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"花嫁が逃げた祝言で、毒を盛られた若旦那が選んだ女中" 第1話

毎晩、誰にも気づかれることなく婿の薬に毒が盛られていた。この恐ろしい真実をっていたのは、敷の全員から疎されたのきけない女だけだった。

そして婚礼の当、嫁が姿を消したその瞬、を待つばかりだった婿はためらうことなくその女を妻に選んだ。

「あの女を連れて参れ。私の祝言は、あの娘と挙げる」

ちがることもできない婿は、痩せ細ったを伸ばして台所働きの女を指差した。周囲の者たちはうわ言だとったが、そのだけは鋭くっていた。

引きずりされたのは、が聞こえずもきけない、敷で最も分の卑しい娘だった。だが婿がよりによってその娘を選んだ裏には、誰も像だにしない理由が隠されていた。

い昔の戸代、ある栄えた町に、源という名の本の跡取りが暮らす庄の敷があった。代々役職を務めてきた格式い柄である。

堂々たる表はくそびえ、広な庭の奥にある蔵には米がぎっしりと詰まっていた。にはくの奉公が暮らし、誰もが羨むような層な敷だった。

しかし、このきな敷には1つの暗いが差していた。本の跡取りである21歳の源が、原因もわからぬまま病に伏せていたのだ。

本来は端正な顔ちと聡さで隣に名が轟くほどの若者で、先までは馬に乗って野を駆け巡っていた。

それがある期から体調を崩し、今ではから体を起こすことすらできなくなっていた。

「奇妙なことだ。あれほど壮健だったお方が、どうしてあのような様になってしまわれたのだろう」

奉公たちは庭の隅でひそひそと噂しった。

「体に良いという薬はあらゆるものを試したというのに、向に良くならないとは、まるで狐にでも化かされているようだ」

「それだけではないぞ。名い医者が3もお越しになったが、どいつも病名1つ突き止められなかったのだ」

男たちが声を潜めると、もう1がさらに顔をづけた。

「さらに奇怪なのは、薬を用いれば用いるほど若旦がどんどん衰えていかれるということだ。薬ではなく、何か恐ろしいものでもあるのではないか」

「これ、そんな滅相もないことを軽々しくにするな。誰かに聞かれたらどうするのだ」

傍らにいた配の奉公が慌ててを振って制した。その言葉の終わりには、とてもにはせない恐ろしい疑が張りついていた。

実際、どれほど医者が診ても源の病状は好転しなかった。良いとされる薬は全て尽くしたが、薬をむたびに源の顔は層血の気を失っていった。

この本には、源のき父親ののれた弟にあたる、庄兵という45歳の叔父が1いた。

垂れがった瞼にみのある、艶やかな絹の着物をまとって派な帯を締めた姿は、見すると品で教養のある物に見えた。

だが、その慈い仮面の裏には酷な刃が隠されていた。庄兵は随分から、この本の代をそっくり乗っ取る算段をてていたのである。

兄がくにくなり、若い甥1が莫な財産を背負うことになったのが、庄兵には悔しくてならなかった。あの財産も本の当主の座も、本来は自分のものになるべきだと考えていたのだ。

そこで庄兵は、甥をしずつをかけて嬲り殺しにする計画を企てた。1度に命を奪えば悪事が見するため、薬に毒をしずつ混ぜ、病でに至ったように見せかける魂胆だった。

その汚れた役目を引き受けたのが、庄兵のである38歳の権蔵だった。がっしりと張った肩に険しい目つきをし、片方の頬にい刀傷の跡がある男である。

権蔵は庄兵ののように付き従い、主が命じることならどんな悪事にもを染めた。夜な夜な源の薬の器に毒を仕込むのも権蔵の役目で、奉公たちはその厳つい体格を見ただけでをめて避けていた。

こうして本の跡取りである源は、叔父の裏切りによってゆっくりと命を削られていた。しかし当の源も敷の者たちもその事実をらず、ただい治の病に侵されたとばかりい込んでいた。

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