"百万円を積まれても、他人に戻る" 第13話
この女ののでは、それが『け』であり『理な配慮』なのだ。
りで、界が真っ赤に染まりそうだった。 けれど、私は笑った。 氷のようにたい笑みが、自然と唇の端に浮かんだ。
「お断りします」
義母の笑顔が、ピシリと音をてて崩れた。
「……は?」
「その汚いお、引っ込めてください」
「き、汚い……!? 百万円よ!? あんた、自分がどれだけ貧相な実に子供を囲い込んでるか分かってんの!?」
「私の子供たちに、値段をつけないで」
私はチェーン越しに、義母の目を射抜くように見据えた。
「葵も、結も、お腹のも、私の命を削って産み育てる子供たちです。あなたのようなに、たりとも渡す気はありません」
「気なを利くんじゃないよ!」
義母はついに化けの皮を剥ぎ、狂ったように叫んだ。
「跡取りの男児をも腹に宿しておいて、藤原をないがしろにする気かい!? 誰の種だとってんだ! 子供たちを私物化して、老い先い私に復讐する気か!」
「ええ、その通りです」
私は歩も引かなかった。
「あなたが葵と結をとして扱わなかった報いです。、悔してきていけばいい」
「この、恩らずが――!」
義母が封筒を握りしめた拳を振りげた、そのだった。
「母さん! やめろ!!」
背から、裂帛の気のような鳴り声が響いた。
振り返ると、息を切らした夫がってくるところだった。
ネクタイを歪ませ、額に汗を滲ませている。 母が実に来ているとり、会社から血相を変えてんできたのだ。
「弘!」
義母は息子を見るなり、被害者の顔を作って縋り付こうとした。
「ちょうどいいところに来たわ! この女、私がお祝いに百万円を持ってきたっていうのに、払いして警察を呼ぶだの暴言を吐くのよ! 男の子を産むからって調子に乗って――」
「母さん、黙れよ!」
夫の叫びが、宅の夕暮れに霊した。
義母が、鳩が豆鉄砲をらったような顔で直する。
「な……弘……?」
「全部、聞こえてたんだよ!」
夫の肩が、激しく震えていた。 その瞳は真っ赤に充血し、涙とりで歪んでいた。
「葵と結を実に置いていけって……おは何を言ってるんだ!? あの子たちも、俺の子供だぞ! 俺の血を分けた娘たちだ!!」
「な、何言ってるのよ、あの子たちは女の子じゃない! 男の子の跡取りを優先するのが――」
「跡取りって呼ぶな!!」
夫の号が、義母の言葉を砕した。
所ののカーテンが、次々とく気配がする。 だが、今の夫には周囲の目など見えていなかった。 、度たりとも逆らったことのなかった絶対君主である母親に対し、夫は喉が裂けんばかりの声で吼えていた。
「俺は……俺はずっと、母さんの嫌を取るために、美咲と子供たちを犠牲にしてきた! 葵がどんな顔で俺を見ていたか、おはってるのか!? 『お父さんはわたしが男の子じゃなかったからしかったの?』って……歳の娘に、そんなことを言わせたんだぞ!!」
夫は両で顔を覆い、そのに膝をついた。
「母さんのせいだ……いや、母さんの顔ばかり窺って、何も言えなかった俺のせいだ! 俺が……俺が族を殺したんだ!!」
のに頽れ、号泣する息子。 その異様な姿をに、義母は顔面を蒼にし、ずさりした。
「ひ、弘……しっかりしなさい……! たかが女子供のことで、何をけない……!」
「帰れよ!!」
夫が顔をげ、母親を睨みつけた。 その線には、かつての従順さは欠片もなく、底れぬ憎悪だけが宿っていた。
「度と、美咲と子供たちのに現れるな! これ以恥を晒すなら、俺は親子の縁を切る!!」
「親子の縁を……? あんた、実の母親に……」
義母は震えるで胸元を押さえ、酸素を求める魚のようにをパクパクと閉させた。 自分が築きげてきた『男を支配する絶対な母親』という虚構のが、元から音をてて崩壊していく。
頼みの綱だった男に、衆の面で完全に拒絶されたのだ。
義母は私を見げた。 助けを求めるような、懇願の差し。
私は、無言のまま、酷に玄関の引き戸を閉めた。
ピシャリと、とアルミが噛みう乾いた音が響く。 内鍵を回し、チェーンをしっかりと掛けた。
から、義母のみっともない啜り泣きと、逃げるようにりるハイヒールの音が聞こえてきた。 続いて、のドアが閉まり、エンジン音がざかっていく。