"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第12話
「あ……姉貴!?」
「お邪魔するわね」
私が靴を脱いで廊にがると、リビングの奥から母の甲い声がんできた。
「真由美なの!? あんた、退院したならなんで連絡しないのよ!」
リビングに入ると、そこには異様な景が広がっていた。
ローテーブルを囲むように、母の千代子、そして話で鳴り込んできた叔母が座っている。
部の隅には、気まずそうにを向く美と、居悪そうにを縮めているの子どもたちの姿があった。
「真由美ちゃん、あんたって子は本当に……!」
叔母がちがり、説教を始めようとをいた。
私はその言葉を遮るように、の松葉杖をにく打ち鳴らした。
コン、と乾いた質な音が部に響き渡る。
「叔母さん、座ってください。親戚の茶み話をしに来たんじゃありません」
私のに気圧されたのか、叔母は息を詰まらせて再び座布団に腰を落とした。
母は私の松葉杖を瞥し、勝ち誇ったような歪んだ笑みを浮かべた。
「ふん、歩くのもやっとのくせに、がりばかり言って。どうせじゃ活できないから、このに戻ってきたんでしょう?」
母はテーブルのの湯呑みを乱暴に置き、を乗りした。
「いいこと、真由美。あんたが仕送りを止めたせいで、このはめちゃくちゃよ! 健のところには毎のように怖い取りてが来てるのよ! 今すぐ座の送設定を戻しなさい! それから、このは健と美さんに譲りなさい! あんたは階の畳にいさせてあげるから!」
母のからびす、どこまでも都のいい狂気。
隣で健も、姉のみにつけ込もうと居丈に声を張りげた。
「そうだぞ姉貴! 俺たちが面倒見てやるって言ってんだから、ありがたくえよ! の名義を俺に変えて、宅ローンの残りは姉貴が今まで通り払えばいいんだ! それが族ってもんだろ!」
静寂。
テレビの消えたリビングに、の浅ましい息遣いだけが響いていた。
私は理恵から受け取った黒いバインダーを、ローテーブルの央にドン、と叩きつけた。
たい衝撃音に、母と健がビクリと肩を揺らす。
「……何よ、これ」
「数字よ。あなたたちが最も見たくない、現実の数字」
私はったまま、バインダーの留めをした。
枚目。
母の目のに突きつけたのは、過の全入記録をまとめた総括表だった。
「お母さん。あなたが『親孝』と呼んでいたものの正体です」
母は目を細め、並んだ数字を追おうとしたが、その桁数のさに息を呑んだ。
「過で、私があなたの座に直接振り込んだ活支援、医療費の補填、宅の修繕費。総額で千百万円です」
叔母が「い、千百万……?」と絶句して母の顔を見つめた。
母の顔から、急速に血の気が引いていく。
「な、何よ昔のおの話を持ちして! 育ててやった恩があるでしょうが!」
「ええ、ですから私はその恩を、千百万円というで分に買い戻しました。ですが、問題はその次です」
私は枚目の資料を、健の目のに叩きつけた。
赤ペンで無数のマーカーが引かれた、の取引履歴と、消費者融の借入照会。
「健。あなたが毎、消費者融へ返済していた万円から万円の所です」
健の目が泳ぎ、喉仏が激しくした。
「私が母の座に『医療予備費』として振り込んだ翌、あなたの自宅くのコンビニATMから、全く同額の現が引きされていました。過だけで回。総額百万円」
私は母を徹に見ろした。
「お母さん。私のを、息子の借返済に横流ししていたわね」
「そ、それは……健が困ってたから! 族なんだから融通しって何が悪いの!」
「悪いに決まっているでしょう」
私のい声が、母の切り声を真っ向から圧殺した。
「私の料は、あなたの息子のパチンコ代や無謀な借を埋めるための財布ではありません。これは実質な詐欺であり、横領です」
叔母が震える声で母に問い詰めた。
「千代子……あんた、真由美ちゃんからそんなもらってたの!? それを健の借に……? あんた私には、『真由美はケチでに、万しかくれない』って言ってたじゃないの!」