"サンダル履きの妻を、夫が売る日" 第16話
ですが――この案件には、単なる能力や類の偽造を超えた、な犯罪為が含まれています」
川が図をすると、プロジェクターの画面が切り替わった。
そこに映しされたのは、松製菓から持ち込まれた『見積仕様』の最終ページだった。
赤く拡された文字が、スクリーンの真んに浮かびがる。
【販売促費・業務紹介フィー:納品額の5%】
【指定振込先座:井友 〇〇支】
【座名義:健太コンサルティング・パートナーズ 藤原健太】
しん、と。
部ののすべての空気が、絶対零度まで凍りついた。
審査員席の役員が、鏡の奥の目を眇めて読みげた。
「……藤原健太。この男は、誰だ」
川が、淡々と告げた。
「が社社員、藤原真紀主任の戸籍の配偶者です。そして、フジワラフーズ代表・藤原幸子氏の実の息子です」
役員の線が、壁際でさく縮こまっていた夫へ、ナイフのように突き刺さった。
「社員の夫が……会社の取引に個に介入し、パーセントの数料を裏でキックバックさせていた……? これは、が社に対する背任および詐欺の未遂ではないのか」
「ひっ……!」
夫の喉から、空気の抜けるような鳴が漏れた。
膝がガクガクと震え、壁に背を押し当てながら、ずるずると崩れ落ちそうになっている。
「ち、違う! 俺は……俺はただの正規のコンサルティング料として……!」
「コンサルティングの実態など、どこにもしません」
私はちがり、夫の目を真っ向から見据えた。
「あなたが提させたこのパーセントは、が社が支払う調達費から当に抜きされる予定だったです。万セットがけば、何百万円というが、何つ汗を流していないあなたの座へ転がり込むはずだった」
「真紀……! お、何を言ってるんだ! 俺はおの夫だぞ!?」
「だから何?」
私の声には、片の慈も混ざっていなかった。
「私のの信用を盗み、妻の会社をい物にしようとしたが、今さら族の顔をするの?」
「あなたッ!!」
義母が半狂乱になって叫んだ。
振り乱した髪が顔にかかり、価なスーツの襟元が歪んでいる。
「何が背任よ! 何が詐欺よ! 内が潤うように計らって何が悪いのよ! おみたいなげのない嫁をも養ってやった藤原に対する、当然の礼儀でしょうが!!」
「お義母さん」
私は歩、義母のへと歩みた。
「の活費の半分以、そして健太さんの借の穴埋め、フジワラフーズの毎の赤字補填。すべて私の与座から支払われていた記録を、すでに弁護士へ提済みです」
義母の息が、喉の奥で詰まった。
「養われていたのは、私ではありません。私の労働に寄していたのは、あなたたちの方です」
「な……な、なんですって……!?」
「あなたが今着ていらっしゃるその万円のスーツも、親戚に見せびらかすために予約した料亭まつもとの請求も、すべて私の座から引き落とされる筈になっていましたね」
私はたい笑みを浮かべた。
「今朝番で、私の個座からの族カードの引き落としを、すべて止いたしました」
義母の顔が、真っ青を通り越して気になった。
「あ……あ、貴女……! キャンセルなんて今さらできないわよ! 親戚がもう、料亭に向かってるのよ!? 恥をかかせる気!?」
「恥をおかきになればいいでしょう」
私は歩も引かなかった。
「実力もないのに見栄を張り、息子の嫁の褌で相撲を取ろうとした報いです。どうぞ、ご自の預でお支払いください。残があればの話ですが」
「ぎ……ぎゃあぁぁぁっ!!」
義母は髪を振り乱し、パイプ子を蹴り倒して喚き散らした。
だが、警備員が名、静かに会議のへ入ってきた。
「理さん、藤原健太さん、藤原幸子さん。社内規定違反および法侵入、業務妨害の疑いにより、直ちに退していただきます」
「しなさいよ! 私は被害者よ! この男たちに唆されたのよ!」
理が警備員の腕を振りほどこうと暴れ狂う。
完璧だったメイクは涙と汗でドロドロに崩れ、いヒールが脱げて無様にを転がった。
「健太! なんとか言いなさいよ健太ぁっ!!」
義母が息子の袖に縋り付く。
だが、夫はもはや母を見る余裕すらなく、に膝をつき、私に向かってをわせていた。