"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第10話
あからさまな嘘だった。
この男は、何か決定な秘密をりかけたのだ。
「そう。メンツね」
私はそれ以追及せず、静かに線を落とした。
夫はバツが悪そうに舌打ちをすると、「飯はいらない」と吐き捨てて寝へ逃げ込んでいった。
バタン、と乱暴に閉ざされる扉。
私は静まり返ったキッチンで、スマートフォンの画面をタップした。
――理を私のポストにねじ込むことが、義母のビジネスと直結している。
答えはすでに、会社のに転がっているはずだった。
翌朝、曜。
私は普段より分く社した。
誰もいない朝のオフィスで、基幹システムの調達データベースをく。
検索ワードは『藤原』、そして義母が経営する零細品卸の号『限会社フジワラフーズ』。
フジワラフーズ。
義母がき義父から引き継ぎ、細々と続けている域密着の品卸だ。
は元スーパーの相次ぐ閉とネット通販の台で、業績は肩がり。
義母は毎のように「今も赤字だ」と夫に泣きつき、その補填のために私の与座から活費の補填が消えていくのが常だった。
そのフジワラフーズの名が、が社の【半期・規取引先登録申請】のフォルダのにあった。
「……あったわ」
申請されている案件名は、
『方特産品プレミアムギフトセット・定期調達スキーム』。
が社が今度から本格参入する、全国規模のカタログ通販および級百貨向けの型ギフト事業だ。
方の隠れた名産品を詰めわせ、数億円規模の流通を見込む目玉プロジェクト。
その核サプライヤーの候補として、なぜか実績も設備もないフジワラフーズが、最優先枠でノミネートされていた。
起票者は――営業部、岸本隆。
添付されている推薦状には、こうかれていた。
『元力卸との固なアライアンスにより、定な調達と特注アソートが能。担当窓には、業界に精通した部エキスパート(理氏)を招聘予定』
全の血が、音をててたくなっていくのをじた。
そういうことだったのか。
理をが社のマネジメントに据え、私の顧客基盤を奪わせる。
そして、理の権限で、この数千万円規模のギフト調達枠を、義母のフジワラフーズへ丸ごと発注させる。
発注側の窓も、受注側の調役も、すべて内で固める。
そうすれば、価格の妥当性も、納品の遅れも、品質の偽装すら、すべて社内で揉み消すことができる。
義母の会社には莫なマージンが転がり込み、岸本は規プロジェクトのちげ実績をに入れる。
そして――あの男。
夫の健太は、その取引のに入り、自分のペーパーカンパニーから「コンサルティング料」
という名目で、会社のを法に吸いげる。
そのすべての台として、私がかけて築きげてきた『仕入れルートの信用』と『顧客基盤』が、無断で担保に差しされていたのだ。
「私のを……あなたたちの私腹を肥やすための踏み台にするつもりだったのね」
りで指先が微かに震えた。
だが、その震えは数秒で収まった。
奥歯を噛み締め、く、く息を吐きす。
その、元の私用スマートフォンが軽な通音を鳴らした。
画面を見ると、夫の親族で構成されている『藤原』のLINEグループだった。
普段は義母の自話や、親戚の法事の連絡くらいしかかないそのグループに、義母からの文メッセージが投稿されていた。
『親戚の皆様、嬉しいご報告があります!
がフジワラフーズの伝統と品質が認められ、この度、あの流通企業とのプレミアム調達枠の取引が内定いたしました!
息子の健太と、京から来てくれた優秀な理ちゃんが骨を折ってくれたおかげです。
真紀さんの会社を通じて、がのが全国に広がります。
来、料亭「まつもと」にて、親族同でお祝いの事会を催したいといます。皆様、ぜひご予定を空けておいてくださいね!』
メッセージの末尾には、級料亭の豪勢な会席料理の写真が添えられていた。
親戚たちからの賞賛のスタンプが、次々と画面を埋め尽くしていく。
『さすが健太さんだ』