みかん小説
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"百万円を積まれても、他人に戻る" 第3話

子供の目は、誤魔化せない。 転んだとか、ぶつけたとか、嘘をつくことは簡単だった。 けれど、私は嘘をつきたくなかった。

あのでねられてきたような卑怯な誤魔化しを、この子たちに渡したくはない。

私は玄関のがり框に腰をろし、娘たちと同じ目線までしゃがんだ。

「の都で、し嫌なことがあってね。でも、病院へって赤ちゃんが無事なのは確認してきたから。配いらないよ」

結がおずおずとを伸ばし、私の頬に触れようとする。

「痛いの?」

「もう痛くないよ。結が配してくれたからね」

奥からてきた母が、私の顔を見るなり目を見いた。

「美咲……その顔、体誰にやられたの」

「お母さん、ごめん。今、泊めてもらえる?」

「当たりでしょう! 何があったの!」

「あとで全部話す。まずは、子供たちとお呂に入らせて」

母は私の表の奥にあるものを察したのか、それ以は追及しなかった。

温かい湯に浸かりながら、結の柔らかい髪を洗う。 湯気がち込める浴で、張っていた全の筋肉がしずつ緩んでいくのをじた。

この常だ。 私が命懸けで守らなければならないのは、この温もりだけだ。

夕を終え、娘たちを布団に寝かしつけた。 部の隅に座り、バッグからスマートフォンを取りす。

画面を点灯させると、着信履歴が画面を埋め尽くしていた。

夫からの着信が、回。 メッセージアプリには、い文面が連なっていた。

『どこにいるんだ』 『母さんもし言いすぎたと反省してる』 『度に戻ってきてくれ。話しおう』

そして、最の通。

『母さん、美咲が謝るなら、婚の話はなかったことにするって言ってる』

画面を見つめたまま、私はく息を吐いた。

殴られた妻に、謝れ? 回も話をかける暇があるなら、なぜあので母親のを掴んで止めなかったのか。 この男が守りたいのは、私でも子供でもない。 波のたない自分の保だけだ。

私は返信しなかった。 通をすべて切り、枕元に置いた。

隣の布団で、葵が寝返りを打った。 さなが、私のパジャマの裾をきゅっと握りしめてくる。

そのを、優しく包み込んだ。 の朝番で、かなければならない。 で喚き散らすは、もう終わった。

翌朝、私は娘たちを母に預け、役所の民相談窓へ向かった。 そこで紹介された法テラスを通じて、事事件に詳しい弁護士の予約を取り付ける。

実へ戻ったのは、昼過ぎだった。

初のが、庭の植を揺らしている。 居で母とお茶をんでいると、突如として玄関のチャイムが激しく連打された。

ピンポーン、ピンポーン、ピンポーン。

髪を入れず、ドアノブがガチャガチャと荒々しく回される。

「美咲さん! けなさい! 美咲さん!」

の空気が、瞬で凍りついた。

義母の声だ。

奥の部から、結が怯えたように顔を覗かせた。 葵はすっと表をくし、妹の肩を抱き寄せている。

「お母さん、子供たちを見てて」

私はちがった。 母が配そうに腕を掴んできたが、私は静かにそのをした。

「丈夫。のには歩も入れないから」

スマートフォンのボイスレコーダーの録音ボタンを押し、ポケットに滑り込ませる。

玄関へ向かい、鍵をけて、ドアをしだけ引いた。 ドアチェーンはかけたままにする。

隙から見えた義母は、血相を変えていた。 そのろには、所なさそうに線を泳がせている夫の姿もあった。

「美咲さん! なんて親孝な真似をするの! 話にもないで!」

「何の用ですか」

私のえ切った声に、義母が瞬たじろぐ。 しかし、すぐにいつもの圧な態度を取り戻した。

「何の用じゃないわよ! 葵と結を連れ戻しに来たのよ!」

チェーン越しに、義母の目がぎらぎらとっている。

「夫婦の喧嘩に子供を巻き込むんじゃないわ。あのは藤原の内孫なのよ。母親の実にいつまでも置いておくわけにいかないでしょう。さっさと荷物をまとめさせなさい!」

いたが塞がらなかった。

昨、あれほど『継ぎの産めない嫁』と罵倒し、婚届を投げつけたが。

どの面をげて、娘たちを連れ戻しに来たと言うのか。

「お義母さん」

私はチェーンの隙から、義母の目を真っ直ぐに見据えた。

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