ!」
に涙とを垂らしながら、夫は泣き叫んだ。
見捨てられたら。助けてくれなかったら。
最の最まで、この男のからるのは自分への憐憫だけだった。母の腫れがったにも、欺かれ傷つけられた私のにも、ただの度も誠実な差しを向けようとしない。
「輔」
私は、乾ききった声で告げた。
「あなたが背負った借は、すべてあなたの名で作ったものよ。夫婦の常事債務じゃない。私には円たりとも返済義務はないわ。弁護士を通じて、切の連帯責任を拒絶する類も提する」
「あ、歩美……!」
「今すぐ荷物をまとめて、あのマンションからてって。拒否するなら、警察を呼んで法侵入として通報するわ」
夫はを半きにしたまま、力なくに崩れ落ちた。
「それから、お義母さん」
私は義母に向き直った。
「材料費の替万千百円と、母への労務対価として最限の万円。計万千百円を、今末までに母の座に括で振り込んでください。振込が確認できなければ、翌には弁護士を通じて内容証郵便を発送し、裁判の続きに入ります」
「な……万!? そんな、急に言われたって……!」
「せるでしょう?」
私はたく切り捨てた。
「来週、婦会のお友達とくはずだった豪華な温泉旅の費用。それから、母の弁当を転売して貯め込んでいたへそくり。全額吐きせば、お釣りが来るはずです」
義母は喉を詰まらせ、ヒッとさな鳴をげたあと、顔を覆ってそのにへたり込んだ。
「てって」
母が、静かに玄関を指差した。
「度と、私の敷居を跨がないでください」
はもはや、何の言葉も紡ぐことができなかった。夫はふらつく取りでちがり、腰の抜けた義母の肩を支えながら、逃げるように実の玄関をてった。
バタン、といドアが閉まる音。台のが、慌ただしく夜ののへりっていくエンジン音が聞こえた。
静寂が、台所に戻ってきた。
元には、タッパーに詰め直された唐揚げと煮物。テーブルのには、母の角が擦り切れた学ノート。