"月40万円を10年送った妻を捨てた夫の誤算" 第5話
にかかる毎万円の圧。それがなくなった。 今、私の個座には私だけの料が残る。 もう誰かのために自分を削る必はないのだ。
駅のいビジネスホテル。それが今からの私のしいだった。 狭い部のベッドに腰をろすと、古いスプリングがさく鳴った。 、彦の音やきなため息に怯えていた毎が、気に消えった。
さなスーツケースから荷物をす。 数枚のいシャツと使い古した着、そしてし褪せた仕事用のスーツだけ。 の結婚活のすべてが、この箱つに収まっていた。
スーパーで買った百円のお弁当をテーブルに置く。 たくなったお弁当だが、とても美しそうに見えた。 自分のために自分のおで買ったお弁当。それが私には信じられないほど贅沢にじられた。
お箸を割ろうとした、テーブルのに置いた携帯話が鳴り始めた。 画面を見ると、「義母」という文字が表示されている。 私はさく息を吐き、通話ボタンを押した。
「もしもし」 私が静かに答えると、話の向こうから幸子の甲い声が聞こえた。 「あ、たわね久美子さん」 その声には、隠しきれないびが溢れていた。
「彦から聞いたわよ。今をてったんですってね」 私は黙って聞いていた。
幸子は、私がしんで泣いているとっているのだろう。わざとるい声を作って話し続ける。
「正直に言うわね。私はホッとしているのよ。ずっと彦には、もっとふさわしい奥さんが必だとっていたから」 その言葉は、鋭いナイフのように私に向けられた。
「あなた、も緒にいて結局子どもも作れなかったじゃない。嫁としての最限の役目すら果たせなかったのよ」 その言葉を聞いた瞬、私の胸の奥がぎゅっと締め付けられた。 私が子どもを作れなかった理由を、幸子は何もらないのだ。
今からのことだ。 私たちは妊治療のクリニックに通おうとしていた。 額な費用がかかるため、私は必に貯をし、ようやくクリニックの予約を取った。 その夜、彦が青ざめた顔で帰ってきたのだ。
『実の計が危ない。ローンが払えなくてを取られそうだ。親父の会社が倒産した』 俺が助けるしかないんだと、彦は私に泣きついた。 『毎万円、なんとかして作ってくれないか』
それは妊治療のために貯めていたおだった。 でも、彦の必な姿を見て、私は頷くしかなかった。 それがすべての始まりだったのだ。
それから、私は自分のをすべて捨てて働き続けた。 子どもを持つことも諦め、毎万円というきなおを吉沢へ送り続けたのだ。
それなのに幸子は今、私をたく笑っている。
「彦のしい奥さんはね、まだ代なのよ」 幸子は嬉しそうに自を始めた。 「若くて綺麗で、とってもるいお嬢さんよ。あなたみたいに暗くてケチケチしていないわ」
私がケチだったのは、あなたたちのを守るためだった。 暗い顔をしていたのは、毎晩夜まで副業をしていたからだ。 でも、そんなことを今更言っても仕方がない。
「あなたは本当に運が良かったわね。彦みたいな派な男に養ってもらえて」 も息子ので活できたんだから、謝してもしきれないはずよと幸子は言う。 のローンも固定資産税も、すべて彦が払っていると信じきっているのだ。
「でも、もうあなたの番は終わりよ。度と彦にづかないでちょうだい」 あなたみたいな貧乏神はもうたくさんなのよ、と幸子は言い放った。 普通ならここで鳴り返すだろう。自分がどれだけのおを払ってきたか、叫ぶはずだ。
でも私は微笑みながら、静かに答えた。 「はい。お義母さんのおっしゃる通りです。これからはおで幸せになってください」 私の素直な返事に、幸子はし驚いたようだったが、すぐに勝ち誇ったように声をげた。
「最につだけお礼を言っておくわ。昨あなたが置いていったお祝いの封筒、ありがたく使わせてもらうわね」
彦としい奥さんのお祝いで、温泉旅にこうとっているの、と彼女は弾んだ声で言う。