"検事採用面接の朝、夫は「妹のために辞退しろ」と言った" 第12話
が止まったようにじた。
「……採用試験?」
「はい。さっき、教育委員会から通が届きました。正規の学教員として、採用が決まりました」
彩佳の喉から、詰まっていた涙が溢れしていた。
それは、悔し涙でも怯えの涙でもない。
自らので掴み取った、本物の勝利の涙だった。
「おめでとう、彩佳さん」
からの言葉が、自然とをついてた。
「誰の力も借りず、あなたの努力だけで勝ち取った結果よ。胸を張りなさい」
『ありがとうございます……っ。玲奈さんが、あの背を押してくれなかったら、私、お母さんの操り形で終わるところでした……!』
彩佳はを啜りながら、決然と言葉を続けた。
「私、今アパートを契約してきました。実には、必な荷物を取りにくだけです」
「お義母さんには、話したの?」
彩佳は静かに息を吸い込んだ。
『格の通を見せました。「先の利きのおかげね」って縋り付いてきたから……はっきり言いました』
「なんて?」
『「先なんて関係ない。私の点数と面接で格したの。お母さんがやったのは、ただの犯罪未遂だよ」って』
義母の崩れ落ちる姿が、容易に像できた。
娘を守るという義名分を盾に、自己を満たしていた女。
その拠り所を、実の娘ので完膚なきまでに叩き潰されたのだ。
『お母さん、親戚から絶縁状を叩きつけられて、今はのでで泣き叫んでます。
「彩佳のためにやったのに」って……』
彩佳の声には、もはや片の迷いもなかった。
『でも、もう同はしません。私は私の教で、子どもたちに恥ずかしくないになります』
「派よ、彩佳さん」
通話を終えた、私は見げた空の青さに目を細めた。
悪の連鎖は、断ち切られた。
娘は母親の支配から完全に脱し、自という名の最も残酷な報復を成し遂げたのだ。
週。
指定した座に、万円の入が確認された。
振込名義は、神田裕。
親戚に泣きついてを面したのか、あるいは自らの貯を切り崩したのか。
いずれにせよ、私の元から奪われたは、円の狂いもなく取り戻された。
同に、弁護士を通じて婚協議の申入を送達させた。
財産分与、慰謝料、そして婚姻関係の完全な解消。
法続きのレールは、寸分の狂いもなく敷かれていた。
そして、運命の曜。
司法研修所から、通の親展封筒が私の元に届いた。
指先を滑らせ、封筒をく。
の用に印刷された、厳格な公印と力い活字。
『検察官任官の件』
方検察庁への配属を命ずる、正式な任官通だった。
希望通りの職務。
私が何も、眠を削り、周囲の雑音を撥ね除けて掴み取った、本物の切符。
胸の奥が、い誇りで満たされた。
義母が蔑み、夫がへし折ろうとした私のは、何つ損なわれることなく私ののにあった。
その夜、弁護士経由ではなく、SMSに夫からの文メッセージが届いた。
着信拒否を潜り抜けて届いた、最の悪あがきだった。
『玲奈、頼むからもう度話を聞いてほしい。
おふくろとは完全に縁を切った。連絡先も消したし、実にも度とかない。
おの方配属にもついていく。仕事を辞めてでも、おを支えるから。
俺が悪かった。おがいないと、俺のは何のもないんだ。やり直してくれ』
画面に並ぶ、勝な懇願。
保と執着にまみれたその文面を、私は徹な瞳で見つめた。
「仕事を辞めてついていく」
かつて私の翼を折ろうとした男が、今度は私の首に縋り付いてき延びようとしている。
どこまでも寄することしか考えられない、れな魂。
私は指先をかし、く返信を打ち込んだ。
『私がを諦めないと続けられない結婚なら、もうりません』
送信ボタンを押すと同に、番号を完全に削除した。
翌朝。
私は仕て直した黒のスーツにを包み、トランクケースを引いて駅のホームにった。
澄み渡るの青空の、方検察庁へと向かう幹線が滑り込んでくる。
義母の狂気も、夫の欺瞞も、すべては過の澱に過ぎない。
の惑で歪められるなど、どこにもない。
私は迷いのない取りで、列のドアをくぐった。
法と正義を司る、私自の戦へ向かって。