"「寝かせた金」と呼ばれた一千万円" 第3話
私はりで声を荒らげるのをやめた。
りはエネルギーの無駄だ。
相が棒の論理でいているのなら、こちらは徹な執官になるだけでいい。
「わかったわ」
私はすっと表を消し、静かに頷いた。
「え……?」
夫が拍子抜けしたように目を丸くした。
「あなたがそこまで言うなら、亮介さんの事業内容を確認させて。適当ないつきでおをすわけにはいかないでしょう。亮介さんが準備している事業計画、舗の資繰り表、それから今までで話しってきたメモを、今の夜までに全部見せて」
夫の顔に、見る見るうちに堵のが広がった。
「な、なんだよ、最初からそう言ってくれればいいのに! やっぱり織は話がわかるな。亮介も母さんもぶよ。わかった、計画なら預かってるから、夜、全部見せてやる!」
完全に油断した笑顔を浮かべ、夫は「会社に遅刻する」と言ってに駅の改札へと消えていった。
見送る私の指先は、氷のようにたかった。
ぶ?
誰が、誰のために?
私はスマートフォンを取りし、学代からの親友で、都で融資事務をく担当している田辺由紀にメッセージを送った。
『相談したいことがあるの。内の無断名義利用と、融資保証の偽造について』
送信ボタンを押すと、分も経たずに既読がついた。
そのの夜。
ダイニングテーブルのには、夫が得げに広げた数枚の類が並んでいた。
『CAFE DE RYOSUKE 創業計画』
表にかれたっぽいフォントのタイトルを見て、私の胃のあたりが微かに痛んだ。
ページをめくる。
内装事費、厨設備リース料、保証、運転資。
総予算、千百万円。
そのうち、亮介の自己資として記載されていたのは、わずか「〇〇万円」。
それすらも、本当に元にあるのか怪しい数字だった。
そして、資調達計画の欄。
公庫からの借入希望額の横に、太字でこうかれていた。
『親族支援資:〇〇〇万円(義姉・織より拠予定)』
備考欄には、丁寧にきで追記がある。
『※定期預を担保提供、または連帯保証として設定完見込み』
「完見込み……」
わず声が漏れた。
「すごいだろ? 亮介のやつ、コンサルに入ってもらってここまで作り込んだんだってさ」
夫は缶ビールを喉に流し込みながら、嫌で言った。
まるで自分の柄のように胸を反らせている。
「ねえ、健。これ、誰が作ったの?」
「亮介だよ。あ、いや、数字の細かいところは俺も伝ったけどな。営業の現をってる俺のアドバイスが入ってるから、も納得するはずなんだよ」
私は無言でページをめくり続けた。
そして、最のページ。『組織体制・役員覧』に目が留まった。
代表:亮介
・現統括:亮介
そして、その。
『経営協力者・部顧問:健』
私は指を止めた。
「……経営協力者?」
「ああ、それな!」
夫はビール缶をテーブルに置き、を乗りしてきた。
「亮介だけじゃ、どうしても経営面が許ないだろ? だから俺が、休みのに仕入れのチェックとか、部との折衝を見てやることにしたんだ。まあ、男としての責任だよ」
「責任」
「そう。だから織の千百万も、ただ亮介にくれてやるわけじゃない。俺がしっかり監役として入るんだから、焦げ付く配なんてないんだよ」
夫は笑っていた。
底、自分が族のために尽くす頼もしい兄であり、の黒柱であると信じ込んでいる顔だった。
だが、私の目は誤魔化せない。
この粗雑な計画。
根拠のない売予測。
の返済計画すら成していない杜撰な数字の羅列。
そして何より――私の同を片も取っていないのに、すでに「千万円拠予定」として刷りがっているこの現実。
夫は、私の千百万を「内の美談」というオブラートに包み、奪する気でいたのだ。
その、リビングに甲い着信音が響いた。
テーブルのに置かれた夫のスマートフォンではない。
私のスマートフォンの画面が、激しく点滅していた。
画面に表示された名は、『義母』。
夫がニヤリと笑った。
「母さんだ。
きっとのことが気になってるんだよ。代わろうか?」
「いいえ。私がるわ」
私はえたで画面をスライドさせ、通話ボタンを押した。