みかん小説
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"もう私を「お母さん」と呼ばないで" 第4話

余、度も投函できなかった、真由美さんへの。 黄ばんだ便箋を広げる。

そこには、几帳面な私の文字で、びっしりとかれていた。

『申し訳ありませんでした』 『どうか、私を許してください』 『あの子は、私の命に代えても派に育てげます』

読み返すたびに、胃の底から吐き気が競りがってくる。

こののどこにも、真由美さんの痛みへの像などなかった。 並んでいるのは、自分がいかに苦しんでいるか、いかに罪悪に苛まれているかという、勝な自己憐憫ばかり。 「許してください」という言葉の裏にあったのは、「私を楽にしてください」という卑しい懇願だけだった。

私はこの、拓也のためにまみれになって働きながら、のどこかで計算していたのだ。 この子を派な学教授に育てげれば。 世から「派な継母だ」と賞賛されれば。 私の犯した罪は、いつか相殺されるのではないか、と。

拓也が差しした、千万円の図面。 さな壇のある平。

あれは、私のの「贖罪ごっこ」に対する、最悪の通表だった。

息子の純粋な謝を盾にして、私は、自分の罪から目を背けて逃げ切るつもりだったのか。 真由美さんの命を踏み台にしてに入れた温もりを、当然の権利のように受け取るつもりだったのか。

ふざけるな、と自分自に毒づいた。

携帯話は、テーブルのでたく沈黙している。 連絡が来るはずもなかった。

私はちがり、箪笥の引きしを乱暴に閉めた。

母という仮面は、もう剥がれ落ちた。 ここから先は、の加害者として、拓也がす審判を待つだけだ。

、話は度も鳴らなかった。

スマートフォンの液晶画面を、何度指でなぞったかわからない。

『ご飯はちゃんとべていますか』『無理をして倒れたりしていませんか』

画面に打ち込んでは、消す。その繰り返しだった。

母親ぶった言葉を並べるたび、指先が汚物でも触ったかのように拒絶反応を起こす。いまの私から発せられるすべての配は、息子を元のぬるま湯に引き戻すための、卑劣な罠でしかないのだ。

目の夕暮れだった。

カチャリ、と玄関の鍵が回る音がした。

臓がねがり、肋骨の内側を激しく打ちつけた。ちがりかけた膝が笑い、座布団のに倒れ込む。

廊を軋ませてやってきた音。引き戸が静かにき、拓也がっていた。

コートの肩には、たいの雫がくっている。着替えもろくにせずびしてきたのだろう。目のには青黒い隈が沈み、頬は削げ、数のうちに何歳も老け込んだように見えた。

拓也は靴を脱いだまま、敷居を跨ごうとはしなかった。と畳の境界線にち尽くし、え切った線を私に向ける。

「……いくつか、聞きたいことがある」

までの柔らかな声の残響は、どこにもなかった。論文の誤謬を暴くときのような、を削ぎ落としたい声。

「座って。お茶を……」

「いらない」

く遮られた。喉の奥に、砂を詰められたような渇きを覚える。

「なぜ、今だったんだ」

拓也の目が、私の眉を射抜く。

「、いくらでも言える会はあったはずだ。父さんがんだときも、俺が学に入ったときも、就職したときも。……なぜ、このを買うと言ったそのに言った?」

私は畳のにをついた。指先から、の湿った気がいがってくる。

「……怖かったのよ」

声を絞りす。

「あなたがまださかった頃は、話せばあなたの世界が壊れてしまうとった。正彦さんがくなったときは、あなたが浪して、学受験の直だった。……そのも、学院を修するまで、教授になるまでと、私は勝に都のいい言い訳を作り続けていただけ」

「都のいい言い訳?」

「そうよ。……本当は、あなたが私のから完全にれて、度と戻ってこなくなるのが、ただ恐ろしかったの」

拓也の元が、わずかに歪んだ。嘲笑のような、だが泣きしそうな歪みだった。

「じゃあ、ずっと黙っていればよかったじゃないか。墓まで持っていけば、俺は何もらずに、おにを買って、ぬまで『いい息子』でいられたんだ!」

声を荒げた拓也の胸が、激しくした。

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