"月40万円を10年送った妻を捨てた夫の誤算" 第2話
久美子さんも今までよく頑張ってくれたけど、そろそろ潮じゃないかしら、と幸子はたく言い放つ。
その言葉を聞いて、親戚のからも同する声が聞こえ始めた。 「まあ、彦くんが決めたことならね」 「優秀な男には、それに釣りう女性が必だよ」
誰も私を助けようとはしない。全員が彦の方だった。 彦の成功は、彼がで成し遂げたものだと、誰もが信じて疑わないのだ。
「さあ、くここにサインしろよ」 彦は私にボールペンを差しした。 「ごちゃごちゃ言わずに綺麗に別れようぜ。俺はこれからのをしく楽しみたいんだ」
私はボールペンを受け取った。指先は全く震えていなかった。 静かに婚届に自分の名をき、持参していた印鑑をしっかりと押す。
「はい。これでいいですか」 私が婚届を返すと、彦はし驚いたような顔をした。
「なんだ、もっと泣きつくかとったのに。まあいい。これで俺は本当に自由だ」 彦は満そうに婚届をポケットにしまった。 私はちがり、自分のバッグをに取る。
そして、バッグのからつのい封筒を取りした。 しみのある、しっかりとした封筒だ。 私はそれを幸子のに差しした。
「お義母さん、今まで本当にありがとうございました。これはささやかですが、昇祝いです」
幸子は驚いたように目を見いた。
「あら、久美子さん。追いされるというのに律儀なことね」 彼女は嬉しそうに封筒を受け取った。
「ありがたくいただいておくわ。あなたもこれからの、頑張りなさいね」
親戚たちもしたように頷いている。 「たいしたものだ。最まで礼儀正しいね」 「彦くんは良い教育をしたんだな」
誰も、私がどんな気持ちでその封筒を渡したのかを考えようとはしない。 そして、をそので確認する者もいなかった。
「それでは、私はこれで失礼します」 くお辞儀をして部をる。 背からは、再び宴会の賑やかな声が聞こえてきた。 彦の笑い声、幸子の嬉しそうな声。彼らは今、の絶頂にいるつもりなのだろう。
私は夜のをで歩きながら、静かに空を見げた。 涙は滴もなかった。 ただ、の朝にやらなければならないことだけを考えていた。
の朝番で、の窓にかなければならない。 にわたるい約束を終わらせるために。 あのい封筒のを義母がいつけるかは分からないが、真実に気づいた、あの族の活は音をてて崩れるはずだ。
翌朝、私は休暇を取っての窓に座っていた。 静かな内に、番号を呼ぶ声が響いている。 目のに座る窓の女性が、申し訳なさそうに枚の類を確認していた。
「本当に、こちらの自送サービスを解約なさるのですね」 私は静かに頷いた。 「はい。今付けで完全に止してください」
「かしこまりました。ただいま続きをいたします」 女性がパソコンのキーボードを叩く音が響く。 その音を聞きながら、私はを振り返っていた。
毎万円。義理の両親の座へ欠かさず送し続けてきた記録だ。 で百回、総額にして千百万円になる。 これだけのを、私はで払い続けてきたのだ。
実の宅ローン、毎の固定資産税、災保険の支払い。 それらはすべて、私の個座から支払われていた。 夫の彦は自分がの黒柱だとい込み、自分の料で実を養っていると信じている。 だからこそ、親戚のであんなに偉そうに振るえたのだ。
『俺は成功した。おはもう必ない』 昨夜の彦のたい言葉が蘇る。 私がどれだけの犠牲を払ってきたか、彼は全くらない。
結婚してすぐ、私たちは共働きを始めた。 私は会社の経理として働きながら、夜は副業もこなした。 毎遅くまで残業し、休もパソコンに向かっていた。
旅にきたい気持ちもし、しいも、ブランド品のバッグも諦めた。 いつか子どもができたら広いが必になるかもしれない。 そうって貯めていた老資も、すべて吉沢へと消えていったのだ。
誰にも言わず、恩着せがましいこともにしなかった。