-
完結第17話
四枚の余った名札
物流会社の課長として働きづめの私は、中二の娘・結衣の保護者会に初めて出席した。だが担任から見せられた集合写真には、私の名前を胸につけた見知らぬ女性と並んで笑う娘の姿があった。激昂する私に、娘は冷たく「私が頼んだの。お母さんは絶対に来ないから」と言い放つ。問い詰める中で見つかったのは、これから先の学校行事の分まで書き溜められた四枚の私の名札だった。買い与えた物や学費で責任を果たしてきたつもりの私が、娘から完全に切り捨てられていた現実。そして娘は、進路を決める大切な三者面谈のプリントまで隠していて――。裡切られた|親子関係|修羅場2.1万字5 640 -
完結第18話
白紙の投函
娘の結婚式を三週間後に控え、父親である私の元に届いた「この男と結婚させてはならない」という差出人不明の白い紙。悪質な悪戯だと無視する私をあざ笑うかのように、手紙は十年前の進路断念や、私の次の行動を正確に言い当てていく。やがて届いた最後の一通には「あの子が怖かったのは暗闇ではなく、あなたがドアの外に立っていることだ」と記されていた。妻に紙を見せたとき、返ってきたのは動揺ではなく「全部が嘘じゃない」という冷たい告白だった。親不孝|真実|真相|親子関係2.4万字5 1990 -
完結第18話
三十年間「奥さん」と呼ばれた同僚
夫の定年歓送会。「三十年間支えてくれた奥さんへ」と呼ばれ立ち上がろうとした私の前を通り過ぎ、壇上で夫の隣に立ったのは女性の同僚だった。社員全員が彼女を妻だと信じ切る異常事態に、私は密かに彼女を呼び出す。だが彼女は不倫を否定し、「部長の弱音や泥臭い本音を三十年間すべて聞いてきたのは私だ」と告げた。肉体関係ではなく、人生の苦悩だけを別の女に預けていた夫。三十一年間「守られていた」はずの私は、新調した服を脱ぎ捨て、夫の過去の嘘を一枚ずつ暴き始める。裡切られた|夫婦|修羅場2.5万字5 3103 -
完結第19話
書けないはずの祖母のハガキ
東京の出版社で働く私は、長野の施設にいる祖母から毎週届く「仕事優先で来なくていい」というハガキに甘え、訪問を先延ばしにしていた。だがある日、驚かせようと訪ねた施設で看護師から「文子さんは三年前の脳梗塞で右手が麻痺し、ペンなど握れません」と告げられる。面会した祖母は私の手を握り「ようやく来たね」と涙をこぼした。毎週届く手紙は、介護を一手に背負う伯父が勝手に書いていたのだ。問い詰める私に、伯父は「だいたい合っている」と冷たく言い放ち、祖母を内側から施錠される重介護フロアへ移す同意書を取り出した。祖父母と孫|真実|介護2.4万字5 322 -
完結第16話
七年前に死んだ母の退院
七年前に他界した母の退院を知らせる電話が病院から届いた。駆けつけた病室にいたのは全く見知らぬ七十七歳の老人。だが彼女は私を見るなり「まだ椎茸嫌い?」と幼い頃の癖を言い当て、身元引受人欄には母の几帳面な直筆文字が残されていた。行政の登録ミスだと判明するも、老人は「和枝さんが迎えに来る」と退院を拒絶する。さらに兄から、母が生前「生け花教室」と嘘をついて毎週火曜日にこの老人のアパートへ通っていたと知らされ――。孤獨|親子関係|認知症2.5万字5 1471 -
完結第16話
あなただけ辞めていいわけないでしょ
勤続28年の会社を無断で辞めた夜、妻に罵倒される覚悟だった。だが妻は怒りもせず、机の上に別の『退職願』を滑らせてきた。「私も来月末で辞めるわ。あなたが辞めてよくて、なぜ私はだめなの?」住宅ローンは残り7年、通帳の残高はわずか240万。お互いに「家族のために犠牲になってきた」と過去をぶつけ合う中、大学1年の息子が教務課の受付印が押された『休学願』を机に叩きつける。雇用が切れるまであと6週間。逃げ場を失った家族の、痛切な現実が動き出す。夫婦|親子関係|金銭問題2.2万字5 10956 -
完結第17話
十一時八分の「家に着きました」
番号を変えた翌日から、見知らぬ番号から毎晩十一時に届く「家に着きました」というSMS。関わりたくない一心で三年間一度も返信しなかったが、ある火曜の夜に途絶え、翌朝病院から「妹さんの緊急連絡先になっている」と呼び出された。病室の女は間違いと知りながら三年送り続けたと認め、私が突き放すと、今度は本当の姉が怒鳴り込んでくる。さらに退院した女は、静かに告げた。「もう送りません。あなたを知ってしまったからです」兄弟姉妹|孤獨|介護2.6万字5 1031 -
