"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第2話
この女は、私が誰かもらない。
私の肩も、この会社でかしている流通規模も。
ただ古いとサンダルだけを見て、踏み躙ってもいい無力な底辺だと決めつけている。
その、エプロンのポケットに入れていた私用のスマートフォンが激しく震えた。
画面に浮かびがった表示は「夫・健太」。
私は理の線をさず、画面をスワイプしてに当てた。
『もしもし、真紀か?』
受話器の向こうから、休のゴルフ練習特の打球音が微かに混ざって聞こえる。
「どうしたの」
『お、今どこにいる? 会社のくだろ』
夫の声は、妙に落ち着きがなく、どこか浮ついていた。
「ええ。いつもの堂でお昼をべているけれど」
次の瞬、夫が放った言葉に、私の全の毛穴が収縮した。
『母さんが紹介したさん、もう会ったか?』
……は?
目ので、理が級な鏡を取りし、余裕たっぷりにルージュを直している。
私の線に気づくと、鏡越しに「く話を切りなさい」とでも言いたげに眉を吊りげた。
私は息を潜め、爪がのひらにい込むのを識しながら、極めて平坦な声で返した。
「……どうしてあなたが、彼女がここへ来ることをっているの?」
話の向こうで、夫が瞬だけ言葉を詰まらせた。
『……どうしてって、母さんから聞いたんだよ』
夫は取り繕うように笑い声を漏らしたが、その響きはらかにずっていた。
『ほら、先週話しただろ。母さんののりいの娘さんが、京から元に戻ってきて仕事を探してるって。おの会社がちょうど営業のマネジメント枠を募集してるって聞いたから、俺が岸本部に本通してやったんだよ』
岸本部。
私の会社で営業と仕入れの決済権を握る、あの保の塊のような男だ。
夫とは以、商会議所の異業種交流会で名刺を交換して以来、たまにゴルフにく柄だったはずだ。
「推薦するのは勝だけど、なぜ私のいる堂に彼女が現れるの。私は採用担当でもないし、今は休よ」
『なんだよ、角のつ言い方をするなよ。母さんが気を利かせたんだ。いきなり曜に初対面じゃ緊張するだろうから、事に顔わせしておけってな。おが曜の昼はいつもその堂にいるって、俺が教えたんだよ』
の奥で、カチリと何かが噛みう音がした。
義母が仕組んだ。
そして夫が、私のパターンを筒抜けに横流しした。
『さん、ものすごいキャリアの持ち主なんだぞ。京のでバリバリやってた才兼備だ。岸本部も経歴を見て発で気に入ったらしい。おもそろそろだろ? いつまでも臭い現の仕事にしがみついてないで、若い優秀なに実務を任せて、楽をさせてもらえってことだよ。
母さんの親切なんだから、ちゃんとててやれよ』
――楽をさせてもらえ。
――臭い現の仕事。
喉の奥から、乾いた笑いが込みげてきそうになった。
私が、どれだけのを被ってきたか。
真の朝に凍結した速の迂回を配し、産の作で契約を破棄されそうになったスーパーの棚を埋めるため、何軒の農へを運んだか。
その利益で、夫のと、義母が細々と続けている品卸の赤字補填をどれだけ支えてきたか。
この男は、何つ理解していない。
理解しようともしなかった。
ただ「妻がで何か雑用をしている」程度にしか認識していないのだ。
「……そう。経歴を、岸本部に」
『ああ。だからおは余計なしをしないで、さんが働きやすいようにレールを敷いてやればいいんだ。じゃあな、母さんにも『ちゃんと引きわせた』って連絡しとくから』
方に通話が切れた。
ツコツコと鳴る子音を聞きながら、ゆっくりと画面を伏せる。
目のの理は、スマートフォンを置いた私を値踏みするように見つめ、さくため息を吐いた。
「旦さんから? 随分と話ね。まあいいわ。私の言いたいことは伝わったでしょう。曜の、営業フロアで待っているから。くれぐれも、そのみすぼらしい格好で会社に来ないでね。
恥をかくのは私なんだから」
ちがり、級バッグを肩にかけ、背を向けて歩きす女。