"百万円を積まれても、他人に戻る" 第10話
会社への連絡だけは避けてほしいと、ひどく狼狽しておりました。今末の着を確認次第、公正証によるの作成へ移します』
画面を閉じ、私は暗ので井を見げた。
で解決したわけじゃない。あの男はただ、会社での世体を守るために、渋々を払うを選んだだけだ。本質な反省など、何つしていない。
そして、季節はさらに巡った。
に入り、朝夕のえ込みが厳しさを増してきた頃。私の妊娠は、いよいよ週を迎えていた。
お腹のきさは、すでにのからでも隠しようがないほどになっていた。胃が圧迫されて度にくの事が摂れず、夜は横になるだけで肋骨が軋む。の胎児の推定体は、それぞれ百グラムを超えていた。
そんなある、夫から田弁護士を通じて、本の申し入れがあった。
『次の妊婦健診に、度だけでいいから同させてほしい。父親として、子供の成をこの目で確認したい』
田弁護士は私に尋ねてきた。
「拒否することは法に全く問題ありません。どうされますか?」
私は、机のに置かれたエコー写真の入った箱に線を落とした。
妊娠週。現の超音波検査の精度であれば、の胎児の性別は、誤魔化しようがないほど確にモニターへ映しされる。
夫はまだらない。私のお腹のにいるのが、義母が血になって求めている『継ぎの男の子』であり、しかもそれが同に息づいていることを。
あの男は、何を期待して健診に来るのだろう。父親としての責任を果たしているポーズを取り、私との復縁の糸を探るつもりなのだろうか。
「……許します」
私は静かに答えた。
「拒否しません。来させてください」
「よろしいのですか?」
「ええ。見せてあげます」
私の声には、ややかな確信が宿っていた。
「自分たちが何を捨てろうとしたのか。その現実を、あの男の網膜に、度と消えない傷として焼き付けてやります」
健診当。
産婦科の待は、平にもかかわらずくの妊婦と付き添いの族で混みっていた。自ドアがき、夫が入ってきた。
スーツ姿の夫は、周囲の幸せそうな族連れに気圧されたように、縮こまりながら私の元へ歩み寄ってきた。
「美咲……来てくれて、ありがとう」
「座って。もうすぐ呼ばれるから」
私は線もわせず、たく言い放った。夫は居悪そうに、私の隣のパイプ子に腰をろした。元で指を組み替え、落ち着きなく貧乏揺すりをしている。
「あの……体調は、どうなんだ? お腹、すごくきいな……」
「双子だから。当たりでしょう」
会話は、それだけで途切れた。
数分、診察のスピーカーから私の名が呼ばれた。
「藤原美咲さん、番診察へどうぞ」
私はい体をゆっくりと起こし、診察のドアをけた。夫が、おどおどと私のろをついてくる。
診察には、いつもの穏やかな男性医師が座っていた。夫の姿を瞥し、軽く会釈をする。
「ご主もご緒ですね。では、エコーを見ていきましょう。ベッドへどうぞ」
カーテンで仕切られた診察台に横たわり、ワンピースの裾を胸のまで捲りげる。助産師が際よくバスタオルをかけ、突きた丸いお腹に、温かいジェルをたっぷりと塗り広げた。
医師がプローブを握り、お腹のに滑らせる。
「はい、音から確認しますね」
ドクン、ドクン、ドクン、ドクン。
奏の力い拍が、診察のスピーカーから音量で響き渡った。夫が息を呑む音が、カーテンの向こうから聞こえる。
「とも、順調そのものですよ。週数相当のきさです。羊量も分。元気にをかしていますね」
医師がモニターのコントラストを調し、画像を拡した。黒ののに、くっきりと浮かびがるつのさな体。
夫がカーテンの隙からを乗りし、画面に吸い付くように見入っている。その瞳には、父親としての純粋な驚きと、どこか堵したようなが混ざりっていた。
医師はプローブの角度をわずかに変え、胎児の股のをクローズアップした。
「あ、今はとも、すごくいい位置にいてくれますね」
医師が穏やかに微笑みながら、画面の特定の所をポインタで指し示した。