みかん小説
本棚

"検事採用面接の朝、夫は「妹のために辞退しろ」と言った" 第5話

ただ自分が妻に置いていかれる恐怖から逃れるために、私の翼を折ろうとしている。

義母の嫉妬を利用し、妹のを隠れ蓑にして、私をこの所に閉じ込めようとしていたのだ。

マグカップからちる湯気の向こうで、私はのすべてを凍りつかせた。

敵の正体は、完全に割れた。

夫が差ししてきたマグカップには、指本触れなかった。

湯気の向こうで、卑屈に歪んだ夫の笑顔がじわじわと崩れていく。

「玲奈……聞いてるのか? 俺たちの庭を守るための提案なんだぞ」

「庭を守る?」

私の喉からた声は、自分でも驚くほどくえていた。

「私のキャリアをあなたの都でへし折ることが、どうして庭を守ることになるの?」

夫はびくりと肩をねさせ、居悪そうに線を逸らした。

「へし折るだなんて、聞きの悪い言い方をするなよ。族のバランスを考えたら、おが元に残るのが番自然だって話だろ」

「そのために、お義母さんと結託して私の面談を妨害しようとしたのね」

淡々と事実を突きつける。

「ち、違う! あれはおふくろが勝に言いしたことで……」

「なら、なぜ『分かってる、俺から話す』と答えたの?」

廊で聞いた密談の言葉をそのまま投げ返すと、夫は息を呑んで絶句した。

顔から急速に血の気が引き、唇をわなわなと震わせる。

「全部、聞いてたのか……」

「ええ。最初から最まで」

私はちがり、夫を見ろした。

「あなたが何を企んでいようと、私のは私が決めます。そして、夫婦のをドブに捨てる真似は度と許さない」

寝へ戻り、スマートフォンのバンキングアプリをちげた。

共同座の限度額を最設定へ変更し、段階認証の通先を私の端末のみに固定する。

これで、あの怪しげな業者への残支払いは完全に遮断された。

夫の浅な支配欲も、義母の歪んだ見栄も、まずは兵糧攻めで締めげる。

翌朝の過ぎ。

勤の支度をえていると、リビングからけたたましい着信音が響いた。

受話器を取った夫の、怯えきった声が聞こえてくる。

「……母さん? あ、いや、残の振り込みなんだけど……」

話から漏れ聞こえる義母の切り声は、廊まで筒抜けだった。

『どういうことなの裕! 林先からまだ入がないって連絡が来たわよ! 彩佳の将来を潰す気なの!?』

「違うんだよ母さん、座が……玲奈がロックをかけちまってかせないんだ」

『なんですって!?』

受話器が割れんばかりの絶叫。

『あの嫁、どこまで性悪なの! 彩佳への嫌がらせよ! 今すぐその話を玲奈さんに代わりなさい!』

夫がおずおずと差ししてきたスマートフォンを、私は無言で奪い取った。

そのままに当てる。

「もしもし、お義母さん」

『玲奈さん! 何の権利があってがのおを止めるのよ! 彩佳の採用がかかっている事なおなのよ!』

受話器の向こうの狂気じみた剣幕にも、私の拍数はつもがらない。

を完全に切りし、事務なトーンで問い返した。

「がのおではなく、私と裕が築いた共財産です。それに、正規の教員採用試験に民業者が利きできる理はありません」

『利きだなんて聞きが悪い! 林先は教育界の鎮なの! 先のお力添えがあれば、彩佳は確実に正規教員になれるのよ!』

「確実、ですか」

私はややかに言葉の端を捕らえた。

「公学の教員採用で内定を確約する為は、法に見て贈収賄や詐欺に該当する能性がありますが、ごですか?」

『な、何を物騒なことを……! とにかく、たかが数万を惜しんで妹のを邪魔するなんて、鬼のような嫁ね!』

「そんなに正当な支援なら、なぜ彩佳さん本に言も話していないのですか?」

受話器の向こうが、ピタリと静まり返った。

義母の喉が詰まる音が、確に聞こえた。

「……え?」

「昨、彩佳さんに確認しました。彼女は自分の力で試験に挑んでおり、そんな怪しい指導など頼んでもいないと証言しています」

『あ、あの子は……余計なプレッシャーを与えないために、親戚同で見守ってあげてるのよ!』

苦し紛れの言い訳。

声の震えが、義母の揺を如実に物語っていた。

「本のあずかりらぬところでをかし、偽りの格を買い与えることが親のですか? これ以の送は切認めません」

おすすめ作品

リンクを共有

以下のリンクをコピーして友達と共有してください: