"亡き娘の純金バングルを、義母は義妹の再婚費用にしようとした" 第17話
線の煙が、細く、まっすぐに井へ向かってちっている。
美咲。見てくれたかしら。奈緒は、自分ので、あの沼から歩を踏みしたわよ。
私が遺にをわせ、ちがろうとしただった。
トントン、と居の襖が控えめに鳴った。
「お母さん……入ってもいい?」
パジャマ姿の奈緒だった。には、し黄ばんださない封筒が握られていた。
「どうしたの、奈緒。眠れないの?」
奈緒は襖を閉め、私のに静かに正座した。その元にある封筒を、壊れ物でも扱うかのように、両で切に包み込んでいる。
「お母さん……これね、ずっと渡せなかったの」
「それは……?」
「お姉ちゃんが……事故に遭う週、うちに遊びに来たに……私に預けてくれたなの」
私の胸が、さくねた。美咲が遺した、。
「どうして、今まで……」
私の問いに、奈緒はしだけ寂しそうに、けれど温かい笑みを浮かべて答えた。
「お姉ちゃんね、これを私に渡す、こう言ったの」
奈緒の指先が、封筒の端を優しく撫でた。
「『奈緒。このはね、あなたが本当に、の底から実に帰りたいってったがけるだよ。そのが来るまで、お母さんにも内緒にしておいてね』って……」
奈緒の指先が、封の糊付けされた端を、呼吸を止めるようにして慎にめくった。
乾いたの擦れる音が、夜の静まり返った居にさく響く。
から現れたのは、美咲が用していた淡いの便箋が枚。
几帳面で、しがりの、あの懐かしい跡。その文字を見た瞬、私の界が激しく歪み、喉の奥がぎゅっと詰まった。
奈緒は便箋を両で持ち、震える声で、そこに並んだ言葉を文字ずつなぞるように読みげた。
『奈緒へ。
つらくなったら、いつでも帰っておいで。
お母さんに配をかけたくないなら、まず私に話して。夜でも、仕事でも、何だっていいから。
でもね、本当はお母さんだって、あなたの力になりたいはずだよ。で抱え込んで笑ってみせるのが、親孝じゃないんだからね。
族って、する所じゃないんだよ。あなたがあなたでいられない所なら、そんなもの、いつでも捨てていいの。
お姉ちゃんは、いつだってあなたの方だからね』
便箋のに、さな笑顔のマークが添えられていた。
「……お姉ちゃん……っ」
奈緒の膝のに、粒の涙がポタポタと音をてて落ちた。インクが滲み、のに濃い青の染みを作っていく。
「私……ずっと、お姉ちゃんの言うこと聞かなかった……」奈緒は便箋を胸に抱きしめ、子供のように声をげて泣きじゃくった。
「お母さんに配かけちゃいけないって……婚したらみっともないって……私がすれば全部うまくいくって、ずっと嘘ついて……! お姉ちゃん、こんなまで残してくれてたのに……!」
私はちがり、畳のに崩れ落ちる奈緒の体を、ろから力いっぱい抱きしめた。
「もういいのよ、奈緒。もう、いいの」
娘の細い背が、しゃくりあげるたびに激しくする。その温もりを抱きしめながら、私自の目からも、堰を切ったように涙があふれしていた。
美咲。あなたは、全部っていたのね。自分がこの世をるから、妹がどれほど孤独な所で息を殺していたかを。
そして、残された母親の私が、しみに暮れて周りが見えなくなっていたことも。
「奈緒、ごめんね」私は娘のたい頬に自分の顔を寄せ、何度も囁いた。
「お母さんが、あなたをにしてしまっていたわね。美咲を失ったことばかりに気を取られて……あなたがどれほど傷ついていたか、気づいてあげられなくて本当にごめんなさい」
「ううん……ううん、お母さん……!」奈緒は私の腕を掴み返した。
「私、帰ってきたよ……。お母さんのところに、帰ってきたよ……!」
その夜、私たちは美咲の便箋を仏壇のに供え、寄り添うようにして眠りについた。、胸の奥底で渦巻いていたたい嵐が、ようやく静かな凪へと変わっていくのをじていた。
週がけた曜の朝。私たちは駅の法律事務所の扉を叩いた。
担当してくれたのは、事事件にい代の女性弁護士だった。机のに、あの取り戻した美咲の真珠のネックレス、純のバングル、買い取りの予約伝票、由梨のSNSの魚拓、そして奈緒の腕に残った内血の診断を並べた。