"白いメットと二十二年の嘘" 第11話
あの、真奈美のにあったのは、絶望とりだけだった。だが今、こうしてでののにっていると、それらの記憶はすべて、自分がしいへと踏みすために必な「脱皮の痛み」だったのだとえる。
もし、あの曜の朝、浩之がモスバーガーに誘わなかったら。
もし、彼が能気に野へのツーリングを提案しなかったら。
真奈美は今もあの暗いので、夫の顔を窺い、嘘に怯え、息を殺すようにしてきていたかもしれない。
あのは、自らの愚かさによって、図らずも真奈美をあの檻から解放してくれたのだ。
真奈美はコートのポケットに両を入れ、く息を吸い込んだ。
たい空気が肺を満たし、の芯がすっきりと冴え渡っていく。
もう、誰かの嘘に傷つくこともない。
誰かの顔を窺って、自分の言葉をみ込む必もない。
の予定も、来週の献も、これからのき方も、すべて自分自ので決めることができる。
ポケットからしたスマートフォンには、フラワーショップのからの「の仕入れ、珍しいオールドローズが入る予定です」というメッセージが届いていた。
真奈美は指先をかし、「楽しみにしています」とい返信を送った。
カバンを持ち直し、歩きす。
自分のがアスファルトを踏みしめる乾いた音が、静かな並によく響いていた。
空を見げると、のので、枯れの枝先がしい芽を静かに抱え込んでいるのが見えた。は、まだし先だ。けれど、真奈美の胸のにはすでに、あたたかなが吹き抜けていた。