"18年介護した義母が亡くなった翌日、私は横領犯にされた" 第8話
「それを今、私が調べているところよ」
「調べる調べるって、何を調べるんだ!」
は両肘を膝につき、を抱え込んだ。
「の法がもうすぐなんだぞ。親戚同が集まる席で、おが平然と座ってたらどうなる? 由加里が黙ってるわけがない。親族ので警察汰にでもなったら、俺は会社に居所がなくなるんだよ!」
結局、それだ。 母親の名誉でも、妹の借でも、妻の潔でもない。 この男が守りたいのは、会社での面脈と、親族のでの「波のたない平穏」だけだ。
「だから」
は、すがるような目で私を見た。 その卑屈なが、吐き気を催すほど浅ましい。
「しのでいいから、おの実か、ウィークリーマンションに荷物を移してくれ。それから……これは提案なんだが、母さんの座から消えた百万、おの独代の定期預から、にて替えられないか?」
喉の奥が、カッとくなった。 だが、私の表筋はぴくりともかなかった。
「私が、百万を払うの?」
「て替えだ! あくまで親戚へのポーズだよ! 『美さんが違いを認めて、遺産分割の座におを戻しました』って形にすれば、由加里も叔父さんたちも納得する。法も無事に終わる。そうすれば、俺たち夫婦もやり直せるだろ?」
やり直す。 どのが、その言葉を吐くのか。
妻に棒の汚名を着せ、全財産を差しさせ、親族ので贄に捧げることでしか保てない夫婦関係など、最初からと変わらない。
「わかったわ」
私はく答えた。
が、呆気にとられたように目を見いた。
「……え?」
「をるわ。今夜に荷物をまとめて、の朝にはここをていく」
「あ、ああ……そうか! わかってくれたか、美!」
の顔に、骨な堵のが広がった。 馬鹿な男だ。 妻が自分の理尽な求に屈し、観したと本気で信じ込んでいる。 自分が今、檻の扉をけて猛獣を解き放ったことにも気づかずに。
「百万の件は、法ので正式にお話ししましょう。親族の皆さんが揃っているで、類を交わした方が確実でしょうから」
「そうだな! うん、それがいい! おも静になってくれて助かったよ。由加里には俺からうまく言っておくから」
はちがり、まるで荷をろしたかのように取り軽く呂へ向かった。
私はその背を見送ることすら制し、ちがった。 猶予は今夜晩。 やるべきことはのようにあった。
夜。 のいびきが寝から響く、私は音をてずにを歩き回った。
まず、斎の庫。 暗証番号をわせ、私自の名義になっている独代の預通帳、個保険の証、パスポート、印鑑登録カードを回収する。 次に、このを購入した際の売買契約と、法務局の登記事項証。 の半分は私の実からの援助であり、私の持分が割登記されている。
この類をのに残しておくわけにはいかない。
類はスーツケースつ分だけ。 のいの品など、最初からこのにはつもなかった。
翌朝、午。 が目を覚ますに、私は配していたタクシーを呼び、荷物を積み込んだ。
テーブルのには、枚のメモだけを残した。
『予定通ります。の法で会いましょう』
タクシーが向かった先は、実ではない。 実の老親を巻き込めば、無駄な配をかける。 私は、駅くのマンスリーマンションをすでにネットでヶ分契約していた。オートロックと防犯カメラが完備された、無質な部だ。
荷物を運び込み、デスクのにノートパソコンをいた瞬、私の携帯がく振した。
自宅の玄関に設置してあるスマートインターホンの通。 体検アラート。
画面をく。 刻は午分。 私がをてから、わずかだ。
映しされていたのは、喪ではなく派な原のカーディガンを羽織った由加里の姿だった。 鍵を使って、迷いなく玄関のドアノブを回している。
スピーカーの音声をオンにする。 マイクが、内の音を鮮に拾いげた。
『お兄ちゃん! あの女、本当に追いしたんでしょうね!?』
ドカドカとリビングにがり込む音。 寝起きのの、掠れた声が応じる。