みかん小説
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"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第10話

刻は夜を回っていた。

枕元のスマートフォンが、狂ったような振を始めた。

画面に浮かびがったのは、『実(母)』の文字。

私は呼吸をひとつし、徹なでスワイプした。

元に当てた瞬、母の切り声が鼓膜を突き破らんばかりに響き渡った。

「真由美!! あんた、体何をしたのよ!!」

母は呼吸を乱し、半狂乱になっていた。

「さっき健から聞いたわよ! 美さんに借のことを問い詰められて、婚するって子ども連れてていかれたって! あんたが余計なことを吹き込んだんでしょう!?」

「事実を伝えただけです」

「族を壊す気か! あんたがすれば、みんなくいってたのよ! それに、仕送りを止めるってどういうことなのよ! 来の健の返済はどうするのよ!?」

ついに、母のから本音がびした。

私の体を配する言葉など、最初から言も持ちわせていなかったのだ。

「自分の息子の借は、自分のから払えばいいでしょう。私のったことではありません」

「親に向かって何て酷なことを言うの! あんたなんか、産むんじゃなかった!」

母は話の向こうで団太を踏むように喚き散らし、最の線を越えた。

「いいわよ! あんたがそこまで恩らずなら、こっちから願いげよ! 、健と緒にあんたのをていってやるわ! 親子の縁を切るわよ! 度と私のに顔を見せるんじゃないわよ!!」

受話器の向こうで、ガチャリと凄まじい音をてて通話が切れた。

病に、完全な静寂が戻った。

親子の縁を切る。

その言葉は、母が過、私をい通りに操るために使い続けてきた最の脅迫だった。

だが、今の私のに響いたのは、恐怖でもしみでもなかった。

ただ、どこまでもたく澄み切った、解放だった。

「……ええ。望むところよ」

私は暗ので静かに呟き、スマートフォンの画面を伏せた。

翌朝、病院のベッドので目が覚めた、私の世界から余計なノイズは完全に消えっていた。

の鈍い痛みは相変わらず骨の芯を疼かせている。

それでも、昨夜までの息苦しさは嘘のように消えていた。

母からの着信履歴は、夜までにさらに件増えていた。

留守番話のランプが赤く点滅している。

私は再ボタンを押し、スピーカーから流れる声を無表で聞き流した。

『真由美! なんで話にないの! あんた本当に親を見捨てる気!?』『健が消費者融から督促状が届いて変なのよ! 今すぐおを振り込みなさい!』

ヒステリックに叫ぶ母の切り声。

その横で、健が「おい、くさせろよ!」と鳴り散らす声まで鮮に拾われていた。

件目、件目とむにつれて、声は脅迫から泣き落としへと変わっていった。

だが、私の指先は度も止まらなかった。

全件削除のボタンを迷わずタップする。

子音がく鳴り、母の残した声は跡形もなく消滅した。

午。

私はリハビリテーションで、理学療法士の支えを受けながら平棒のにっていた。

ギプスがれたばかりのに、体の分のを慎に乗せる。

ズキリと、骨の奥に気がるような痛みが突き抜ける。

「さん、無理しないでくださいね」

「丈夫です。先、歩けるようになりたいんです。でもく、自分ので」

歯をいしばり、汗を額に滲ませながら、私は歩を踏みした。

誰かに依してきるは、の領域を平気で踏み荒らす。

母も、健もそうだった。

あのたちと同じ沼に度と引きずり込まれないためには、自分の力でつしかない。

それから週。

主治医から正式に退院の許がりた。

病院の玄関で、介護タクシーの子用リフトに乗り込む。

見送ってくれたのは、友の理恵だけだった。

「真由美、顔が良くなったね」

理恵が私の肩にを置き、柔らかく微笑んだ。

「ありがとう、理恵。部の配、本当に助かったわ」

「いいのよ。あそこなら私の職からもいし、何かあればすぐ駆けつけるから」

タクシーが向かったのは、私が歳で購入したあの軒ではない。

病院からで分ほどの宅に佇む、階建てのバリアフリーマンションだった。

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