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"古希の夜、二人の嫁は手を引いた" 第6話

数秒の沈黙の、業者の声がひどく擦ったものへと変わる。

『め、滅相もございません! 登記の確認が分で、変失礼いたしました! 本の予定は直ちに取り消し、社内でもそのように共いたします!』

「よろしくお願いいたします。度と敷内にづかないでください」

通話を切り、く息を吐きす。 元のスマートフォンを置くと同に、背の廊からギシ、とを軋ませる音がした。

振り返ると、よそきのブラウスにを包んだ義母がっていた。 丁寧におしろいを叩き、髪をえている。 来客をもてなす準備万端といったその顔に、私と目がった瞬、嫌悪と苛ちのが骨に浮かんだ。

「千里さん、朝から随分と物騒な話をしてるのね」

義母はを鳴らし、リビングのソファーへと腰をろした。

「もうすぐ業者さんが来るんだから、さっさと朝のお茶の準備でもしてちょうだい。階の客とダイニングを繋げて、良太たちが使いやすいように見てもらうんだから」

昨夜の古希の席での失態など、まるでなかったかのようなぶりだった。 自分が親族ので恥をかいたことすら、寝て起きたら「嫁のわがまま」として都よく脳内変換されている。

私はちがり、テーブルのにつの類を並べた。

「業者なら、もう来ません」

義母が眉を吊りげた。

「……は? 何言ってるの」

「先ほど、私が断りの話を入れました。所者の許なく敷に入れば警察を呼ぶと伝えてあります」

「あんた……っ!」

義母がソファーから弾かれたようにちがった。 血圧が気にがったのか、首筋が赤く染まっている。

「何様のつもりよ! 私が良太のために配したのよ!? あの子たちには子供がもいるの! 狭い賃貸でないをしてる息子に、母親がまいを用してやることの何が悪いのよ!」

「ここは、あなたのではありません」

私はテーブルのの登記簿を指先で叩いた。

「、何度言わせればわかるんですか。このも建物も、私の財産です。あなたには壁枚、柱本をかす権利もありません」

「権利、権利って……! 法律を振りかざせば何でもい通りになるとって!」

義母はテーブルに両をつき、私をい殺さんばかりにを乗りしてきた。 角にい泡が溜まっている。

「私は、こののために骨を埋めてきたのよ! あんたが会社でいい気になって働いている、音の幼稚園の送り迎えをしたのは誰!? をしたに病院へったのは誰!? 倒れたお父さんのの世話までして、毎を磨いてこのを守ってきたのは私よ!」

喉の奥から絞りされる、お決まりの呪詛。 謝という名の質。

の産を奪するための、いつもの免罪符。

「ええ、そのことには謝しています」

私は線を逸らさず、義母の瞳を正面から見据えた。

「だからこそ、、賃も取らずにまわせて差しげました。費も固定資産税も、すべて私が払ってきました」

「まわせてあげたですって……!?」

「に実を差し押さえられ、きを失ったあなた方を拾ったのは私です。恩を仇で返しているのは、どちらですか?」

義母の呼吸が止まった。 図を指された屈辱で、顔が気に変していく。

「あんた……よくもそんなが利けるわね。親に向かって……族に向かって!」

「族だからこそ、境界線を引かせていただきます。これ以、私のを自分のものだと錯覚して勝な真似をするなら、今すぐてってください」

リビングに、たい沈黙が落ちた。

義母の肩が刻みに震えている。 これまでなら、ここで夫の俊がに入り、「まあまあ、千里も言い過ぎだろ」と宥めていたはずだ。 義母はいつも、息子のその腰に守られて、自分の聖域を広げてきた。

だが、階の階段からりてきた夫は、壁際に張り付いたまま、青ざめた顔でち尽くしていた。 昨夜の親族のでの醜態。 そして、私から突きつけられた「自分の見栄のために沈黙した」という事実。 その圧に押し潰され、母親を庇う言葉を完全に失っていた。

助け舟がないことを悟った義母の顔に、絶望と、それを覆い隠すための凄まじいりが渦巻いた。

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