完結第17話
十九年間、夫に翻訳されていた
結婚十九年目、離婚届を差し出した私に、夫は怒りもせず一冊の古い青いノートを手渡した。そこに並んでいたのは、私の名前と、私が一度も書いたことのない十九年分の「私の本音」だった。夫は私の諦めや沈黙をすべて都合よく翻訳し、家庭の公式記録として積み上げてきたのだ。書斎には同じ手帖が整然と七冊並び、高校生の娘すら「お母さんが言いそうなこと」と父親を疑わない。離婚調停まであと十日。完全に孤立した家の中で、私は自分自身の記憶と戦い始める。夫婦|裡の顔|修羅場2.7万字5 10838 -
完結第16話
十年前消えた妹の耳たぶ
十年前、二十三歳で忽然と姿を消した妹。父は帰りを待ちわびて病死し、母は今も毎年、四人分の誕生日ケーキを予約し続けている。ある日、地方ニュースに映った妹の姿を追い甲府へ向かった私は、彼女が見知らぬ男と結婚し、中学生の娘の母親になっている姿を目撃する。事故でも事件でもなく、ただ「息苦しかった」と家族を切り捨てた妹。母の七十七歳の誕生日が迫る中、妹は「生きているとだけ手紙で伝えたい」と懇願してきた。その身勝手な妥協を前に、私は受話器を握りしめる。兄弟姉妹|親不孝|行方不明2.1万字5 3412 -
完結第12話
120億円の契約を取った帰りにクビになった
120億円の大型契約をまとめ、帰りの新幹線に乗ったその瞬間、私・早瀬凛のもとへ届いたのは突然の懲戒解雇通知だった。旅費の水増しと不適切な接待――だが、その費用はすべて事前承認済み。契約成立を待って私を切り捨て、黒川専務の甥に手柄を横取りさせる罠だった。 しかし彼らは知らない。この契約が、私個人の技術承認と、4年かけて育てた5人の開発チームなしでは動かないことを。私は最終承認を止め、会社を去る。すると120億円案件は凍結し、縁故で据えられた後任は取引先の前で何一つ答えられず、社内では隠されていた不正まで次々と露見していく。会社から「戻ってほしい」とすがられる頃、私はすでに仲間たちと、新しい未来へ踏み出す決意を固めていた――。職場逆転1.8万字5 5848 -
完結第18話
今回は、探さない
突然のリストラで職を失った夫は、出版業界で顔の広い私に「仕事を紹介してくれ」と当然のように求めてきた。十八年間、夫の躓きを先回りして解決してきた私は、初めてその手を引っ込める。三ヶ月で底をつく貯金、娘の留学辞退、再就職の全滅。元課長のプライドを砕かれ、二十歳の青年に怒鳴られながら泥まみれで働く夫を前に、私の手元には元同僚から持ちかけられた「年収七百五十万の優良求人」があった。手を差し伸べれば元通りの生活に戻れる。だが、それを差し出せない理由が私の中にもあった。夫婦|親子関係|金銭問題2.3万字5 934 -
完結第24話
七年の指輪を外す夜
上場一周年を祝う丸の内の大宴会場で、株式会社アスターリンクの社長・相沢琢磨は、才色兼備の女性最高幹部・水上水希との婚約を電撃発表した。会場の末席でその言葉を聞いていたのは、創業期の極貧時代から七年間彼を無償で支え続けた同居人・神谷咲だった。「今の二人は、もはや同じ未来を歩く相手ではない」――報道陣の前で過去を冷酷に切り捨てられた咲は、かつて贈られた細いプラチナリングを静かに外す。 彼を立てるために素朴な女を演じ、口を閉ざしてきた咲。だが彼女の正体は、日本屈指の名門企業・神谷ホールディングス創業一族の長女だった。咲が去った直後、三十億円規模の大型資金調達が突如暗礁に乗り上げる。焦る琢磨が目にしたのは、七年前の事業計画書に残された咲の鋭い鉛筆の筆跡と、大物投資家が口にした信じがたい事実だった。自分を社長へと押し上げた真の存在に気づいた男の前に、幼馴染の九条礼司を伴い、自らの足で立ち上がった咲が現れる――。因果応報|人生逆転3.7万字5 1376 -
完結第16話
新婦母の席札
娘の結婚式を一ヶ月後に控え、義母から「新婦母の席は私が座る。綾子さんは末席でお酌でもしていなさい」と告げられた。二十五年間、波風を立てないよう耐え続けてきた私が反射的に笑って頷こうとした瞬間、いつも傍観者だった夫が「母さんは式に来るな」と箸を叩きつける。親戚中から非難を浴び、耐えかねて謝罪へ向かおうとする私を、玄関で娘が引き留めた。「お母さんは、誰のために謝るの?」親族の圧力に揺らぎ始める夫と、孫娘を手懐けようとする義母。結婚式まであと十数日、家族の偽りの平穏が音を立てて崩れ始める。嫁姑|夫婦|親子関係|修羅場2.9万字5 1364 -
