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完結第16話
作業着の夫を笑った同級生と、80万円の偽鑑定書
卒業50周年の同窓会で、住恵は旧友たちから「70歳まで町工場で働くなんて、貧乏な旦那さんでかわいそう」と夫・高志の仕事を笑われる。だが、その席で幹事の美恵子が「数年後には何倍にもなる」と1個80万円の漆器を勧め始めた。保証元として示されたのは、文化財を扱う「北山文化財修理工房」の鑑定書。住恵は印影の不自然さに気づき、美恵子が「責任者に直接確認した」と断言する会話を密かに録音する。友人が送金寸前となった時、住恵は契約を止め、夫へ書類の写真を送った。 やがて青い作業着姿の高志が会場に到着。胸には、まさにその工房名が刺繍されていた。実は彼こそ北山文化財修理工房の修理責任者だったのだ。高志が鑑定書を見た瞬間、「この書類を私たちの工房が発行した事実はありません」と告げる。 先ほどまで夫婦を嘲笑していた美恵子の顔から血の気が引き、80万円の漆器に隠された本当の狙いが暴かれ始める――。日常ホラー|孤獨|修羅場2.4万字5 494 -
完結第16話
もう来るな
「夜6時を過ぎたら案内するな」――店長の忠告を破り、江口は夜8時の内見を引き受けた。塗り直しても浮かぶ血文字、消してもつく照明、夢に現れる赤い服の男。そして、初めて来たはずなのに、家の中を妙に知っている女性客。「もう来るな」と追い払われながら、江口は、この家がいつまでも売れない本当の理由に近づいていく。日常ホラー1.3万字5 39 -
完結第16話
少女を救った川の底に、私の元妻がいる
川で溺れていた少女を救った高瀬直人。だが、救助隊に川底を捜されるわけにはいかなかった。そこには、行方不明になった元妻がいる。やがて彼を訪ねてきた女性警察官は、10年前、直人が同じ川で救った少女だった。家に残された車椅子と呼吸器。そして、元妻が「今は見ないで」と託した記録。直人は何を隠し、誰との約束を守ろうとしているのか。日常ホラー2.1万字5 247 -
完結第12話
昨日の私を着る女
事務職の理沙は、中途入社の同僚・真由が常に「前日の自分の服装」を寸分違わず再現して出勤してくることに気づく。偶然を装う彼女の執着を試すべく、学生時代の古いデニムを着た翌朝、真由は酷似した色落ちの上着で現れた。そして彼女の鞄には、理沙が社内で誰にも見せていないはずの鍵のキーホルダーが揺れていた。自分の輪郭が他人に侵食されていく底知れぬ戦慄と、オフィスで静かに狂い始める日常の記録。日常ホラー1.7万字5 135 -
完結第12話
あの道は、学校へ続いていなかった
父の施設入所に伴い実家の整理に帰郷した三十九歳の貴志は、六年間通った通学路の解体現場で、そこが昔から学校へ抜けていない私有地だと告げられる。困惑する貴志に対し、父は青ざめた顔で毎朝七時四十分という通過時刻と二階の窓にいた女の記憶を問い詰める。三十年前の冷え切った朝、閉ざされた窓ガラスの向こうから少年に掲げられていた手書きの白い紙と、毎朝何者かによって開け放たれていた錆びた潜り戸の沈黙。日常ホラー1.8万字5 104 -
完結第10話
母の友達
亡父の遺品整理のため実家に戻った悠介を迎えたのは、母の「友達」を名乗る見知らぬ女だった。女は手慣れた様子で台所に立ち、三十年間誰にも明かしたことのない「押し入れの子猫」の秘密を平然と口にする。玄関に残る履き古されたサンダル、母の頑なな沈黙、そして案内もなしに柱の死角にある照明スイッチを消す女の指先。見知らぬ他人の生活の気配が、平穏だったはずの家庭の記憶を音もなく侵食していく、静かな崩壊の記録。日常ホラー1.5万字5 67 -
完結第21話
鍵をかけた部屋で、誰かがシャワーを浴びている
出張から戻った一人暮らしの部屋で、高梨紗織は洗面所の違和感に気づく。拭き取られた鏡の曇り、見知らぬ栗色の短い髪。そして深夜二時、鍵をかけたはずの浴室から響くシャワーの音。折れ戸の向こうから届いたのは、「今日はどうしてこんなに早く起きちゃったの」という穏やかな女の声だった。踏みにじられた平穏と、暗闇に残る見知らぬ体温。日常ホラー3.2万字5 424 -
完結第10話
夫が失明してから、私はもう明かりを消せない
失明して二年になる夫は、毎晩「今夜はどっち側に寝てる?」と尋ねてくる。暗闇で方角が狂うのだと思っていた。だが午前三時、音を立てずに絨毯を歩く私を、見えないはずの夫の首が正確に追尾した。翌晩、薬で眠ったふりをした私の耳に届いたのは、わずかに開いた寝室の引き戸から漏れる青い光と、男の囁き声。下駄箱に残された乾いた泥と、見知らぬ筆跡のメモ。日常が侵食されていく冷徹な足音。日常ホラー1.4万字5 30183 -
完結第20話
午前二時、ホテルから部屋を替われと言われた
出張先のホテルで午前2時、フロントから「今すぐ部屋を替わって」と内線が入る。理由を尋ねると、見知らぬ男が“夫”を名乗り合鍵を求めてきたという。独身の私が戦慄する中、元の部屋に残された洗面台の眼鏡は、なぜか綺麗にケースへとしまわれていた――。施錠された空間をすり抜け、日常の善意を隠れ蓑にして静かに迫る気配。二度と、一人でホテルに泊まれなくなる。日常の隙間に潜む悪意を描き出す、戦慄の心理サスペンス。日常ホラー3.1万字5 3941 -
完結第17話
深夜1時、母は開けるなと言った
父が急逝して七日目の夜。実家で母と二人きりの午前一時、玄関のチャイムが鳴り響いた。 恐怖に震えながら「絶対に開けるな」と私の手首を掴み、玄関の明かりを消した母。 しかし、ドアの向こうの女は静かに告げた。 「先週は家に入れてくれたのに、どうして今夜は開けてくれないの?」 不審者を拒むため、防犯性の高い二重鍵へと交換したはずの家。 だが数日後、ピッキングの痕跡もないキッチンのシンクに置かれていたのは、なぜか「三人分の使用済みティーカップ」だった。 閉ざされたドアの鍵を開けていたのは、一体誰なのか。 守るべきはずだった母がひた隠す、十年前の冷酷な秘密とは——。日常ホラー2.6万字5 627
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