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"18年介護した義母が亡くなった翌日、私は横領犯にされた" 第6話

「丈夫。まだ、警察に渡すには弾がりないの」

話を切り、私はく息を吸い込んだ。

義母のは何だ? 自分の娘が借まみれで、預を使い込んでいることをっていたのか? っていて、なおかつ私を陥れる申述をいたのか? なぜ、実の娘を庇うために、尽くしてきた息子の妻を獄に叩き落とすような真似をしたのか。

答えは、まだ義母の残した物のに眠っている。

私は駅へ向かうを止め、タクシーを拾った。 き先は、の実――今は誰もんでいない、義母のだ。

戸が締め切られた平の本は、独特の澱んだ空気が満ちていた。 仏壇の蝋燭の匂いと、古い畳の青臭い湿気。

私はから預かっていた鍵で玄関をけ、靴を脱いで廊をんだ。 義母の寝兼斎。 桐の箪笥、代物の文机、然と並べられた茶の具。 表面は、伝統と格式をんじる「良の母」の部そのものだった。

私はゴム袋をはめ、文机の引きしをから順にけていった。 通帳の控え、定期便、古いの束。 どれも綺麗に分類されている。あの几帳面な義母らしい頓ぶりだ。

だが、私が探しているのは、そんな表向きの記録ではない。 は、ろ暗い企みを抱く、必ずそれを「正当化」するための何かを残す。 あるいは、者をコントロールするための爪痕を、元に隠し持つ。

机の最段のい引きしを引き抜いた。 奥の隙にを入れる。 指先に、板の継ぎ目とは違う、ざらりとした触が触れた。

引きしの底板の裏側。 茶い布ガムテープで、何かが貼り付けられている。

テープを慎に剥がす。 落ちてきたのは、いビニールに包まれた通の封筒だった。

封筒の表には、義母の跡で、こうかれていた。

『由加里へ』

封はされていない。 私は躊躇することなく、から便箋を引きした。 震えるでかれた、黒いサインペンの文字。付はの連休け、義母が倒れる直のものだ。

『由加里。 おの作った借の始末は、私がつけてやります。 百万、会社名義の座に送できるよう配しました。 これで、あの男たちとの関係を綺麗に清算しなさい。

ただし、このことはには絶対にられてはなりません。 あの気な子がれば、の恥となり、親族に顔向けができなくなります。

配はいりません。 通帳の管理は、すべて美さんに任せるように仕向けます。 あの女は学がないから、私がし優しくしてやれば、んで言いなりになるでしょう。 あの子に全ての責任を背負わせます。 には、美さんがに困って私の預を狙っていると、折を見て吹き込んでおきます。

あの子がこのに居座り続ける限り、はいつまでもあの女の言いなりです。

のを、あのようなに乗っ取られてはなりません。 あの子を追いし、の目を覚まさせるための最の仕事です。 私がんだら、弁護士のところへきなさい。 あとは、あなたが自分で、最のをやり遂げるのですよ』

文字が、歪んで見えた。 りで界が赤く染まり、それから気に、絶対零度の静寂へと変わっていった。

……。 。 度も逆らわず、義父の介護を見送り、義母の言にをげ、をてて尽くしてきた。 その結果が、「を乗っ取ろうとする」だった。

最初から、族などとっていなかったのだ。 最初から、都よく使い潰し、最は娘の祥事を押し付けて捨てるための、贄に過ぎなかったのだ。

『美さん、今まで苦労をかけたね』 病で私のの袖を掴んだ、あのの温もり。 あの涙。 あれは、私を油断させ、偽造類にサインをさせるための、完璧な演技だった。

「……ふざけないで」

声が漏れた。 自分でも驚くほど、く、たい声だった。

涙は滴もなかった。 ただ、臓の鼓が、鐘のようにく、規則正しく胸を打っていた。

私はスマートフォンのカメラを起し、その遺のような便箋を、が入らないよう正確に枚ずつ撮した。 文字の掠れ、インクの滲み、付の跡まで、解像度で克に記録する。

撮を終え、を元通りに畳んで封筒に戻そうとした、封筒の底にもう枚、い片が残っているのに気づいた。

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