"月40万円を10年送った妻を捨てた夫の誤算" 第4話
でもしてくれ、すぐに広いマンションに引っ越すから」
女性は私の姿を見ると、し驚いたように目を丸くした。 「あ、このが」 「ああ、もうすぐ赤のになる元妻だよ」 彦はたく言い放った。
私はを止め、静かにちがった。 りもしみも湧いてこない。ただ目のの景をめた目で見つめていた。 女性は部のをジロジロと見回し、さくため息をつく。
「それにしても、随分古い具ばかりですね。せっかく部さんになったのに、こんな活してたんですか」 彼女の言葉に、彦は嫌な顔をして私を睨んだ。 「こいつがケチでつまらない女だからさ。を使うことを嫌がる貧乏性の女なんだよ」
その言葉を聞いて、胸の奥がしだけ痛んだ。 私がケチだったからではない。、私が誰のためにその活に耐えてきたのか。 彼がそれを全く理解していないからだ。
「そうだったんですね、彦さん」 女性は彦の腕に甘えるようにしがみついた。 「でもこれからは私がいますからね。部の奥さんらしく、ちゃんとおを使ってあげますよ」
彦はのを伸ばして笑った。 「ああ、頼むよ。好きなものを何でも買っていいからな。俺の料なら、おを最に幸せにしてやれる」 の会話は、まるで私がそこにいないかのようだった。
女性はダイニングテーブルの傷を指先でなぞった。
「このテーブル本当に汚いですね。引っ越すは、こんなゴミみたいな具全部捨てましょうよ」 私が理の素敵なテーブルを選んであげます、と彼女は笑う。
「もちろんさ。こいつのっぽい趣にはうんざりしてたんだ」 全部捨ててしいを始めるんだ、と彦はきく頷いた。 私は黙って段ボール箱に荷物を詰め続けた。言い返す言葉はつもなかった。
彼らはらないのだ。彦の料だけで、どうやって理のテーブルを買うのか。 毎のお遣いですら私が管理して、やっとやり繰りしていたのに。 彦は自分の収入を何か勘違いしているようだった。
「おい、いつまでかかってるんだ」 彦が私の元にある段ボール箱を軽く蹴った。 「くてってくれよ。目障りなんだ。今週末には彼女の荷物をここに運ぶ予定なんだからな」
私は静かに顔をげた。 「分かりました。今の夕方にはていきます。荷物はこれだけですから」 私が指差したのは、たったつのさなスーツケースと、段ボール箱つだった。
女性は信じられないという顔で私を見た。 「え、もんでて荷物それだけなんですか。本当に何も持っていないんですね」 その声には、らかな見した響きがあった。
れな貧しい女。彼女の目には、私がそう映っているのだろう。
彦もで笑った。 「を使うことをらない女の末だな。ほら、さっさとサインした婚届を置いていけ」
私はテーブルのに、昨夜サインした婚届を置いた。 そして、アパートの鍵もその横に並べる。 「お世話になりました」とくをげた。
「度と俺のに現れるなよ。に困っても絶対に連絡してくるなよ」 彦は勝ち誇った顔で私を見ろした。 俺はおの面倒なんてこれっぽっちも見る気はないからな、と彼はを押す。
「はい。決して私から連絡することはありません。彦さんもどうかお元気で」 私はスーツケースを引き、玄関へ向かった。 背からは、彦と女性の楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
にると、夕暮れのがたく頬を撫でた。 私はつだけ、彦に嘘をついた。 決して私から連絡することはない、というのは本当だ。 しかし、彦の方から私に連絡してこないなどということは、絶対にあり得ない。
あと数もすれば末がやってくる。 吉沢の宅ローンの引き落としが今のだということを、彦はらない。 彦の料座は、ローンの引き落とし座ではないのだ。おの流れを彼は全く理解していない。
若い女性に級品を買い与え、義母に仕送りを続ける余裕など、彦にはどこにもない。
私はスーツケースを引きながら、駅へ向かって歩きした。 取りは驚くほど軽やかだった。