みかん小説
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"娘が義母に叩かれた日、娘婿はケーキで済ませようとした" 第9話

その清算の刃が、今まさに自分の喉元に突き刺さっている。

実に着くと、庭には雑がい茂り、郵便受けには数ヶ分のチラシが溢れていた。直さんは黙々とポストを漁り、束になった郵便物を引き抜いた。

そのに、半に投函された事会社の完報告が紛れ込んでいた。

事完、。漏れ修繕完、通テスト異常なし。

「母さん、これ……」

直さんの指が、の端を握りつぶした。

「半もに、回りは完全に直ってたんじゃないか」

玄関ので鍵を持ったままち止まる典子さんに、直さんは掠れた声を絞りした。典子さんは線を泳がせ、忌々しそうに舌打ちをした。

「直っていたから何なのよ! でこんな埃っぽいにいろっていうの!? 私の寂しさをあんたはしも考えないの!?」

「寂しいからって……美咲のにみ着いて、美咲を殴っていい理由になるわけないだろ!」

直さんの声が、静かな宅のに反響した。まれて初めて、母親に向かって張りげた本気の叫びだった。

典子さんの顔が、信じられないものを見たように歪む。だが、直さんはもう止まらなかった。

「母さんを切にすることと、美咲に全部させることは違う」

言言、自らの胸を抉るように吐きされたその言葉に、典子さんは息を呑んだ。

そして次の瞬、額に青筋をてて切り声をげた。

「親子の縁を切るわよ! あんたなんか、もう私の息子じゃない!!」

直さんは、震えるで実の玄関の鍵をけた。

「……それでもいいよ。でも今は、母さんの荷物を全部ここに運ぶ」

配していた赤のトラックが、タイミング悪く、あるいは完璧なタイミングで到着した。作業員が無質に段ボールを運び入れていく。

典子さんは玄関のがりかまちに座り込み、ただヒステリックに泣き叫んでいた。直さんはその背に度も触れず、ただ指示をし、段ボールのを実の居へと積みげさせた。

ヶ、妻のを法に侵していた母の私物が、わずかですべて運びされた。

作業が終わり、トラックがった、直さんは実の鍵を典子さんののに握らせた。

「活費のしは、毎振り込む。病院の付き添いも、休みのに俺がで来る。……でも、美咲のには度と入れない」

典子さんはのの鍵をに投げつけた。属のい音が、誰もいない暗い玄関に虚しく響く。

直さんは鍵を拾いげ、駄箱のに静かに置くと、度も振り返らずにを発させた。

夕暮れ、で戻ったが。玄関のドアをけた瞬、直さんはその広さに目眩を覚えたという。

廊を埋め尽くしていた母の段ボールはない。

居のソファにかかっていた派なカバーもされている。噎せ返るような線の匂いも消え、ただえ切ったの空気が漂っていた。

直さんはネクタイを緩め、納戸へ向かった。埃まみれの物置の奥から、斜めに突っ込まれていたオーク材のデスクをで引きずりした。

かった。腰に激痛がった。だが、歯をいしばり、リビングの元の所へと引きずっていった。

雑巾を濡らし、削れてしまった角を何度も、何度も拭った。美咲がいつも座っていた所。計簿をつけ、病院の類を理し、静かに息を潜めていた所。

「……美咲」

直さんの胸の奥に、暗い確信が芽えていた。

やり遂げた。母を追いした。妻の居所を取り戻した。自分はついに、母親のを振りほどき、夫としての責任を果たしたのだと。

このの直さんは、まだ信じて疑っていなかった。自分が正しいを取りさえすれば、失われかけた庭は、必ず元の形を取り戻せると。

その夜の、美咲のスマートフォンが鳴った。

画面を見た美咲が、静かに息を呑む。仮まいのさなリビングで、向かいって座っていた私に、娘は画面を向けた。

『母さんを実に戻した。荷物も全部片付けた。頼む、しだけでいいから会ってほしい。これからのことを話したい』

美咲はしばらく画面を見つめていた。

その横顔には、びも堵も浮かんでいなかった。ただ、どこまでもたく澄んだのような静寂があった。

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