"月40万円を10年送った妻を捨てた夫の誤算" 第12話
クレジットカードの支払いは来に迫っている。このままでは自己破産するしかない。 その、彦のにつの恵が浮かんだ。 「そうだ、弁護士だ」
夫婦にはお互いを助けう義務があるはずだ。法律を使えば、久美子に支払いを制できるかもしれない。 彦はすぐに会社の休憩へき、無料の法律相談窓に話をかけた。
「妻が突然実のローンの支払いをやめてをたんです。妻には分な貯があるはずなんです。法律で妻に半分払わせることはできますよね」 彦は自信満々で尋ねた。 しかし話の向こうの担当者は、静な声で聞き返した。
「すでに婚は成しているのでしょうか」 「はい。先週無事に婚届を提しました」 「では、財産を分ける約束などは面で残しましたか」
彦は待っていましたとばかりに声を張った。 「ええ、もちろん自分で作りましたよ。妻がからおを求してこないように、しっかりサインさせました。お互いに財産への請求はしないと、今の支払いについても各自で責任を持つといてあります」 自分がどれほど賢い男かを自したかったのだ。
しかし担当者の次の言葉が、彦の期待を々に砕いた。 「お客様、変申しげにくいのですが、その類がある以、奥様に支払いを求することは能です」
彦の笑顔が顔に張り付いたまま固まった。
「なんでですか」 「お客様ご自が『今の支払いは各自で責任を持つ』と定めたからです。つまりあなた名義の借や実のローンはあなたが払うということです。奥様の貯からおを分けてもらう権利も、ご自で放棄されています」
彦はや汗が吹きすのをじた。 「違うんです。あれは妻が俺の財産を奪うのを防ぐために作ったんであって……」 「法律、どちらの目で作られたかは関係ありません。おがしてサインしたという事実だけが効です」
担当者の声はどこまでもたく事務だった。 「ご自で作られたその類が、奥様を完全に守る盾になっています。残ですがご自でどうにかするしかありませんね」
ツーツーという子音が鳴り、話は切れた。 彦はスマートフォンを握りしめたまま、膝がガクガクと震えてっていることすらできなかった。 久美子がおを搾り取るための最の希望が、過の自分自のいによって完全に断たれたのだ。
久美子があのカフェで、何も言わずにサインした理由。それが今になってようやく理解できた。 あいつ、最初から分かっていたんだ。 彦の類が自分自の首を絞める具になることを、久美子はすべてったでわざとサインしたのだ。
数の夜、彦はい取りで古いアパートの階段を登っていた。 会社では借の噂がしずつ広まり、居所がない。 玄関のにつと、郵便受けに産管理会社からの速達郵便が入っていた。
に入っていたを見て、彦は息を呑んだ。 『賃貸契約解除及び今末での退のお願い』 彦はすっかり忘れていた。このアパートを借りた、契約者になっていたのは久美子だったのだ。 久美子はをる、自分の名義の契約をすべて解除していた。
「嘘だろ。今末ってあと数しかないじゃないか」 彦は鍵をけ、暗い部のに転がり込んだ。 その、ポケットのの携帯話が鳴った。画面には「実」の文字が表示されている。
彦は震えるで通話ボタンを押した。 「彦か、私だ」 話の向こうから聞こえたのは、義父のく沈んだ声だった。 「さっきから最のが届いた。もうこのを放すしかは残されていない」
彦は焦ってきな声をした。 「だったらくを売ればいいじゃないか。その売ったおで残りのローンを全部返せば終わる話だろう」 しかし義父から返ってきた言葉は残酷なものだった。
「無理だ。このを売っても千万円にしかならない。借はまだ千万円も残っているんだ」 彦はを疑った。
「なんでそんなに残っているんだよ。毎万円も払い続けていたんだろう」
義父はいため息をついた。