"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第4話
「なんだ、母さんからか? ちゃんと礼を言ったのかよ」
「健太」
私は夫のにった。
「理さんの採用、本当に岸本部ので決まったの?」
夫は面倒くさそうに顔をしかめ、ビールを煽った。
「何回同じことを聞くんだよ。岸本部が『即戦力として申し分ない、ぜひ営業体制を刷したい』って乗り気だったんだよ。俺の顔をててくれたんだ。お、曜に変な態度取るなよ? 俺と部のメンツを潰すようなことしたら、タダじゃ置かないからな」
メンツ。
この男ののには、それしかない。
妻が会社でどのような責任を負い、どのような権限を持っているのか、度として調べようともしたことがないのだ。
「分かったわ」
私はく告げ、自へ向かった。
デスクのに置いたノートパソコンをちげる。
暗い部のに、液晶画面の青いが広がった。
会社の内部ネットワークへリモートアクセスする。
勤怠管理、員配置、そしての採用案件のデータベース。
私のセキュリティ権限は、全社統基幹システムの管理権限に準ずる「レベル4」だ。
、現の物流とシステムを繋ぎ続けてきた私には、営業部である岸本と同等、あるいはそれ以のアクセス権が付与されている。
採用管理フォルダをく。
途採用枠・営業マネジメント職。
理の名を検索した。
画面に表示されたステータスを見て、私はさく息を呑んだ。
【最終選考:保留】
【面接担当:岸本隆(営業部)】
【否ステータス:条件調(未内定)】
……内定すら、ていない。
事部からの正式な採用通は発されておらず、雇用契約も締結されていない。
岸本部が個として「囲い込み」をい、で入社を仄めかしているだけの、極めてグレーな状態だった。
「これで、司面をして顧客の引き渡しを求してきたわけね」
だが、画面をスクロールした私の指が、ピタリと止まった。
岸本部が添付していた、週けの経営会議向けの稟議資料。
ファイル名は『点顧客管理体制の再編および戦力登用について』。
その添付ファイルをいた瞬、背筋にたい刃物を押し当てられたような戦慄がった。
理の職務経歴と、彼女がが社にもたらす「実績見込み」の資料。
そこには、見慣れた数字が並んでいた。
『スーパーA社との供枠の拡:売推移〇%達成』
『方特産品加品における、独自物流網を活用したコスト〇%削減スキームの構築』
……ふざけないで。
画面に並ぶプロジェクトの数々。
それは、理が京の商社で掛けた実績などではなかった。
の豪害の際、私がに浸かりながら配送ルートを再編し、取引先の棚を守り抜いて結び直した、が社の物流チームの実績そのものだった。
付も、数値の推移も、私が過に作成した業務報告のグラフと完全に致している。
なぜ、まだ入社もしていない部者が、私の作った社秘の業務実績データを自分の「過の実績」としてき換えることができるのか。
私は震えるでマウスを握り直した。
資料のプロパティをく。
【作成者:藤原健太】
【最終更:先週曜 23:14】
暗い部の、私の喉から微かな呼気が漏れた。
……健太。
あなた、私の斎から古い業務ファイルを持ちしたわね。
夫のパソコンは、リビングの片隅にある。
あの男は折、自宅で「副業のコンサルティング業務」と称して夜遅くまで何かを作成していた。
私が会社から持ち帰った過のプロジェクト資料の控えが、斎の棚から数冊消えていたことには気づいていた。
単なる理の紛失だとっていたものが、まさかこんな形で使われていたとは。
夫が、妻の過の実績を盗みして理に渡し、
理がそれを自分の輝かしいキャリアとして偽装し、
岸本部がそれを利用して営業の体制刷をでっちげようとしている。
そして、その見返りとして、私のの顧客基盤を丸ごと奪い取ろうとしているのだ。
「……いい度胸ね」
私は唇の端を吊りげ、画面のデータを静かにローカルフォルダへ吸いげた。
アクセスログ、作成者の更、ファイルの致率の証データ。