"結婚3週間前、私のマンションを「弟に10%譲れ」と言った婚約者" 第7話
「……破産?」私の背筋に、たい流がった。
「匠君は慌てて通話を切ろうとしたが、焦りのあまり取り乱して、母親に向かって鳴り返していたよ。『健太の借まで、俺で面倒見きれるか!』とな」
パズルの最のピースが、音をてて嵌まり込んだ。健太が欲しがっていたのは、結婚相への見栄でも、産の社会信用でもない。膨れがった借の穴埋め。それも、破産をにするほど差し迫った返済期限だったのだ。
父にお礼を言って話を切った、私は洗面台の鏡に映る自分の顔を見つめた。りで取り乱すなど微もなかった。ただ、たく研ぎ澄まされた瞳が、獲物を仕留めるタイミングを徹に見定めていた。
そのの昼休み、私は匠宛てに本のメッセージを送信した。『お父さんからすべて聞きました。健太君の借の件、包み隠さず説してください。現での解決を打診してきた理由も、それですね? 正確な負債総額と借入先を示しない限り、今の荷物の引き渡しを含め、切の接触を拒絶します』
な言葉は切排し、相が最も隠したがっている急所だけを正確に突いた。匠からの返信は、わずか分に届いた。
『リナ、誤解だ! 母さんも揺してげさに言っただけなんだ! 頼むから、度だけでいいから会ってくれ。
今夜、おのマンションので待ってる』
私は即座に指をかした。『敷内にち入った瞬、警察へ通報します。説があるなら、このトークルームに数字で記載してください』
既読がついたまま、相の入力を示す波線が点滅を繰り返した。分、送られてきた文章は、言い訳と自己保で幾にも塗り固められた無様な告だった。
健太の負債総額は、およそ280万円。消費者融からの借入と、リボ払いの累積、そして結婚準備のために見栄を張って購入した級具のローンがなり、債務の歩に陥っていた。健太の婚約者である川美穗は、資産の令嬢で育ちが良い。その彼女や実に借の事実が見すれば、即座に婚約破棄されることを恐れた義母と健太が、男である匠に泣きついたのだという。
『健太も反省してるんだ。あいつ、真面目に働いてるし、結婚さえできれば活をて直せる。マンションの10%をに換して、借を括清算してやりたかっただけなんだよ。内の恥を隠してやるのが、族の務めだろ?』
画面の文字をスクロールしながら、私の胸を来したのは底れない嫌悪だった。自分の弟がの丈にわない活で積みげた借を、の資産を奪って帳消しにしようとする図々しさ。
しかも、匠自の預貯からは銭もさず、妻になる私のを切り売りして善面を繕おうとしていたのだ。
『なぜ、あなたがて替えてあげないのですか』私は徹に問いを投げかけた。
『俺だって、これからおとの結婚活があるし、貯を取り崩すわけにはいかないだろ! おのなら、父さんからタダでもらったものじゃないか! 痛くも痒くもないだろ!』
本音が、完全に決壊していた。この男にとって、私の父がをかけて働き、娘の未来のために遺してくれた資産は、「タダでに入った余剰物」に過ぎなかったのだ。の痛みにいを馳せる回など、この男の脳内には最初からしていなかった。
私はそれ以返信せず、トーク画面を閉じた。これで役者は揃った。しかし、まだ終わらせない。この寄虫たちが描いたシナリオによって、もう、何もらずに騙され、を狂わされようとしているがいる。
健太の婚約者、川美穗。
そのの終業直、私のスマートフォンに見らぬ番号からの着信があった。局番ではなく、個の携帯番号。直めいたものが働き、私はオフィスの廊にて通話ボタンを押した。
「もしもし、です」「あ……突然のお話、変申し訳ありません。杉健太さんの婚約者の、川美穗と申します」
受話器の向こうから聞こえてきたのは、微かに震える、しかし芯のある落ち着いた女性の声だった。「……川さん。どういったご用件でしょうか」