"ICUを出たら、私の家に弟一家が住み着いていた" 第14話
だが、そのどれもが、私にとってはい異国の雑音にしか聞こえなかった。
それから週。
通の期通り、引越し業者のトラックが自宅のにまった。
健は美の実から借の肩代わりを拒絶され、自力で借りた郊の古い畳のアパートへ、の回りの荷物だけを運びしていった。
美と子どもたちは度と戻ってこなかった。
そして、財具が運びされ、空っぽになったリビング。
埃の匂いがち込めるその部の央に、ポツンと子に乗った母の千代子が取り残されていた。
私は鍵の引き渡しと退確認のために、管理会社の担当者とともにそのにっていた。
健のトラックがりる音が、くへ消えていく。
母は震えるで子の輪を握りしめ、たいフローリングを見つめていた。
やがて、母はゆっくりと顔をげ、私の元にい寄るようにして、子からを乗りした。
その指先が、再び私のスラックスの裾を掴んだ。
「真由美……」
枯れ果てた、掠れた声だった。
「健たち、あんな狭い部じゃ……私を連れてけないって、置いていかれたのよ……」
涙が、母の皺だらけの頬を伝い落ちる。
「私、あんたの本当の母親なのよ? お願いよ、真由美……私を、きりでに迷わせる気なの……?」
私のスラックスの裾を掴む母の指先は、驚くほど痩せこけてたかった。
、このを握って病院の待に座り、薬局の窓へり、活費の面をしてきた。
「真由美は優しい子ね」「あんたがいてくれて助かるわ」
そう囁かれ、を撫でられるたびに、私は自分が族にとって必ななのだと錯覚していた。
だが、今、私の元にいつくばっているのは、慈に満ちた母親ではない。
寄先を失い、き延びるために娘の良を貪りおうとする、の浅ましい老だった。
「……して」
私は線を落とさず、ただ静かに告げた。
「真由美……頼むから! 親を見捨てる気なの!? 世がなんて言うか……!」
「世体を気にしているのは、お母さん、あなたよ」
私はに力を込め、掴まれた裾を引に引き抜いた。
母の指先が虚しく空を切り、フローリングのに擦れる音が響く。
その、玄関のほうから質な属音が響いた。
ガチャン、ガチャン。
私が事に配していた鍵交換業者の作業員が、特殊具を使って玄関ドアのシリンダーを取りしている音だ。
ピッキングにい、ディンプルキーへの全交換。
弟たちが勝に複製した鍵も、母が持っていた鍵も、すべて数分にはただの無価値な属片に変わる。
「鍵を……変えてるの……?」
母はにをついたまま、剥きしの恐怖を目に浮かべて私を見げた。
「ええ。このは今、完全に清掃業者と管理会社に引き渡します。
もうあなたたちのではありません」
「じゃあ私はどうなるのよ! 健は連れてけないって言ったのよ! ここにいさせてよ!」
「健があなたを置きりにしたのなら、それは健による保護責任者遺棄です。警察に相談なさい」
「実の息子を警察に突きせって言うの!? あんた、のがないの!?」
「私のを踏みにじり続けたのは、どこの誰ですか」
私の声に、りは切混じっていなかった。
ただ、の底のような絶対な拒絶だけがあった。
玄関のチャイムが鳴った。
作業員がドアをけると、たい気とともに、見慣れたの物がリビングに入ってきた。
旧友の理恵。
そして、理恵が所属する域包括支援センターの社会福祉士、さんだった。
さんは帳を脇に抱え、にへたり込む母の姿を見ても眉つかさず、穏やかなビジネススマイルを浮かべた。
「千代子さんですね。初めまして、域包括支援センターのと申します。真由美様からご相談を受け、今の活環境についてお伝いに伺いました」
「な……なんなのよ、あんたたち! 誰が呼んだのよ!」
母は喚き散らしながら、子のパイプにすがりついてちがろうとした。
私はバインダーから、さんと理恵のち会いのもとで作成した枚のを取りした。
「お母さん。
あなたがに迷うことはありません。法な続きは、すべてえてあります」