"「魚臭いから焼肉屋へ」30人を連れ去った義妹が広めた嘘" 第2話
保健所から指導が入って、営業止になったから今の団体客を断った……そうじゃないのか?」
血の気が、瞬での先まで引いていった。背筋に、氷を流し込まれたような寒気がる。
「滅相もありません! うちで毒なんて、父の代から、度だってしたことはありません! 体、誰がそんなことを……」
私の切迫した声を聞いて、森田は受話器の向こうでく息を吐いた。
「やっぱりそうか。……奈緒さん、今すぐ落ち着いて聞いてくれ」
森田の呼吸が荒くなる。
「今、うちの階の座敷に、ばかりの同窓会の連が入ってる。幹事をやってる女……藤本理恵と名乗る女が、さっき広の真んで全員に向かってこう言い放ったんだ」
私の指先が、受話器を砕かんばかりにく張った。
「『魚でさっきノロウイルスによる集団毒がたの。厨が封鎖されて営業止になったから、私が泣きついて牛吉さんに会を変えてもらったのよ』ってな」
のが、真っになった。
界がぐらりと揺れ、っていられずに帳の机にをついた。
魚臭いから焼肉に変えた。理恵が私に放ったあの言葉は、内に対するただの侮辱ではなかったのだ。
彼女は、もの同窓ので、私のに「毒による営業止」という、にとって最も致命で、度といがれなくなるような濡れを着せていた。
「……奈緒さん、息をしてるか」
受話器から漏れる森田の声が、ひどくくに聞こえた。
の奥で、キーンというい属音が鳴り止まない。呼吸が浅くなり、胸のあたりが鉛のようにい。
毒。保健所による営業止。
その言葉の持つ破壊力を、を営むなら誰としてらないはずがない。度でもその噂がてば、保健所の検査でだと証されようが関係ない。客は途絶え、信用はに堕ち、数ヶも持たずに廃業へと追い込まれる。父が、爪にをともすようにして守り抜いてきた「魚」の簾が、義妹のついたその言で、今まさに切り刻まれようとしていた。
「森田さん、それは……本当なんですか」
掠れた声を絞りすのがやっとだった。
「嘘を言ってどうする」
森田は苦々しく吐き捨てた。
「うちの員がファーストオーダーを取りにった、客たちが々に『魚、毒だってよ』『危ねえところだったな』『急に変更してくれて助かったよ幹事さん』って騒いでたんだ。バイトから報告を聞いて、俺も最初は驚いた。だが、魚の親父さんをってる俺からすりゃ、あのが管理でヘマをやらかすなんて到底信じられなかった」
森田の言葉に、喉の奥がくなった。
森田の「牛吉」がこの商に簾を掲げたのは、のことだ。
当、脱サラしての世界にび込んだ森田は、仕入れルートの確保に苦しみ、チェーンの価格競争に巻き込まれて々から資繰りに窮していた。そんな森田を見かねて、精肉業者や元の信を紹介し、商振興組に利きをして回ったのが、私の父だった。
『同じで飯をわせる仲だ。魚と肉、喧嘩しないで両方で客を呼べばいい』
そう言って笑っていた父の顔が、脳裏をよぎる。
「森田さん……どうして、私に教えてくれたんですか」
競が毒の噂で勝に潰れてくれれば、牛吉にとってはプラスにこそなれ、マイナスにはならないはずだった。
「親父さんに昔、拾ってもらった恩があるからだ」
森田は迷いのない調で言った。
「それに、同じとして、見過ごせなかった。同業者を陥れるような嘘で客をかき集めて、美い肉なんかせるかよ。……だが奈緒さん、話はこれだけじゃねえぞ」
受話器の向こうで、バサリとをめくるような音がした。
「うちの予約台帳を確認したんだがな。この藤本理恵って女、うちの座敷を予約してきたの、今の夕方じゃねえ」
臓が、たく凍りついた。
「……え?」
「の、曜の昼過ぎだ。分の席とコースを、最初から曜の点で押さえてやがった」
を鈍器で殴られたような衝撃だった。
曜。。
理恵は話で言っていた。「くらいに決めた」