"亡き娘の純金バングルを、義母は義妹の再婚費用にしようとした" 第16話
式への違約と、これまでにかかった費用は、すべて森へ請求を送る。……引きげるぞ」
田の族が、全員斉に席をち、に部をてった。田亮介さんは、最に私と奈緒に向かってく礼し、「巻き込んでしまい、本当に申し訳ありませんでした」と言い残して、振り返ることもなくっていった。
広に残されたのは、私たち母娘と、崩れ落ちた森のだけだった。
「ああ……あああ……私の結婚が……私の玉の輿が……!」由梨がを叩いて号泣している。千恵子は呆然自失の態で、をけたままけない。
そので、健太だけが、血った目で奈緒を睨みつけていた。
のっそりとちがり、奈緒の目のへ詰め寄ってくる。
「……満かよ」健太の喉から、怨嗟に満ちた声が漏れた。
「おい、奈緒。これで満したのかよ!? ネックレスはもう返しただろ! バングルだって戻っただろ! 物は全部元にあるのに、なんでここまで由梨を追い詰めるんだよ! そこまでして俺の族をめちゃくちゃにしたかったのか!?」
物は返した。だからいいだろう。この男ののには、最初から最まで、それしかなかった。のをどれほど踏みにじったか、くなった者の尊厳をどれほど冒涜したか、妻が流し続けてきた血の涙がどれほどかったかなど、ミリも理解していなかった。
私がにようとした。けれど、それを制したのは、奈緒だった。
奈緒は歩に踏みし、夫の顔を真正面から見据えた。
「返せば終わりだとってるの?」
その声は、震えていなかった。静かで、氷のように澄み渡っていた。
「あんたは……最初からそうだった。お姉ちゃんがきていた、私の体調を配してお惣菜を持ってきてくれたお姉ちゃんを、『がズカズカがり込んでくるな』って追いしたよね。お母さんが私に持たせてくれた仕送りや野菜を、『実に甘えるな』って馬鹿にしたよね」
健太が息を呑み、わずかにずさる。
「お姉ちゃんが事故でんだ……あんた、お葬式ので私に何て言ったか覚えてる? 『これでうるさい姑がいなくなって、うちもスッキリしたな』って……笑いながら言ったんだよ」
私の臓が、ドクンと嫌な音をててねた。初だった。そんな獄のような言葉を、女をくしたばかりの次女に投げつけていたのか。
「私、あのから……ずっとあんたのことが怖かった」奈緒の瞳から、筋の涙が静かにこぼれ落ちた。けれど、その線は健太から微だにしなかった。
「お姉ちゃんの形見を守れなかったのは、私のさのせい。でもね、健太。問題はネックレスじゃないの。あんたが、私をとして度も尊しなかったこと。
あんたにとって私は、自分の族の見栄を満たすための召使いでしかなかったこと。それが、すべての答えだよ」
「奈緒……お、何を言って――」
「婚します」
奈緒のから、確な宣告が放たれた。
「、弁護士をてます。度と私に直接連絡しないで。このの慰謝料、そしてお姉ちゃんの遺品を無断で持ちし換しようとした損害賠償、すべて法に請求します」
「り、婚……!? ふざけるな! たかがこれくらいのことで婚なんて認められるか!」健太が鳴り声をげ、奈緒の首を掴もうとを伸ばした。
私は迷わず、その腕を横からい切り払いのけた。
ピシャリ、と鋭い音が広に響く。
「私の娘に、気く触るんじゃないわよ」
私の殺気配に、健太がたじろぎ、息を呑んで退した。
「弁護士からの受任通が届くまで、切の接触を禁じます。もし職や実に寄ったら、即座に警察へ通報しますから、そのつもりでいなさい」
私は奈緒のをしっかりと握りしめた。「くわよ、奈緒」
「……うん、お母さん」
私たちは、で泣き喚く由梨も、呆然とする千恵子も、青ざめてち尽くす健太も、度と振り返ることはなかった。料亭のをると、夜の澄んだ空気に、満のが広がっていた。胸いっぱいに吸い込んだの夜気は、痛いほどたく、そして信じられないほど甘美だった。
実へ戻り、いお呂に入って、ようやくがついたのは夜零を回った頃だった。
仏壇のには、取り戻した美咲の真珠のネックレスと、純のバングルが並べて置かれていた。