"夫の親孝行は、私の持ち家でした" 第9話
自分は「族を救った最の男」として君臨する。
そして、その莫な原資を提供した私には、所権の1パーセントすら与えられない。
ただの「同居」、ただの「居候」としての席しか用されていない。
「……どうだ?」
修が満そうに腕を組み、から私を見ろしてきた。
「完璧だろ? 千百万のローンなら、今の俺の料とボーナスで分に返済していける。母さんも浩たちも、みんなして暮らせる。俺が全部背負ってやるんだよ、男としてな」
私は類からゆっくりと顔をげた。
界が、恐ろしいほどクリアに研ぎ澄まされていく。
この男は、自分が何をしているのか、本当に理解していないのだ。
の命を削った財産を盗み取り、それを自分の勲章に変えることが、どれほどい罪なのか。
像する性すら持ちわせていない。
「……ええ」
私は類を丁寧につ折りにし、自分の帳のに挟み込んだ。
「よくわかったわ。修さんの、本気度が」
「だろ!? わかればいいんだよ、わかれば! じゃあ、週末の親族会で、母さんと親戚同に正式に発表するからな! おもちゃんとついてこいよ!」
修は嫌でをいながら、リビングをてった。
帳のに挟まれた、枚の。
それは夫が描いた輝かしい未来の図面などではない。
この男と、その族を社会に処刑するための、完璧な「刑宣告」
だった。
曜の夜、リビングのパソコンをいたまま呂へ向かった夫の背を見送り、私は画面のに滑り込んだ。
デスクトップの片隅に保されていた規ファイル。
『親族会スピーチメモ_居計画』
ファイルをくと、そこには吐き気がするほど美辞麗句で塗り固められたきが並んでいた。
『父が界して。男として、母と弟族が将来にわたってして暮らせるまいを用することが、私の果たすべき責任だと確信いたしました』
『族がひとつ根のに集い、互いを支えうしいとして、最のグランドメゾンを選定しました』
どこを縦読みにしても、「真由美」の文字はしなかった。
私の婚資産である千百万円の拠についてはも触れず、すべてが「男・修の英断と甲斐性」として記述されている。
私は無表のまま画面のスクリーンショットを撮り、部ストレージへ転送した。
そして、ファイルを元の状態に戻してブラウザを閉じた。
曜の朝、親族会がかれる割烹料理へ向かう準備をえる。
鏡ので、ネイビーの端正なセットアップにを包んだ。
襟元を正し、髪をきっちりとうしろで束ねる。
その姿に、迷いや傷のは微もない。
提げのビジネスバッグの底には、クリアファイルに収めた枚の。
法務局が発した自宅の『登記事項証』原本。
夫が気揚々と作成した『総資計画』の現物。
そして、央産の千葉から昨夕メールで送られてきた『売却査定続き終および所者拒絶確認』のプリントアウト。
すべて、反論の余をミリ単位で圧殺するための刺刀だ。
「真由美、準備できたか? 遅れると親戚の、男の格好がつかないからな」
リビングから、仕てのいいスーツを着た修が声をかけてくる。
鏡越しに見る夫の顔は、これから自分が族の英雄として讃えられる瞬をい描き、潮していた。
「ええ、準備はできているわ」
私は提げバッグのファスナーを静かに閉め、玄関へと向かった。
親族会の会となったのは、内の老舗本料理『まつむら』のれだった。
入れのき届いた本庭園を臨む、畳ほどの格式い座敷。
のには見事な掛け軸とけが飾られ、な座卓にはすでに分の先付が然と並んでいる。
部の最奥、座の央には、仕てのいい訪問着を着た義母の子が鎮座していた。
帯をきつく締め、背筋を伸ばし、まるで名敷の内のような尊な笑みを浮かべている。
「あら、修、真由美さん。かったわね」
子は自の息子を招きし、自分の隣の座へと座らせた。
「本の叔父さんも、向こうの叔母さんも、もうすぐお見えになるわよ。