完結第16話
作文の余白に書かれた秘密
中学二年の秋、国語担任の森下先生が突然休職した。だが一週間後、オンライン提出した作文に先生の筆跡で赤ペンの添削が届く。『昨日、お弁当箱を返せたでしょう』文章に書いていない家庭の秘密まで知る言葉に教室は騒然となるが、校方は先生のアカウントが休職初日から凍結されていると断言した。アクセス元は校内の複数端末。代課の教師が「悪質な悪戯」と断じ、三十日後の保護者会での担任解任を告げる中、先生の言葉を騙る添削は、同級生たちが必死に隠していた家庭の傷口へ容赦なく踏み込み始めていた。ミステリー|孤獨|親子関係2.1万字5 229 -
完結第16話
「実の親じゃない」と夫に言われた日
再婚して六年。高校進学を控えた三者面談の直前、夫から「実の母親じゃないお前は来るな」と告げられた。私は争わず、学校からの連絡書類をすべて夫の机に回した。三ヶ月後、娘が親に内緒で出願したのは、遠く離れた全寮制高校だった。激怒する夫に「この家に一秒もいたくない」と冷たく言い放った娘。だが彼女のスマホには、私が六年間作り続けた手料理のレシピと、調味料の配合がびっしりと書き留められていた。夫婦|親子関係|修羅場2.7万字5 469 -
完結第20話
私の弁当に、店長の娘の名前
スーパーの惣菜部で十二年働くパートの私は、現場の経験を注ぎ込んで一人暮らし向けの出汁煮弁当を開発した。テスト販売で完売が続き全国展開が決まるが、提出された企画書の責任者欄には店長の娘の名前が印刷されていた。「君は45歳だ、あの子には将来がある」と店長に口止めされ、同僚の手前沈黙を選んだ私だったが、全国発売を決定づける最終確認書の署名を求められた瞬間、私は手渡されたペンを机に置いた。職場逆転|因果応報|人生逆転|裡切られた|怒り3.0万字5 1768 -
完結第15話
失踪した兄へ父が送り続けた金
父が亡くなり実家の遺品を整理していた私は、机の奥から古い振込用紙の束を見つけた。十五年前に家族を捨てて失踪した兄の誕生日の翌日に、毎年三十万円が送られていた。摘要欄には「生活」の二文字。ずっと兄を捜していたはずの父は、北の工場の口座へ密かに金を送り続けていたのだ。私がその紙を弟に見せた瞬間、弟の顔から一気に血の気が引いた。弟は私の手から用紙を乱暴に奪い取ると、震える手でシュレッダーへ突っ込もうとした。兄弟姉妹|相続|行方不明|親子関係|金銭問題2.3万字5 6734 -
完結第20話
追い出した妻の味を食べる夫
娘の葬儀直後、「もう維持する理由はない」と夫に鍵を変えられ、所持金六百五十円で放り出された私。拾われた小さな唐揚げ屋で必死に働き五年が過ぎた頃、店に一日四十食の社内弁当の注文が入った。発注元は元夫が経営する外食企業の本社。断ることもできたが、私は社長室宛ての弁当を引き受けた。一週間後、回収された空の容器の底には、「今日の生姜焼きの味、昔食べたことがある」と書かれた元夫の付箋が残されていた。因果応報|裡切られた|夫婦|第二の人生3.1万字5 4794 -
完結第22話
父の葬儀で離婚を迫った夫
父の葬儀の最中、義母から離婚届を顔面に叩きつけられ、夫は臨月の部下を連れて現れた。子供ができないことを罵られ、雨のアスファルトへ放り出された私は、父の遺品が残る古いアパートで完全に縁を切る覚悟を決めた。だが七日後、あの夫が一人でドアを叩いた。目の下に隈を浮かべた夫は、下駄箱の上に分厚い現金の封筒を置き、埃っぽい土間に膝をついて「あと三ヶ月だけ妻でいてくれ」と頭を下げた。嫁姑|夫婦|修羅場|不倫3.2万字5 2745 -
完結第20話
廃墟旅館の双子と初恋の再会
離婚を機に6歳の娘・千尋を連れ、倒産した実家の温泉旅館へ逃げ帰ってきた32歳の竹谷虎次郎。ある夕暮れ、千尋が崩壊寸前の廃墟旅館へ駆け込んでしまう。後を追った虎次郎が埃まみれの古畳の上で目にしたのは、寄り添って震える1歳半の双子の赤ん坊と、ボロボロの服をまとい幽霊のように現れた衰弱女性――12歳で姿を消した初恋の幼馴染・水野絵里だった。元夫と義母から「夜泣きを止められない母親失格の役立たず」と罵倒され、養育費も拒絶されて追いつめられた絵里。虎次郎は幼馴染の大工・守を巻き込み、無謀にも廃墟旅館の再生を決意する。しかし再起を賭けたある雪の夜、思わぬ一枚の写真が世界を揺るがし――。兄弟姉妹|親子関係3.0万字5 780