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"正月の料亭で仲居に渡された「逃げてください」の紙切れ" 第13話

義姉、美智子。過の病院付き添い実績――ゼロ。

のに並んだ数字は、残酷なまでにだった。言葉の綾でも、族の論でもない。ただのかしようのない、徹な事実だった。

昼休み、私はコートを羽織り、役所へ向かった。

向かった先は、齢福祉課の隣にある『域包括支援センター』だった。域で暮らす齢者の介護や福祉に関する、公な相談窓だ。

パーテーションで区切られた相談ブースで、ベテランの社会福祉士の女性が私の話を聞いてくれた。私はを交えず、義母の客観な状況だけを伝えた。齢は歳。暮らし。変形性膝関節症で歩に杖が必だが、自力での排泄や事は能。介護認定はまだ受けていないこと。

「なるほど、お義母様のご状況ですね」

社会福祉士の女性は、元のパンフレットを広げながら丁寧に説してくれた。

「まず、おまいの自治体で『介護認定』の申請をしていただくのが第歩です。お話を伺う限りですと、おそらく『支援1』または『支援2』、くても『介護1』程度の認定がりる能性がいとわれます」

「その、どのようなサービスが利用できるのでしょうか?」

「支援であれば、介護予防サービスが使えます。例えば、通所型のリハビリデイサービス週〜回、ヘルパーさんによる買いしや掃除の活援助、そして通院等乗介助や、福祉用具のレンタルですね。

すりの設置や杖のレンタルも保険適用になります」

「費用は……どのくらいかかるものですか?」

私の問いに、社会福祉士は卓を叩いてみせた。

「介護保険の自己負担割は、原則として割です。お義母様の収入にもよりますが、般な受額であれば、区分支限度額の範囲内であれば、々の自己負担額は数千円から、くても万数千円程度に収まりますよ」

……数千円から、万円程度。

を疑った。

「そんな……数千円で、プロのを借りられるんですか?」

「ええ、それが公な介護保険制度ですから」

社会福祉士は穏やかに微笑んだ。

「もちろん、全額自己負担の民の級料老ホームに入ればに数万かかりますが、今のお義母様のお体の状態であれば、み慣れたご自宅で介護保険サービスを組みわせながら暮らすのが般です。ご族だけで抱え込む必はまったくありませんよ」

界が、急激にけていくような覚がした。

義母も、夫も、義姉も、ずっと私にこう吹き込んできた。「部に頼めば莫なおがかかる」「施設に入れば破産する」「だから男の嫁が面倒を見るしかない」と。

全部、嘘だったのだ。彼女たちは、公な制度を調べることすらしていなかった。あるいは、っていて隠していた。に万円程度の保険利用料すら惜しみ、あるいは申請続きのを嫌がり、すべてを「無料の嫁」

に丸投げしていたのだ。

私は、介護認定の申請式と、利用能な介護サービス覧のパンフレットを鞄に収めた。社会福祉士に々とをげ、センターをにする。

役所をたとき、の澄んだ青空が広がっていた。

もう、論で言い争う必はない。「嫁の義務」などという代な呪縛に付きう必もない。私には、数字がある。制度がある。そして、積みげてきた事実がある。

曜の夜。

夫がリビングのこたつに入り、テレビのバラエティ番組を眺めていた。料亭の事件から数、夫は私のご嫌取りをするように、ゴミしをしたり、買ってきたケーキを蔵庫に入れたりしていた。私がりをやり過ごし、いつものように諦めて妥協するのを待っているのだ。

私はキッチンからリビングへ歩み寄り、テーブルのに、分い茶封筒をトン、と置いた。

乾いた音が、テレビの笑い声を遮る。

夫が怪訝そうに顔をげた。

「……何だよ、これ?」

「けて見て」

夫はおずおずと封筒にを伸ばし、から類の束を引きした。

番にあるのは、過の私の休暇取得細と、義母の通院に費やした数の集計表。枚目は、夫と義姉の対応実績ゼロを示す比較グラフ。そして枚目は、域包括支援センターで受け取ってきた、介護認定申請と公介護サービスの費用試算表だった。

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