"百万円を積まれても、他人に戻る" 第7話
それだけじゃないのよ。『あんな来損ないは追いして、うちの弘には取引先の派なお嬢さん(松田の娘)を妻にもらう話がもうんでる』って、商で触れ回ってるらしい」
喉の奥で、たい笑いがこみげた。
やっぱり。あの老婆ののでは、世界はまだ自分の都のいい嘘で回っているのだ。息子が妻を暴力で追いし、活費を止めて兵糧攻めにしている事実など、綺麗さっぱり都よくき換えている。
「松田さんの件、向こうの親御さんから激されて破談寸だって、まだ気づいてないのね」
「は? そうなの?」
「田先が相方の実態を調べたに判したの。先方のお嬢さんは、すでに既婚者である夫との縁談なんて完全に拒絶してる。義母がで先って写真を持ちし、周囲に『もう決まった』って嘘をついてるだけよ」
「うわ……救いようがない見栄っ張りね。鳥肌がつわ」
理が底嫌そうに吐き捨てた。
「全部、言わせておけばいいよ」
私は静かに言った。
「あのの虚栄が膨らめば膨らむほど、世体が破裂したの音がきくなるだけだから。私と子供たちを傷つけた代償は、番残酷な形で支払ってもらうわ」
「……美咲、あんた本当にくなったね」
「くならなきゃ、も守れないよ」
話を切り、私はきく呼吸をした。
現、妊娠週。お腹の膨らみは、単胎の妊婦の妊娠期に匹敵するほどにせりしてきていた。腹皮がピリピリと引っ張られ、ちがるたびに骨盤が鳴をげる。双子の胎はにに力さを増し、腹部のあちこちを同にポコポコと押しげてくる。
この子たちを連れて、実にいつまでも居座るわけにはいかない。母のは続きの古い造平。今はまだいいが、になれば隙が厳しく、何より乳児が増えればの踏みもなくなる。葵の学の通学も、実からではのでも分かかる。
私は、しい拠点を探し始めた。
条件は厳しかった。さな子供がになるため、階以の物件は音の騒音トラブルを招く。階の角部、あるいはエレベーター付きの物件。賃は、私のリモートワークの収入と、今請求する適正な養育費・児童当で賄える範囲内。
の体を引きずりながら、実くの産を回った。
「あー……母子庭予定で、双子ちゃんをご産予定ですか……」
産の担当者は、私のきく突きたお腹と類を見比べ、骨に渋い顔をした。
「賃の滞納リスクをオーナー様が気にされましてね。保証会社も、現無職(専業主婦からの別居)となると、審査がかなり通りにくいのが現状でして……」
世のたさが、容赦なく肌を刺す。父親の庇護をれた母子庭が、社会の入りでどれほど値踏みされるか。かつて夫の収入のに胡座をかいていた頃には、見えていなかった現実だった。
けれど、私は引かなかった。
「賃の半分を、払いで括供託することは能です。こちらが現の個座の残証と、先より正式に締結した医療事務の業務委託契約です。政からの児童当および児童扶養当の支件も確認済みです。私の実も徒歩分の距にあり、母が連帯保証として署名・押印できます」
バッグから、クリアファイルにまとめた類を淡々と差しす。な懇願などしない。数字と類で、自分が信用にるであることを証する。
担当者は類に目を落とし、私の揺るぎない態度を見て、し姿勢を正した。
「……わかりました。オーナー様に直接掛けってみます。条件にいそうな階の角部が、軒だけ当たりがあります」
案内されたのは、母のから徒歩分、葵の学からもい、築の層アパートだった。LDK。当たりがよく、は遮音フローリングにリフォームされたばかり。何より、が元教員で、子供のいる庭に理解があるという。
「ここにします」
私はそので、入居申込に署名した。
続きを終えてアパートをると、夕暮れの茜のが宅を染めていた。くの公園のベンチに腰をろす。